03-6914-0723(池袋クリニック)受付時間:月曜~木曜・土曜 10:00~17:00(日祝除く)

がんを知る

Cancer

80代男性の半数以上が「前立腺がん」に

もともと日本人には少なく、高齢者に多いと言われていた前立腺がんですが、近年、急激に罹患者数が増加しています。初期症状がほとんどないため、気づかないうちにゆっくりと進行していくことが特徴です。前立腺がんと診断された際の治療と特徴を解説します。

目次

80代以上男性の半数が前立腺がん? 進行が遅く健康に問題がないケースも

罹患数では、男性のがんにおいて4番目に多い疾患

初期の自覚症状はほぼ無い。症状がある場合はかなり進行していることが多い

三大療法に加えて「監視療法」「ホルモン療法」も選択肢に

80代以上男性の半数が前立腺がん? 進行が遅く健康に問題がないケースも

前立腺は、男性にだけある臓器です。膀胱の下にあり、尿道の始まりにあたる部分を取り囲んでいます。また、一部が直腸と接しており、肛門から指を入れ、直腸の壁越しに触診することもできます。前立腺の働きについては、実はまだよく分からないことが多々あります。その中で分かっていることは、精液の一部に含まれる前立腺液を分泌していることです。射精時に精液に混ざることで精液を液状化させ、精子を保護したり、精子の運動を促したりする作用があります。

内部の構造はよくミカンに例えられ、ミカンの実にあたる部分が、中心領域と移行領域、ミカンの皮にあたる部分が辺縁領域と呼ばれています。前立腺がんは、主に辺縁領域に発生します。

ほかの臓器のがんに比べて、ゆっくりと進行するため、早期に発見できれば治癒することが可能ながんとも言えます。ただし、初期には自覚症状がほとんどなく、発見が遅れることもあり、その場合は前立腺の周囲のリンパ節や骨、ほかの臓器に転移する恐れがあります。

前立腺がんの中には、とりわけ進行がゆっくりなものもあり、その場合は寿命に影響しないと考えられています。80代の男性の半数は前立腺がんがあるとも言われ、生前にがんが見つかっておらず、死後の解剖で初めて見つかる場合もあるほどです。

前立腺解説

【前立腺は膀胱の下にあり、尿道の始まりにあたる部分を取り囲んでいます】

罹患数では、男性のがんにおいて4番目に多い疾患

前立腺がんの原因については、まだ完全に解明されていません。近年の報告では、精巣や副腎から分泌されるアンドロゲンという男性ホルモンが関与していると言われています。

前立腺がんはもともと欧米において発症の頻度の高いがんとされてきました。日本においては、あまり多く見られるがんではなかったのですが、近年増加しているがんの一つとして耳目を集めています。国立がん研究センターの2018年のがん罹患数予測では、男性のがんにおいて、胃がん、大腸がん、肺がんに次いで4番目となっています。

前立腺がんが増加している理由としては、高齢化が挙げられます。前立腺がんは50歳を過ぎると増え始め、60歳以上で急激に増加し、80歳以上ではその半数以上が潜在性の前立腺がんを保持しているとされます。近年の急速な日本社会の高齢化に伴い、患者が増えている側面があるといえるでしょう。PSA検査の普及により、症状の現れない早期のがんが見つかるようになったことも、患者の増加の一因になっているようです。

初期の自覚症状はほぼ無い。症状がある場合はかなり進行していることが多い

前立腺がんは、がんの中では比較的簡単な検査で発見できるのが特徴です。

前立腺液はPSA(前立腺特異抗原)と呼ばれる酵素(たんぱく質)を含みますが、前立腺がんや前立腺肥大、前立腺の炎症などで、PSA値が上昇することが知られています。検査では、問診と直腸指診、PSA検査を行うのが一般的で、さらに詳しく調べる必要がある場合は、直腸から超音波検査やMRIを行います。

これらの検査で前立腺がんの疑いがあれば、病変部と思われる組織に針を入れ組織を取り出し、がんの有無等を調べる針生検を行います。その結果、前立腺がんであると確定診断がくだされれば、さらにがんの進行度を調べるためにCTやMRI、骨シンチグラフィーなどによる検査を行います

前立腺がんは、主に尿道から離れた辺縁領域に発生するため、自覚症状は、がんが早期の段階では現れません。「尿が出にくい」「トイレの回数が多くなる」「尿をしたあとにすっきりしない(残尿感)」などの自覚症状が出た段階でがんが発見された場合はかなり進行していることが多く、がん細胞がすでに骨やリンパ節に転移してまっていることもあります。

【前立腺がんの進行】

三大療法に加えて「監視療法」「ホルモン療法」も選択肢に

前立腺がんで主に用いられる治療法は以下のとおりです。

監視療法

前立腺生検で見つかったがんがごく少量で、ただちに治療を行わなくても余命に影響がないと判断される場合に選択されます。3~6カ月ごとのPSA検査と直腸指診、1~3年ごとの前立腺生検を継続し、治療が必要と判断されるまでは治療は行わず、病状悪化の兆しが見られた時点で治療を開始します。特に高齢者の場合には体の負担の少ない治療法を選択していくことが大切なため、広く普及している治療法です。

手術療法

前立腺がんの根治的手術療法としては、前立腺全摘除術が標準術式となっています。がんが前立腺内にとどまっている場合には、最も高い効果が期待できる治療法と言えます。手術では、前立腺と精のうを摘出し、さらに膀胱と尿道をつなぎます。手術方法には、下腹部を切開して行う開腹手術のほか、内視鏡による腹腔鏡手術、ロボット手術などがあります。

放射線療法

手術療法と同じく、がんが前立腺内にとどまっている患者に多く用いられ、体の負担が少ないことから、高齢者にも行うことができます。また、骨へのがんの転移で痛みのある場合などにも用いられます。なお、放射線の照射方法には、体の外から放射線をあてる外照射療法と、放射線源を体内に挿入し体の中から放射線をあてる組織内照射療法があります。

ホルモン療法(内分泌療法)

前立腺がんの多くは、増殖・進展において精巣と副腎から分泌される男性ホルモンに依存しています。そこで、男性ホルモンの働きや分泌を抑えることによって、前立腺がん細胞の増殖・活動を抑制しようとするのがホルモン療法です。ただし、ホルモン療法は、放射線療法や抗がん剤療法のようにがん細胞を殺すわけではないので、治療を継続するうちにホルモン療法に対する抵抗性が生まれ、少しずつ治療効果が低下していきます。

化学療法(抗がん剤治療)

ホルモン療法が有効でない症例や効果が薄れてきたときに行われます。従来、前立腺がんに抗がん剤は効きにくいとされていましたが、新しい治療薬の開発も進んでいます。

まとめ

80代では男性の約半数が罹患している前立腺がん。進行がゆっくりであるため、治療が必要ない方も多く、早期発見であれば治療による完治も期待できます。進行について把握し、適切な治療の選択を行っていきましょう。前立腺に適用される抗がん剤の研究開発が進むなど、治療環境は進歩していることも心強い要因です。

pagetop