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「余命」や「生存率」 不安になる数字を患者はどう捉えるべきか

がんであると診断され、「余命」と「生存率」が知りたいと思うのは、ごく自然なことでしょう。響きのインパクトが強すぎて、そのまま受け取ってしまう人もいるかもしれません。捉え方は人それぞれですが、そもそもどう算出されているのか、絶対なのか? 「余命」と「生存率」を正しく理解し、治療に活かせるよう向き合いましょう。

目次

明確なルールや算定方法は存在しない?余命の考え方

余命を算出する「生存期間中央値」について

「5年相対生存率」とは?誤解されやすいデータの意味

その他の統計値も新たに登場

明確なルールや算定方法は存在しない?余命の考え方

映画やテレビドラマでよく聞く「あなたの余命を○カ月です」「○年と余命宣告された」というセリフ、あるいは「余命○年の○○」といった書籍タイトルなど、“余命”という言葉にふれる機会がしばしばあります。がん治療の現場において、余命宣告は必ず行われると思っている方も多いようですが、実際の医療現場では余命宣告は必須ではありません。また、誤解を生みやすいことから、医師もその扱いには注意を払っています。

例えば、一般の人が「余命1年」と聞けば、同じ病状のがん患者が生きられる平均的な年月であると思うでしょう。つまり、あとどのくらいの期間を生きられるかの予測です。余命1年ならば、1年後の前後数カ月の範囲で多くの人が亡くなっていると理解しているようです。また、余命宣告をされたら、宣告された年月以上に長くは生きられないと思う人がほとんどでしょう。

では、実際に医師はどのように余命を算定しているのでしょうか。実は、余命宣告には公に定められた予測の手順やルールはありません。そのため、医師によって余命予測の方法はさまざまです。説明にあたっては、当然、根拠となるデータを元に説明しています。

「余命」や「生存率」

余命を算出する「生存期間中央値」について

そこでよく用いられるデータが「生存期間中央値」と呼ばれるものです。これは、過去に同じタイプ、進行度のがんに対して、同様の治療法を用いた患者のデータを集めて、その中央の値を基準とする考え方です。

仮に、患者データを99人集めたとします。そして、生存期間が短かった人のデータから長かった人のデータを順に並べ、ちょうど真ん中になる50番目の人のデータが生存期間中央値となります。「今後、こうした治療を行った場合の余命は○年」といわれる場合は、このデータを参考にしている医師が多いようです。

ただし、あるがんの治療での生存期間中央値が6カ月になったとしても、余命宣告を受けた人の今後生きられる期間が6カ月である可能性が高い、ということにはなりません。あくまで、50番目に亡くなった人の期間を述べているといえます。

完治の可能性が少ないがん治療のケースでは、短期間で亡くなる人が多いため生存期間中央値が短くなります。しかし、治療によって長く生きる人もいます。個別のがん患者、がんの性質、そして余命の関係は複雑で、自分に当てはまるかどうかは、医師としても一概に言えないというのが実情なのです。

「5年相対生存率」とは?誤解されやすいデータの意味

生存期間中央値とともに、医師が余命を推測する際に用いるデータに「5年生存率(5年相対生存率)」があります。一般に知られているのは、国立がん研究センターが発表している「5年相対生存率」です。

このデータは、「がんと診断されてから5年以上生きられる割合」ではありません。これは、「がんと診断された人のうち5年後に生存している人の割合が、日本人全体で5年後に生存している人の割合に比べてどのくらい低いかを表している」のです。

また、留意したいのが、5年生存率は“がんと診断されてから5年”ですから、“がんになってから5年”ということではありません。がんが見つかる機会はさまざまで、検診で初期のがんが見つかる場合もあれば、体調を崩し診察を受けたら進行したがんだったという場合もあります。5年生存率の計算では、これらすべてを含みます。

その他の統計値も新たに登場

多くのがんでは、5年後の生存状況が回復の一つの目安とし、国立がん研究センターでは5年後の生存率を発表してきました。しかし近年は、がん治療の進展が目覚ましく、データが古くて最新のがん治療の実態が反映されていないといった懸念もありました。そこで、現在のがん治療の様相を確認できる値として、3年生存率の発表が2018年9月に初めて行われました。

また、同時に医療機関別の主要5部位(胃、大腸、乳房、肝臓、肺)の病期別の5年生存率も初めて公表されました。これにより、病院の特徴などを知ることで、受診の際の参考になることが期待されています。

さらに、2019年1月には、「全国がん登録」という新制度に基づく初の集計結果を発表しました。以前のがん患者のデータの登録制度は任意だったこともあり、登録漏れがあったと推測されます。そこで、2016年からはがん登録が義務化され、そのデータを用いた統計値が発表されたのです。新制度のデータを用いた5年生存率については、2023年に最初の公表が予定されています。

以上のように、より正確にがんの治療状況を把握できるようさまざまな統計が発表されています。しかし、たとえ統計がより精緻になったとしてもあくまでも統計です。余命宣告の誤差が少しずつ縮まることはあるかもしれませんが、個別の患者にすべて当てはまるものではありません。

「余命」や「生存率」

まとめ

がんと診断されれば、大きく動揺するでしょう。特に、余命を告げられるということは死を意識し、不安を抱く人がほとんどです。しかし、余命は確かに一つの目安ですが、気にしすぎる必要はありません。大切なことは、病状を把握したうえで今できる最善の方法を選択し、治療に集中することです。分からないことは主治医に質問し、今自分が行うべきことをしっかりと知ることが、不安を和らげる助けとなってくれるでしょう。

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