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がんの標準治療に限界を感じた医師が「免疫療法」に見出した大いなる可能性

心臓血管外科から免疫療法へ―がん治療で手詰まりになったケースに対し免疫療法をご提案できることのやりがいや、免疫療法に見出した可能性について、院長である私の体験をもとにお話しします。

医療法人輝鳳会 理事長 池袋クリニック 院長 甲陽平

目次

がん治療への認識を変えた「免疫療法」との出合い

免疫は「自分の力」…副作用が少ない免疫療法

「あきらめない」気持ちが命の可能性を拓く

がん治療への認識を変えた「免疫療法」との出合い

私の医師としてのキャリアは、心臓血管外科からスタートしました。
もともと手先を使って何かをすることは好きでしたし、循環器の外科は手術が成功すれば、患者さんはすぐ元気になる、すなわち結果が見えやすいという点が、自分にとっては魅力だったのです。

外科のなかでも、人命の中枢ともいえる心臓は、責任も重大ですがそれだけやりがいもある分野です。医学部卒業後はひたすら、研鑽に励みました。

心臓血管外科では、例えば壊れた心臓の弁を修復したり、心臓に酸素や栄養素を供給する冠動脈が詰まった場合、他の血管を使ってバイパスをつくったりして血流を確保できるようにします。小児の先天性疾患の手術も経験しました。
心臓血管外科の現場の厳しさは想像をはるかに超えていました。私の所属していた大学病院では、心臓血管外科医は「万能者」たるべし、とみなされており、長時間の手術はもちろん、当直でひと晩中寝られないのは当たり前、さらに人工心肺装置の動作管理にも携わるシステムでした。

このようにシビアな環境でしたが、やりがいを求めてがむしゃらに頑張った日々でした。
実は、私が心臓血管外科へ進みたいと思ったのにはもう1つ理由がありました。それは「心臓にはがんができない」からです。

医学生当時の私にとって、がん治療はたいへん手ごわい存在ととらえていました。手術をしても再発の可能性はありますし、20数年前ですと抗がん剤など、薬の種類もまだ今ほど種類は多くなく、副作用の強い抗がん剤が多くて副作用の管理のやり方も今より遅れていいました。抗がん剤で苦しんでいる患者さんの姿が印象に残り、がん治療イコール患者を苦しめる治療というイメージを抱いていました。そんな気持ちで、がん患者さんの治療に携わることにためらいを持ってしまっていたのです。

そんなとき、ある出合いが私の認識を変えるきっかけとなりました。それが「免疫療法」です。

免疫は「自分の力」…副作用が少ない免疫療法

実は心臓血管外科医時代から、もともと免疫にも興味を持っていました。手術中や術後管理をはじめ、何かとプレッシャーがかかる環境に長時間いましたが、ストレスを感じているのは気が張っているせいで風邪にも罹りませんでした。しかし、ストレスがなくなった途端風邪に罹るという経験に加え、当時の社会の第一線でバリバリ働いて体力の有りそうな著名人が若くしてがんになってしまうニュースを数多く目にしたことで、特にストレスと免疫との関係に興味を持ちました。著名な医師の書籍も読み漁りました。

「ストレスがかかると免疫が落ちる」―今から10数年前、それを強く思い知らされた出来事がありました。私の母が、実弟の突然の死をきっかけに肺炎を起こし入院してしまったのです。それまで肺炎になったことなどなく、とても丈夫な母だったのにもかかわらず、です。こんな経験もあり、私はますます免疫に興味を持つようになりました。

そのころ偶然、ある出会いをきっかけに免疫を利用したがん治療があることを知りました。先に話した通り、それまでの私は「がん治療は手ごわい」との認識でした。「抗がん剤は副作用が強いにもかかわらず、再発の可能性もある。そうなると手詰まりになってしまう」と。

しかし、調べていくうちに、免疫療法はその手詰まりになってしまったケースの「福音」となりうることに気づいたのです。

患者さん自身の免疫を利用するのですから、副作用の心配が少なくてすみます。この治療でがん患者さんを苦しめることありません。そして、手術や抗がん剤、放射線治療を受ければその副作用で免疫が落ちますが、免疫療法でその低下をバックアップできる期待も持てます。

標準治療をし尽くし、手立てがないと言われてしまったケースでも、免疫療法はその「手立て」になりうる。医師にとって患者さんの助けになりたい、というのは当然の気持ちですから、がん治療で手詰まりになったケースに対し免疫療法をご提案できることは、がん患者さんとそのご家族の救いになりうる、と思い至ったのです。

「諦めない」気持ちが命の可能性を拓く

免疫療法に、患者さんの助けとなる可能性を見出し、当院の院長に就任して9年目になります。免疫療法の考え方やその可能性について、当院に来られる患者さんに分かりやすくお伝えしたいとの思いから、当院に初めて来られた患者さんにはほかの医療スタッフではなく、院長である私自らがカウンセリングさせていただいています。

院長によるカウンセリングと聞くと、病気のことをきちんと話せるだろうか、とか、逆に、院長にあまり日常の細かなことを話しても聞いてもらえないのではないだろうか、とか、ちょっと構えてしまう方もいるかもしれません。

しかしそんな心配は無用です。気軽に思いつくまま病気のこと、病院で言われたこと、そしてご自身のお気持ちをお話しください。話が逸れて趣味の話や、好きな食べ物の話など、「こんなこと話してもいいのかな」ということでも遠慮はいりません。そのような日常生活のお話しのなかから、免疫をサポートする治療の提案につながる要素が見つかることもあるのです。

一方、私から患者さんに決まってお伝えするのは「諦めない」ことの大切さです。標準治療を受けている医療機関から「もうほかにすることがありません」「治療は終了です」と言われ、途方に暮れてしまった、落ち込んでしまった、という患者さんがたくさんいらっしゃいます。それはまるで「諦めてください」と言われているようなものであり、言われた方のお気持ちは察するにあまりあります。

当院はその逆で、「まだまだ可能性はあります」と患者さんに言い続けています。医学の進歩は目覚ましく、昨年はできなかったことが今年可能になったり、適応外だった薬が使えるようになったりと、新たな治療が時を待たずして登場しています。

諦めずに、そのときできること、できる手を打っていけば、そうした新たな治療に出会えるチャンスをつかめる可能性が出てきます。逆に、そのような状況で諦めてしまったら、みすみすそのチャンスを逃してしまうようなものではないでしょうか。

「諦めない」気持ちを患者さんと当院とで共有し、お一人おひとりにベストの選択肢を。これからも患者さんに寄り添う医療機関であり続けたいと思います。

まとめ

免疫療法は患者さん自身の免疫を利用した体に優しい治療です。標準治療との併用や、標準治療を終了したあとでも実施が可能で、ほかに手立てがないケースの「福音」になりうる治療法といえるでしょう。

【甲 陽平(かぶと・ようへい)】
医療法人輝鳳会 池袋クリニック 院長
1997年、京都府立医科大学医学部卒業。2010年、池袋がんクリニック(現 池袋クリニック)開院。
「あきらめないがん治療」をテーマに、種々の免疫細胞療法を主軸とし、その他の最先端のがん治療も取り入れた複合免疫治療を行う。
池袋クリニック、新大阪クリニックの2院で、標準治療では治療が難しい患者に対して、高活性化NK細胞療法を中心にした治療を行い、その実績は5,000例を超える。

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