がんの「転移」と「再発」の基礎知識
がんの病巣を取り除くことができても、多くの人が「転移」と「再発」に対し不安を抱えていくことになるでしょう。考えると気持ちが重くなりますが、知識を身につけておけば、体調の変化があったときに早めの対策を打つことができます。
目次
がんの転移が起こりやすいのはリンパや血液が集まる場所
がんが転移したときの治療方法
がん細胞を100%取り除くことはできない……「再発」の可能性
転移・再発の可能性を低くする対策
がんの転移が起こりやすいのはリンパや血液が集まる場所
転移とは、がんが最初に発生した場所から別の臓器や器官に移動し、がん細胞がその場所で増えてしまうことです。
がん細胞はリンパ液や血液に乗って身体の中を移動することから、リンパ液が集まる場所と血液が集まる場所である、リンパ節や肺、肝臓、脳、骨などが転移しやすいとされています。
リンパ液と血液から広がる以外にも、がんが発生した臓器からがん細胞が剥がれ落ちて近接する臓器や器官に直接広がることもあります。これは播種(はしゅ)と呼ばれています。
がんが最初に発生した部位の事を「原発巣(げんぱつそう)」といいます。
原発巣のがんは、部位の名称によって呼ばれ、肺にできたなら「肺がん」、大腸にできたなら「大腸がん」です。転移の場合は、がんの呼び方は部位によって呼ばれません。例え、がんが発生している場所が「肺」であっても、転移によるがんの場合には、肺がんとは呼ばれません。呼称は、あくまでも原発巣の部位が採用され、原発巣が大腸であるならば、「大腸がんの肺転移」と呼ばれます。
がんが転移したときの治療方法
がん治療は、その発生部位ごとに治療方針が検討されますが、基本的には原発巣への対処を中心に考えられます。
主治医は転移先の部位において専門医の力が必要な場合は連携し、患者さんに最適な治療計画を立てます。
転移がんの場合、そのがんは原発のがんと同じ性質を持つことになり、そのため大腸から肺に転移した場合、肺にあるがんであっても大腸がんに効果のある抗がん剤を使用します。そういったことから、「原発巣はどこなのか」は治療方法を決めるために非常に重要な軸となります。
がんが進行し、体のあちこちにがんが転移した状態を「全身がん」と呼びます。最近では女優の樹木希林さんや高須クリニックの高須院長が、全身がんであることが報じられました。全身がんの状態になってくると、治療も徐々に困難となってきます。
がん細胞を100%取り除くことはできない……「再発」の可能性
がん治療での治療方法は主に三大治療である「手術治療」「抗がん剤治療」「放射線治療」になります。
目に見える腫瘍を手術で取り除くことができた場合、もしくは抗がん剤治療や放射線治療で腫瘍が消えたことを確認できた場合には、「治療が成功した」とされます。
しかし、目視で確認できるがんが無くなったとしても、がん細胞を完全に体内から退治したという保証はありません。残ったがん細胞が時間をかけて再び増殖し始める可能性もあり、「再発」への危惧はどのがん患者さんにもあります。
ちなみに最初に発生したがんと同じ部位に現れることを「局所再発」、近くのリンパ節または組織で現れることを「領域再発」、離れた器官に現れることを「遠隔再発」といいます。
転移・再発の可能性を低くする対策
治療でがんを取り除いても、「別の場所に転移するのではないか」「再発してしまうのではないか」と、がん患者さんは不安に思うでしょう。転移や再発については、がんの種類や治療経過から予測して、対策を取ることができます。
例えば、「肺の小細胞がん」は、脳に高い確率で転移することが知られています。このため予防目的で脳に放射線を当てる治療を実施することがあります。
がん治療では「目に見えるがん」は、取り除くことができても、「目に見えないがん細胞」を退治できたかどうかはわかりません。このため、手術を行った患者さんには、がん病巣部を取り除いたあとに、抗がん剤治療を実施することが多いのです。これは全身治療ともいわれ、身体の中に存在する目に見えないがん細胞にもアプローチすることで、転移・再発を防止しているといえます。
近年では免疫療法による併用治療を選択する患者さんも増えてきました。
目に見えないがん細胞と戦うために抗がん剤は有効ですが、副作用を伴います。
免疫療法であれば副作用はほとんどなく、身体への負担が少ないのです。免疫療法は、患者さん自身が本来持っている免疫力を高め、がん細胞への攻撃力を強くする治療法です。
免疫療法と抗がん剤治療と交互に実施したり、手術後の再発転移予防目的に免疫療法を用いるなど、免疫療法と組み合わせた治療を行うことで、患者さんの
まとめ
転移は、リンパ液や血液の流れにがん細胞が入り込み、リンパ液、血液が集まるリンパ節や肺、肝臓、脳、骨などで発生しやすいとされています。残念ながら、たとえ早期がんを手術で取り切ったとしても、再発する危険性はゼロではありません。転移や再発の確率を下げるために、主治医と連携してできることを確実に実行していきましょう。