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現代のがん三大療法が抱える限界

近年、医学の進歩もあり、治療効果をはかる目安の一つである、がん患者さんの5年生存率は多くのがんで改善されています。しかし残念ながら、がんで亡くなる方は一向に減っていません。そこには「三大療法の限界」という壁が立ちはだかっています。

今回は、一般的に病院で行われているがんの治療法である「手術」「放射線」「抗がん剤」について取り上げ、現代のがん治療のスタンダードと限界について詳しくご紹介します。

目次

がん治療の三本柱「手術」「放射線」「抗がん剤」

  • 手術療法
  • 放射線療法
  • 抗がん剤

三大療法が抱える限界

  • 手術は「とりきれる」がんにしか対処できない
  • 放射線治療は画像に映せないがん細胞は殺せない
  • 抗がん剤治療は副作用が避けられない

三大療法で免疫力が低下してしまう矛盾

がん治療の三本柱「手術」「放射線」「抗がん剤」

現代のがん治療法は、「手術」「放射線」「抗がん剤」が主に用いられ、「がんの三大療法」と呼ばれています。日本では、手術による病巣の切除ががん治療の中心にありましたが、近年では放射線療法と化学療法が進歩したことで、がんの種類やステージによって使い分けるようになりました。それぞれ単独で行われることもあれば、病状によって手術と抗がん剤、放射線と抗がん剤といったように、組み合わせて行われることもあります。

がん三大療法

手術療法

手術療法は、がんの病巣を外科手術で除去します。体にメスを入れるため、患者への負担が比較的大きい治療法とされていましたが、近年は内視鏡による手術方法の発達などがあり、短期間で退院できるケースも増えています。早期にがんを発見した場合に有効で、がん細胞を一気に取り除くことができるため、短期間での治癒が期待できます。

放射線療法

放射線療法は、がんの病巣部に放射線を照射する方法です。手術では難しい場所にあるがんの病巣であっても対応することができます。治療機器の進歩によって、がん細胞にのみ照射する技術が高まり、効果は飛躍的に向上しています。ただし放射線によって正常な細胞にもダメージを与え炎症が起きてしまうことなど、がん以外の部位にも傷害が及ぶ副作用があります。

抗がん剤

抗がん剤の投与により、がん細胞を死滅またはがん細胞を抑制する治療方法です。血液を通じて全身に作用するため、小さながんや転移が進んだがんにも効果を期待できます。ただし、がん細胞以外の正常な細胞にも悪影響を与えるため、さまざまな副作用があらわれる可能性があります。代表的な副作用は、脱毛、吐き気、倦怠感、しびれ感などで、肝臓や腎臓への障害などです。抗がん剤によっては辛さをともなう場合がありますが、近年は副作用を抑える薬の進歩があるため、以前に比べて治療を受けやすくなりました。

三大療法が抱える限界

医療機関で保険診療にて行われている三大療法は、臨床試験を経てがんの治療効果が科学的に認められているからこそ行われている治療法です。しかし、これ以上は効果が見込めない、ここまではできないといった「限界」も、それぞれの療法に存在します。医学の進歩とともにがんの治療法もここ数十年の間に目覚しい発展を遂げていますが、手術、放射線、抗がん剤のいずれも、残念ながら100%がんが治癒する治療法ではありません。

手術は「とりきれる」がんにしか対処できない

手術は画像検査で確認できるがんを除去するのに有効な手段です。しかし、目に見えないがんまでなくすことはできません。がんはそもそも目に見えないがん細胞が集まったものです。一般的にたった1センチのがんでも、それを作るがん細胞の数は実に10億個ともいわれています。がん細胞は分裂を繰り返し周囲の組織を壊しながら広がっていきます。また、リンパにのって全身をめぐり、別の臓器に転移する可能性もあります。そうした細胞一つひとつまでは、手術で取り去ることはできないわけです。手術だけで完治するのは、早期かつ局所的なケースに限られてきます。

放射線治療は画像に映せないがん細胞は殺せない

放射線治療も手術と同様、基本的に「目に見える」がんに対するものです。手術に比べればメスを入れないので負担が少ないといえますが、治療で用いる放射線は、がん細胞を変性させ殺傷するほど強いエネルギーを持っています。そのため、患部周辺の正常細胞にもダメージを与えます。できる限り正常な細胞にダメージを与えないよう、1回の治療につき照射する線量には上限があるほか、全期間で照射する放射線の総量も決められています。病巣が1ヵ所ならそこだけに狙いを定めて集中的に照射できますが、転移が進んでいるがんだと、1ヵ所あたりの線量がおのずと限られてしまい、十分に治療しきれないということも起こります。

放射線治療

抗がん剤治療は副作用をともなう

「手術」と「放射線」は、目に見えるがんを治療するのに有効な方法ですが、目に見えないがん細胞への対応はできません。その点、抗がん剤であれば、血液やリンパにのって全身にわたったがん細胞を退治することができます。しかし、よく知られているように抗がん剤の多くは副作用をともないます。例えば、抗がん剤治療が行われると脱毛したり吐き気が起こったり、食欲不振になったりといった症状があらわれます。近年、症状を緩和する薬を併用することで多少コントロールができるようになってきました。それでも体に負担がかかることには変わりありません。

三大療法で免疫力が低下してしまう矛盾

がんの三大療法は、臨床試験を経て治療効果が科学的に認められた方法です。保険適用内で受けることができるため、まずは三大療法による治療を検討することからがん治療はスタートするでしょう。しかし、その三大療法も万能ではなく限界があります。そして体へのダメージも少なくないのです。

人間の体はダメージを受けると、回復のために体力を消耗します。さらに治療を受ける際にかかる心理的なストレスは、免疫力低下の要因となります。免疫力が低下してしまうと、がんにとっては都合の良い環境になります。それまでがん細胞をたたいていた免疫細胞の数が減り、がんは手薄になった攻撃から逃れ、増殖しやすくなります。

このような事態を避けるためには、体内の免疫力を常に強化しておくことが重要になります。今、三大療法によって低下してしまう免疫力を強化することが、三大療法に次ぐ新しい治療法として期待されています。

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