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前立腺がん|高齢者に多い男性特有のがん、近年は検査法の普及で発見が容易に

前立腺がんは、60歳以上の高齢者に多い男性特有のがんです。近年はPSA検査と呼ばれる、血中タンパク質濃度を調べる検査が普及したことで、発見されやすくなってきています。進行がゆっくりのため、予後に影響しないと判断された場合は、積極的な治療を行わず経過観察を続け、悪化したら治療に入るという計画が立てられることもあります。

医療法人輝鳳会 理事長 池袋クリニック 院長 甲陽平

目次

前立腺がんとはどんな病気か。原因、自覚症状は?

前立腺がんのステージと治療

治療はQOL(生活の質)との両立がポイント

前立腺がんとはどんな病気か。原因、自覚症状は?

前立腺は、膀胱の下に尿道を囲むようにして位置する臓器です。前立腺がんは、おもにこの前立腺の 外腺(辺縁領域)から発生します。

男性特有のがんで、胃がん、大腸がん、肺がんに次ぐ発症率とされていますが(2012年のデータによる)、多くの場合進行はゆっくりで、がんではないほかの病気で亡くなった人を調べたところ前立腺がんがあったというケースもあります。前立腺がんの発生には男性ホルモンが関与しており、60歳以上の高齢者に多いことから、加齢によるホルモンバランスの変化が影響しているものと考えられています。

加齢のほかには、家族に前立腺がんの人がいるとリスク増になることがわかっています。食事の欧米化や喫煙も関係するといわれていますが、高齢と家族歴以外の要因はまだはっきりしていません。

ほかの多くのがんと同様、前立腺がんも初期にはほとんど症状がありません。進行しがんが大きくなると尿道が圧迫されやすくなるため、頻尿や残尿感、尿が出にくい、夜間の尿の回数が多いなどの症状が現れることがあります。

これらの症状は、前立腺肥大症という良性疾患でも起こります。そのため、がんとは思わず放置されやすいといえます。

がんが進行し、尿道や膀胱まで広がると、排尿時の痛みや明らかに目でみてわかる血尿が認められ、さらに大きくなると尿閉といって、尿が出なくなります。前立腺の上部には精嚢腺という精液をつくる組織がありますが、ここにがんが広がると、精液が赤くなることもあります。がんの進行とともに腰痛や腹痛、また尿閉を起こすことでも痛みが出ます。さらにリンパ節や骨転移(骨盤や脊椎など)を起こすと疼痛やむくみといった症状が出やすくなります。

[前立腺の場所と周囲の臓器]
前立腺の場所と周囲の臓器

前立腺がんのステージと治療

前立腺がんが疑われる場合には、まず採血によるPSA検査でがんの疑いがあるかどうかを調べます。

前立腺からは、精液の一部に含まれる前立腺液がつくられますが、そこにはPSAというタンパク質が含まれています。PSAはそのほとんどが前立腺から精液中に分泌されますが、ごく一部は血液中に取り込まれます。この濃度を調べるのがPSA検査です。

濃度が基準値(一般的に0~4ng/mL)を超えるなど、がんの疑いがある場合は、直腸診や経直腸エコー(直腸に超音波を発する器具を挿入し、前立腺の大きさや形等を調べる)検査が行われます。

これらの検査からがんの疑いが強いと判断された場合は針生検で前立腺の組織を調べ、確定診断します。CTやMRI、骨シンチグラフィー等の画像検査は、がんの広がりや転移の有無等を調べ、病期の決定および治療計画を立てるために行われます。

