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日本人の2人に1人は発症!? “国民的病”である、がんの今を知る

かつて日本人の死因の第1位は脳卒中でしたが、1981年にがんが死因のトップになり、以来ずっと1位の状況が続いています。今も年々増加をしており、国立がん研究センターでは2017年に新たにがんと診断される人は100万人を超えると予測。また、2016年には、がんで死亡した人は約37万人を数え、これは日本人全体の死亡者の3人に1人にあたる数字です。
日本におけるがん治療の最新情報についてみていきましょう。

目次

増える患者数~日本人とがんの統計データ~

がん発生のメカニズムとは

がんの要因となる生活習慣や感染

まとめ

増える患者数~日本人とがんの統計データ~

国立がん研究センターの統計では、生涯でがんに羅患する確率は、男性が62%、女性が47%となっており、「日本人の2人に1人が、生涯に1度はがんにかかる」という言葉を裏付けています。また、がんで死亡するリスクは男性で4人に1人(25%)、女性で6人に1人(16%)と推計されています。

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もっとも、がんによる死亡が高率になっているのには、日本が超高齢社会を迎えていることにも要因があるようです。がん罹患率の年齢による変化をみると、男女とも50歳代くらいから増加をし、高齢になるほど高くなっています。また、30歳代から40歳代では女性が男性よりやや高く、60歳代以降は男性が女性より顕著に罹患率が高くなっています。

現在の年齢別のがん罹患のリスクを見ると、40歳の男性が20年後までにがんと診断される確率は7%、女性では9%となっており、30年後まででは男性が20%、女性が17%となっており、がんと年齢の関係を裏付けています。がんが決して他人事ではなく、まさに「がんは国民病」といえる時代を迎えているのです。

がん発生のメカニズムとは

人の体は数十兆個もの細胞でできています。当初、1個の細胞である受精卵は、分裂を繰り返すことで様々な種類の細胞に分化し、体の各部の組織や臓器となり、体を形作っています。多くの細胞は一定のコントロールのもと、生まれてから何度も分裂を繰り返し、体の組織や臓器を適切な状態を保ち、新陳代謝を繰り返すことで健康を維持しています。

しかし、細胞が分裂する際に情報を伝える遺伝子が、体の内外からのストレスなどさまざまな要因により傷つけられたり、コピーのミスが起きたりして、遺伝子が少し異なる細胞が生まれることがあります。いわゆる遺伝子の突然変異ですが、この現象自体は誰の体のなかでも毎日、数万ケ所で起きているといわれ、異常のある細胞はすぐに死んだり、免疫の攻撃により退治されたりします。

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ところが、この防御網をかいくぐって生き残り、遺伝子変異を繰り返すことで、体のコントロールを無視してとめどなく分裂を繰り返す異常な細胞が現れることがあります。この死なない細胞ががん細胞です。ただし、がん細胞は、健康な人の体でも、学説によっては1日5000個もできるといわれており、免疫細胞によって退治されています。ところが、免疫細胞が見逃してしまうことがあり、この生き残ったがん細胞は増殖を繰り返すことでやがて塊をつくり「がん」となるのです。

無制限に増殖する細胞の塊を腫瘍といいますが、悪性腫瘍であるがんの特徴は、発生した元の臓器を離れても増殖を続けることができることです。がん細胞は次第に周囲の組織へと入り込み(湿潤)、腫瘍が拡大していきます。あるいは最初にできた腫瘍からがん細胞が離れ血流やリンパの流れにのって体のほかの部分に移り(転移)、新たな腫瘍をつくります。この湿潤と転移によって移動し、元の臓器を離れても増殖できるところが、がんの恐ろしさなのです。

さらに、「悪液質」という状態を引き起こすのもがんの特徴です。栄養不良で体が衰弱した状態のことで、がんで亡くなる人の4人に1人は悪液質が原因といわれますが、そのメカニズムはまだはっきりと解明されていません。腫瘍と体の相互作用による全身の慢性炎症、がん細胞が自らの活動を維持するために作り出す血管(新生血管)などが原因として挙げられています。いずれにしても食欲不振で栄養失調状態に陥ったり、エネルギーのムダな消費が起こったりするなどして、脂肪や筋肉が次第に減っていき衰弱していきます。

