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日本がリードする新しい放射線治療技術「重粒子線治療」

がん治療では「手術」「抗がん剤」「放射線」の3つの標準治療を中心に治療方針が決められますが、今、この「放射線」治療が進化しようとしています。ここでは、炭素イオンを加速させて、がん病巣部に照射する最先端の放射線治療「重粒子線治療」についてご紹介します。

目次

日本の最先端技術

がん病巣部に届くことに放射線量が最大に

重粒子線治療の対象となる症例

まとめ

日本の最先端技術

重粒子線治療は、日本のがん治療として世界をリードしてきました。国内の重粒子線治療施設で1994年から2016年までに約15,000人の治療を行い、世界でも臨床が進んでいる国として注目を集めています。重粒子線治療を受けたい患者さんにとっては、よい環境であるといえるでしょう。

現在医療現場で採用されている標準療法は、どれもメリット・デメリットがあります。早期から中期のがんに対しての多くは外科手術が採用され、がん病巣部を取り除くことで治癒を目指します。根治性が高い治療方法である一方、メスを入れて体の一部を取り除くため体への負担は大きく、時には体の機能を低下させることもあります。放射線治療は、患者さんの体を切る必要が無く、痛みや負担の少ない治療方法といえます。従来の放射線治療では正常な細胞にもダメージを与えてしまうことから、副作用が出てしまう点がデメリットでした。照射の力を強くすれば強くするほど、患者さんの体にもダメージを与えてしまうため十分な照射力が得られずに、がんの腫瘍を完全に死滅させられないこともありました。

しかし、重粒子線の登場によって、放射線治療の常識が変わろうとしています。患者さんの体への負担を最小限に抑えつつ、「切らない治療」ができるようになろうとしています。

がん病巣部に届くことに放射線量が最大に

重粒子線は、炭素イオンを光の速さの約70%まで加速させて、病巣部に照射します。従来の放射線治療では「エックス線」や「ガンマ線」を病巣に照射することで行われていました。この2つは照射してから体の表面近くで放射線量が最大となり、それ以降は次第に減少していきます。がん病巣部に届かせるためには強く照射する必要があり、そのぶん病巣以外の正常な細胞に与えるダメージも大きいものでした。放射線治療には副作用があり、体に負担がかかる治療だといわれるのはそのためです。

一方で、重粒子線治療は照射すると、体の表面では放射線量が弱く、がん病巣部に届くころに放射線量が最大になるという特徴を持っています。がん病巣部に最大のダメージを与えつつも、その周囲の正常な細胞へのダメージは最小限に抑えることができるのです。

効率の良い治療成果であるため、従来より照射回数も少なくすることができ、治療期間は短くなります。患者さんにとって負担が減る画期的な治療技術なのです。手術や抗がん剤の副作用に耐えることが難しい高齢の患者さんであっても、受けることができます。

 

重粒子線治療の対象となる症例

重粒子線の強みは、がん病巣部の周りにある臓器や組織への照射を避けることができる点です。高度先進医療の対象となっている部位は、「頭頚部腫瘍・頭骸底・眼球の腫瘍」「肺がん」「肝がん」「骨・軟部肉腫」「前立腺がん部腫瘍」などです。また、「脳腫瘍」「中枢神経腫瘍」「食道がん」「すい臓がん」「子宮がん」「直腸がん術後再発」なども現在臨床試験中で、今後の適用拡大が望まれています。特に希望となる点は、いままで外科療法が難しかった骨肉腫などの治療です。体内の深い部分に生まれたがん腫瘍でも治療効果が期待できるのです。

重粒子線治療が向いていないがんは、不規則に運動する胃や袋状・管状の臓器です。がんの狙い撃ちが難しく、臓器に穴を開けてしまう危険性もあります。胃がんや大腸がんなどは向いていない疾患といえるでしょう。また、白血病など全身に広がっているがん、または全身に転移してしまったがんにも適用はできません。

重粒子線治療を希望する場合は、かかりつけの医療機関で主治医に相談をしてください。重粒子線治療を行う医療機関で受診するためには原則として、主治医からの紹介状が必要となります。診療の予約を行い、専門医による診断で、重粒子線治療の適用が可能かどうかを検討します。適用可能ということになれば、実施が可能です。

治療は原則1日1回の照射で、1回あたり数分から数十分の治療となるでしょう。治療後は通院によって経過観察を行います。

 

まとめ

従来の標準療法に比べて「痛みを伴わない」「高齢者にも適用できる」「深部がんにも適用できる」「社会復帰までの期間が短い」など、非常に大きなメリットをもたらしてくれる重粒子線治療ですが、まだ一般の治療に広く適用されるには時間がかかりそうです。それでも、医療技術の進歩を感じられる画期的な技術であることは間違いないのではないでしょうか。今後臨床が進み、多くの人が享受できる技術となることを願っています。

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