[図表1]前立腺がんの病期(ステージ)
T1直腸診で明らかにならず、偶然に発見されたがん
T1a前立腺肥大症などの手術で切り取った組織の5%以下に発見されたがん
T1b前立腺肥大症などの手術で切り取った組織の5%を超えて発見されたがん
T1cPSAの上昇などのため、針生検によって発見されたが
T2直腸診で異常がみられ、前立腺内にとどまるがん
T2a左右どちらかの1/2までにとどまるがん
T2b左右どちらかだけ1/2を超えるがん
T2c左右の両方に及ぶがん
T3前立腺をおおう膜(被膜)を越えて広がったがん
T3a被膜の外に広がっているがん(片方または左右両方、顕微鏡的な膀胱への浸潤)
T3b精のうまで及んだがん
T4前立腺に隣接する組織(膀胱、直腸、骨盤壁など)に及んだがん
N0所属リンパ節への転移はない
N1所属リンパ節への転移がある
M0遠隔転移はない
M1遠隔転移がある
出典:UICC TNM Classification of Malignant Tumours, 8th Edn, Wiley-Blackwell:2017, 191-192

前立腺がんは進行が遅いがんのため、前立腺内にとどまっており治療を始めなくても予後に影響がないと判断された場合には、監視療法といって経過観察をしながら悪化した場合に治療をするという選択肢があります。

その他、前立腺がんの治療には、手術、放射線治療、内分泌(ホルモン)治療、化学療法などがあります。化学療法は一般的に、転移があり内分泌治療が効かなくなった場合に行われます。

なお、がんの治療は生殖能力に影響することもありますので、子どもを持つことを希望するかどうかも、治療方針を決めていく上で留意すべき点となります。

治療はQOL(生活の質)との両立がポイント

前立腺がんの手術では、前立腺や精嚢を摘出し、その後膀胱と尿道をつなげる際、周囲の筋肉に傷がつくなどで、排尿障害や勃起不全といった合併症が出る可能性があります。近年はできるだけ切開範囲が小さくなるよう、腹腔鏡やロボット手術も普及しつつあり、それにより合併症の程度が軽くなったり、合併症からの回復が早くなったりするといわれています。一方、早い回復をめざした術後のリハビリテーションや服薬も重要になってきます。

前立腺がんに対しては放射線治療も多く行われますが、これも手術に比べると治療後のQOL低下は少ないとされています。

放射線治療は大きく、体の外から放射線を照射する「外照射療法」と、体内に放射線物質を留置し照射する「組織内照射療法」の2種類があります。

外照射療法には、コンピュータで治療範囲を割り出し、膀胱等の周囲の組織にできるだけ放射線が当たらないようにし、患部にピンポイントで照射するIMRT(強度変調放射線治療)、多方向から患部に放射線を集中させる定位放射線治療など、さまざまな方法が開発、実用化されています。

また、組織内照射療法にはおもに、ごく小さなカプセルに放射線物質を封じ、それを体内に入れて永久的に病巣の近くから照射する密封小線源永久挿入療法や、一時的に針を差し込み照射する高線量率組織内照射法と呼ばれる方法があります。

ただし放射線療法にも、手術よりは少ないとされるものの、排尿困難や頻尿、排便時の痛みといった副作用はあります。副作用は大きく分けて、治療後比較的早く起こる早期副作用と、しばらくたってから起こる晩期副作用があります。いずれも経過をみながら、QOLをできるだけ下げないよう、排尿トレーニング等のリハビリやケアを行っていくことが大切です。

まとめ

前立腺がんの治療は、排尿・排便困難や勃起不全、生殖能力への影響といった合併症をともなうことが少なくありません。そのため、おもに放射線治療の分野で、できるだけ周囲の臓器や組織を傷つけず、QOL(生活の質)の低下を抑える治療法が登場しています。ただし合併症や副作用をまったくなくすことは困難ですので、リハビリやケアがQOLの維持には重要といえます。

【甲 陽平(かぶと・ようへい)】
医療法人輝鳳会 理事長 池袋クリニック 院長
1997年、京都府立医科大学医学部卒業。2010年、池袋がんクリニック(現 池袋クリニック)開院。
「あきらめないがん治療」をテーマに、種々の免疫細胞療法を主軸とし、その他の最先端のがん治療も取り入れた複合免疫治療を行う。
池袋クリニック、新大阪クリニックの2院において、標準治療では治療が難しい患者に対して、高活性化NK細胞療法を中心にした治療を行い、その実績は5,000例を超える。

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