がんの要因となる生活習慣や感染

がんはさまざまな要因によって発症しますが、国立がん研究センターによると日本人の男性のがんの53.3%、女性のがんの27.8%は、生活習慣や感染が原因になっていると考えられています。中でも、大きな原因となっているのが、喫煙(男:約29.7%、女:約5.0%)と感染(男:約22.8%、女:17.5%)です。

〈喫煙〉

多くの研究から、タバコが肺がんだけでなく、さまざまながんの原因になることが明らかにされています。タバコを吸っている人がなりやすいがんの種類としては、肺がんをはじめとした呼吸器系のがんがまず挙げられますが、そのほかにも、肝臓がん、胃がん、膵臓がん、膀胱がん、子宮頸がんにも喫煙の影響があることがわかってきました。また、タバコを吸う人は吸わない人に比べて、がんになるリスクが約1.5倍に高まる(国立がん研究センター・多目的コホート研究)というのも、見逃せないデータです。そのうえ、タバコを吸っているがん患者では、別の新たながん(二次がん)が発生しやすことも明らかになっており、同様に、がんの再発、治療効果の低下といった悪影響も指摘されています。

〈感染〉

日本人のがんの原因として、女性で1番目、男性で2番目に多いのが感染です(国立がん研究センター・予防研究グループ)。B型やC型の肝炎ウイルスによる肝がん、ヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頸がん、ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)による胃がんなどが、日本人の場合その大半を占めています。そのほかにも、悪性リンパ腫や鼻咽頭がんの原因となるエプスタインバーウイルス(EBV)、成人T細胞白血病/リンパ腫の原因となる白血病ウイルスⅠ型(HTLV-1)の感染などが解明されています。

〈飲酒〉

喫煙、感染に続くのが飲酒で、男性の9%、女性の2.5%を占めます。日本人男性を対象とした研究でも、多量の飲酒でがんのリスクが高まることがわかっており、1日の摂取が純エタノール量換算で23g程度(日本酒1合、ビール大瓶1本、ウィスキーダブル1杯、ワインボトル1/3程度)の人に比べ、46g以上で40%程度、69g以上で60%程度、がんになるリスクが高くなります(国立がん研究センター・多目的コホート研究)。特に、食道がん、大腸がんとの強い関連が指摘されており、女性の場合、乳がんのリスクが高まることも示されています。

〈食生活〉

以上の3要素に続く原因としては、食生活が挙げられます。
食塩摂取量の多い男性では、胃がんのリスクが高まることが報告されています。また、塩辛など塩蔵品は男女ともに胃がんのリスクが高いという結果も示されています(国立がん研究センター・多目的コホート研究)。

野菜・果物の摂取が少ないグループでは、がんのリスクが高まることが知られていますが、野菜・果物を多くとることでリスクが低下するかどうかは明らかになっていません。とはいえ、野菜・果物をとることは各種の生活習慣病の予防にもつながり、食道がん・胃がん・肺がんのリスク低下が期待されています。

飲み物・食べ物を熱いままとると食道がん、食道炎のリスクが高まるという報告(WHO(世界保健機関)のIARC(国際がん研究機関))が数多くされています。

〈体格〉

体格の影響でリスクが「確実」に高まると報告(国立がん研究センター・多目的コホート研究)されているがんがあります。肥満は、食道・膵臓・肝臓・腎臓・大腸・乳房(閉経後)・子宮体部のがんのリスクとなります。また、成人後の体重増加は乳房(閉経後)のがんとの関連が指摘されています。
その一方で、日本人はじめアジア人は、やせすぎによってがんのリスクが上がることも観察されており、男性については肥満よりもやせている人のほうが高くなっています。ただし、喫煙をしない場合は、やせていても死亡リスクが高まらないという報告も見られます。

まとめ

がんが「国民病」となっている現代ですが、診断や治療技術の改善もあり、がんと診断された人のうち、治療等により5年後に生存している人の割合を示す5年相対生存率は、男性59.1%、女性66.0%となっており、男女計で62.1%を超えています(国立がん研究センターの統計)。また、日本対がん協会によると、がんの経験者やがん治療を継続している「がんサバイバー」の数は700万人を数えるという推計もあり、「がんは不治の病ではない」という言葉にも説得力が増している今日このごろです。
がんについて正しい知識をつけることで、がん治療への不安や心配が和らぐ人も多いようです。治療を進めながら。少しずつ勉強することも続けていきましょう。

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