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獲得免疫(T細胞)とがん抗原の関係|がん免疫療法の基本用語

がんの免疫療法にはたくさんの、聞き慣れない専門的な用語が出てきます。ここでは治療への理解を深めるため、特に知っておきたい言葉について解説します。

医療法人輝鳳会 理事長 池袋クリニック 院長 甲陽平

目次

自然免疫とは〜病原体を排除する速攻部隊〜

獲得免疫とは〜「決まった敵」に攻撃をしかける〜

がん抗原とは〜攻撃をしかける際の「目印」〜

自然免疫とは 〜病原体を排除する速攻部隊〜

免疫とは私たちにもともと備わっている、体を病原体や異物から守るシステムです。病原体や異物が体に入ってこないようにしたり、入ってきてしまったそれらを追い出したり退治したりしています。

免疫は、「自然免疫」と「獲得免疫」との2つに大別されます。ここでは、そのうちの自然免疫について説明します。

自然免疫はいうなれば病原体を排除する速攻部隊。前線で待機し、24時間見張っていて、敵と見るや否や攻撃をしかけます。体じゅうに存在しますが、特に多いのはお城でいえば外壁にあたる、皮膚や粘膜(口やのど、眼、鼻、消化管、尿道など)です。

皮膚から出る汗や目から出る涙、口から出る唾液などは、水分を一緒に異物を外へと洗い流す作用があります。鼻から出る鼻汁やのどから出る痰も、ねばねばした粘液で異物が入ってこないようにしたり、入ってしまった異物をからめとり外へ出したりします。

汗や涙、鼻汁などは私たちが目で見ることもできわかりやすい例ですが、目に見えない細胞レベルでも、自然免疫を担っている細胞があります。

好中球マクロファージ、という名前を聞いたことがあるでしょうか。彼らは皮膚や粘膜の防御壁をかいくぐって侵入してきた病原体を迎え撃つ免疫細胞たちです。好中球は血液の白血球の中に、マクロファージは全身の組織に存在しています。

例えば、転んですりむいたりした後に傷口が腫れ、膿が出ることがあります。このとき実は、好中球という細胞が、傷に感染した菌を食べているのです。好中球は、こうした悪い菌を食べた後自分も死んでしまいます。その死がいや、菌を退治したときに出た分泌液などが膿となって出てくるのです。

また、マクロファージは貪食細胞とも呼ばれており、名前が示す通り異物とみるやいなや食べることで退治します。

これら自然免疫の最大の特徴は、「敵を選ばない」ことです。よそ者と判断すればだれかれ構わず攻撃をしかけるのです。

しかし、病原体の中にはその攻撃をうまくかわして、さらに体の中へと侵入し、悪さをするものもあります。そうしたものは言ってみれば敵として一枚うわてで、こちらもある程度戦略を練らないと、退治が難しい相手です。

そこで、出動するのが次に説明する獲得免疫です。

獲得免疫とは 〜「決まった敵」に攻撃をしかける〜

はしかに一度かかった人は、二度とかかりません。このとき、はしかに対する免疫を獲得したことになります。獲得免疫の名前はこうした“二度なし”の現象からついています。はしかの原因は麻疹ウイルスですので、このウイルスに対する免疫ができた、と言い換えることができます。

敵と見ればだれかれ構わず攻撃する自然免疫に対し、はしかなら麻疹ウイルス、天然痘なら天然痘ウイルスといったように「決まった敵」に攻撃をしかけるのが獲得免疫のもっとも大きな特徴です。

獲得免疫の部隊もいくつかの免疫細胞から成り立っています。実際に攻撃をしかける歩兵もいれば、歩兵に命令をくだす司令官のような細胞もいます。攻撃をおさえるようブレーキをかける細胞もいます。これらはおもに、白血球の一部であるリンパ球に存在します。

獲得免疫が敵を退治するには、まず情報を仕入れなければなりません。それには自然免疫の力が必要です。自然免疫のマクロファージが最初に敵に出くわしたときに、敵を貪食し取り込んで情報を仕入れ、それを獲得免疫の部隊に伝えにいくのです 。

マクロファージのほかにも樹状細胞やB細胞と呼ばれる細胞も、敵が侵入すると、その情報を伝えにいきます。

獲得免疫の部隊では、まず司令官に相当するヘルパーT細胞(Th細胞)という細胞がその情報を受け取り、攻撃してよい相手かどうかを見極めたうえで、キラーT細胞という実戦部隊に指令を出します。これによりキラーT細胞が敵の情報を握って出動し、同じ情報を持つ敵を倒す、というわけです。

がん抗原とは 〜攻撃をしかける際の「目印」〜

抗原とは、獲得免疫が敵に攻撃をしかける際の「目印」に相当する、敵の特徴を示す物質(多くの場合タンパク質)を指します。先ほどのはしかを例に挙げると、はしかにかかった人が二度とかからなくなるのは、その人の獲得免疫が麻疹ウイルスの抗原を情報として得て、以降、麻疹ウイルスが体内に入ってきたときに速やかに退治する体制が整ったからです。

がんにおいては「がん抗原」が「敵の情報」に相当します。つまりがん抗原とは、獲得免疫ががんを攻撃し退治するために必要な「目印」となる物質(多くの場合タンパク質)と言い換えることができます。

がん抗原は樹状細胞によって取り込まれ、リンパ球の免疫細胞にその情報が伝わります。それによって、免疫細胞はその抗原にだけ狙いを定めた攻撃をしかけ、がん細胞を殺す、というわけです。

しかし、がん細胞はそもそも、その人の正常な細胞が変異してできたイレギュラーな細胞です。そのため、なかなか一筋縄では退治できない一面もあります。がん抗原も、素直にそれとわかるよう掲げているがん細胞であれば、攻撃の目印になりますから退治されやすいのですが、がん細胞の中には、攻撃を免れようとして、がん抗原を隠してしまっている細胞もあります。

iNKT細胞療法は、その「がん抗原を隠してしまっている」がん細胞も攻撃できるという点に特徴のある治療法です。

まとめ

私たちに備わっている免疫システムは大きく「自然免疫」と「獲得免疫」に分けられ、獲得免疫は敵の情報(抗原)を目印に敵を攻撃し排除するよう働きます。がんにおいては、がん抗原を樹状細胞が取り込み、免疫細胞に伝えることで攻撃体制が整い、がん細胞を殺傷するよう働きます。がん細胞の中には、がん抗原を隠してしまうものもいますが、iNKT細胞療法は、そのようながん抗原を隠しているがんも攻撃できる治療法です。

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