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「高活性化NK細胞療法」とは[3−1]

こちらのコラムは書籍 『高活性化NK細胞で狙い撃つ 究極のがん治療』より、一部抜粋してご紹介いたします。

本書は免疫細胞療法の中で、がんへの高い攻撃力を期待されている「高活性化NK細胞療法」と複合免疫療法を中心に、これからのがん治療とその効果について紹介しています。

目次

高活性化NK細胞療法とは

肝がん治療の論文がきっかけに

高活性化NK細胞療法とは

通常、がん患者さんの免疫力は総じて低下しているといえます。がんの進行や標準療法によるダメージの影響を免疫細胞も受けているからです。

特に抗がん剤に関しては、第1章でも説明した通り、副作用として骨髄抑制(白血球の低下)がほとんどの抗がん剤で起こります。抗がん剤にはがん細胞の分裂を抑える作用がありますが、それが正常細胞にも及んでしまうため、白血球の増殖までも抑えてしまうからです。NK細胞も白血球に含まれる免疫細胞の一つですから、当然、影響は及んでいます。

つまり、がん患者さんは自らの体内にがんを攻撃する部隊を持っているにも関わらず、治療によりその部隊を弱体化させてしまっているのです。

そこで、体内では活性化が難しいNK細胞を「体外」で増やして活性化しようという着想のNK細胞療法が誕生し、発展してきました。この治療法では、患者さん自身の白血球中のNK細胞を体外で増殖・活性化させてから再び同じ患者さんの体内に戻します。がんの進行によるダメージを受けている体内にいたままでは活性化ができないため、体の外で培養し、数も攻撃高活性化NK細胞療法とは力も高めた上で戦力として送り込むのです。そのための治療法として確立されたのが「高活性化NK細胞療法」です。

NK細胞は第2章でも説明した通り、異常細胞であればすぐに攻撃をしかけることができるフットワークの良さが持ち味です。がんであることを巧妙に隠し、T細胞をはじめとする獲得免疫ではてこずるような難治がんでも、がん細胞を効率よく見つけ出して攻撃することが期待できます。

肝がん治療の論文がきっかけに

NK細胞の存在は、1975年ごろには発見されています。T細胞やB細胞、樹状細胞といった、免疫を担う他の細胞についてはすでに研究が始まっていましたが、まだ、がんとの関係が解明される糸口を見つけるまでには至っていませんでした。

そのような中、がん細胞を健康な人の血液の中に入れたところ、数日でがん細胞が激減するという現象が確認され、その作用の仕方は、がんの情報を持つことで殺傷能力を持ったT細胞とは明らかに違っていたのです。肝がん治療の論文がきっかけにその後、この細胞が異常細胞を無差別に攻撃する〝生まれながらの殺し屋〞であることがわかり、ナチュラルキラー細胞=NK細胞と名付けられました。がんを直接攻撃し、死滅させると期待が高まったのです。

ところがその後、免疫細胞療法の実用化に向けての研究はT細胞の方に主役が移っていきます。というのも、NK細胞はリンパ球の中でも10%程度しかなく、増殖・活性化させるのが難しかったのです。しばらくは、LAK療法の確立と臨床への応用が先行していきました。免疫細胞を利用した治療法の中でも、おもにT細胞を増殖・活性化させるLAK療法が国内では約半世紀ほどの臨床の歴史があるのに対し、NK細胞を活性化させる治療法はここ15年ほどで急速に注目されてきた比較的新しい治療法といえます。

 

ヒトに対する治療という面から、NK細胞のがん抑制効果に注目が高まったのは、2008年に広島大学病院にて肝がんに対する再発予防効果が報告されてからでした。

肝臓がんの肝臓移植後の再発転移予防目的で、ドナー(臓器提供者)から摘出した肝臓からNK細胞を取り出し、増殖・活性化させておき、臓器移植後にレシピエント(移植を受ける側)の体内に戻すというものでした。臓器移植では通常、拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤が必要不可欠です。しかし患者さんの免疫力が低下するため、がん細胞の勢いが優勢になり、再発や転移のリスクが高くなります。そこで肝臓由来のNK細胞を活性化させて体内に投与したのです。

肝臓がんは再発率が非常に高いことで知られています。初発の肝臓がんの治療後1年以内に、肝臓内の別の場所に2個目のがんができる可能性は実に30%前後あるともいわれています。このことから肝臓がんでは2年以内に再発がなければ、そのとき行った治療法は再発抑止効果があるといえるのです。

この広島大学病院のケースでも、治療から2年経過後も再発がみられないことから一定の効果が得られたと発表に至りました。

こうした研究成果の発表も追い風となり、NK細胞をがん治療に応用しようという動きが臨床の分野でも活発化し、NK細胞を用いた免疫細胞治療を行う施設が増えてきました。

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