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三大療法で免疫力が低下してしまう矛盾[1−5]


こちらのコラムは書籍 『高活性化NK細胞で狙い撃つ 究極のがん治療』より、一部抜粋してご紹介いたします。

本書は免疫細胞療法の中で、がんへの高い攻撃力を期待されている「高活性化NK細胞療法」と複合免疫療法を中心に、これからのがん治療とその効果について紹介しています。

目次

三大療法で免疫力が低下してしまう矛盾

三大療法で免疫力が低下してしまう矛盾

今までご説明してきた通り、がんの三大療法にはメリットもある一方、副作用などのダメージも少なくありません。人間の体はダメージを受けると、回復のために体力が使われ、体力が消耗すると免疫細胞の働きにも影響が及んできます。

また、免疫力も必要になってきます。そのため、三大療法は体の免疫力を落としてしまうリスクを伴い、治療を受ける際にかかる心理的なストレスも免疫力低下の要因となります。

免疫力が低下してしまうと、がんにとっては都合の良い環境になります。それまでがん細胞をたたいていた免疫細胞の数が減り、その上活動も衰え、がんは手薄になった攻撃から逃れ、増殖しやすくなります。

がんをなくすための治療が、一方では体内でがんを抑え込むように働いている免疫力を低下させてしまうというのは皮肉なことです。しかも、三大療法はずっと続けられるものではありません。治療が終わった後、免疫力が低下したままでは、がんに再び増殖のチャンスを与えているようなものと言っても過言ではないでしょう。

したがって、このような事態を避けるためには、体内の免疫力を常に強化しておくことが重要になります。免疫力を強化するということは、免疫システムをつくっている免疫細胞の数や活動を高めると言い換えることができます。

それを実現することができる免疫細胞療法は、三大療法に次ぐ新しい治療法の主役として今期待されています。「免疫力を強化すること」、今がんと向き合っているすべての人にとって、一番必要なことといえるのではないでしょうか。

免疫細胞療法は、日本ではここ10年くらいの間に一般の方にも名前が知られるようになってきた療法ですが意外と長い歴史があります。

もともと18〜19世紀に天然痘やジフテリア、破傷風など、多くの死者を出していた伝染病の予防のために研究が進められ、大きな成果を上げていました。当時から一度感染すると二度と感染しないのは、その病気に対する免疫ができるからということがわかっており、免疫は「二度なしの現象」と呼ばれていたのです。

がんの治療という点では1970年代に登場した「免疫賦活剤」に端を発すると考えられています。免疫賦活剤とは文字通り、体内の免疫を活性化する作用のある薬剤で、キノコの一種であるカワラタケから抽出した成分や、シイタケ由来の多糖類を原料としたものなどがあります。現在も抗がん剤と併用して、副作用を抑えたり、抗がん剤の作用を助ける目的で使われたりすることがあります。

免疫賦活剤の登場をきっかけに「人の免疫を活性化させてがんを攻撃する」治療法の開発古くから行われてきた免疫細胞療法に、多くの研究者が関心を寄せるようになりました。本書の核である「免疫細胞療法」の黎明期です。

1980年代に入ってから、アメリカの国立がん研究所(NCI)のローゼンバーグ博士らが、患者さんの血液からリンパ球を取り出し薬剤を加えて培養し点滴で同じ患者さんの体内に戻す、という治療法を開発し論文を発表しました。

このときはがんの治療効果が期待したほど得られなかった一方、培養に用いた薬剤の副作用が強かったため実用化には至らなかったのですが、その後急速に免疫細胞療法の研究が本格化しました。試行錯誤を繰り返しながら、1990年代にはリンパ球を体外で大幅に増やし、活性化させてかつ副作用がほとんどない方法が開発されたのです。

その後リンパ球の中にあるさまざまな免疫細胞の役割が明らかになり、特定の細胞だけを増やす技術も開発されました。国内でも保険外ではありますが実際の治療に導入している医療機関が増えてきています。

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