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不治の病ではない! あの五輪選手も戦う白血病治療の今

18歳の競泳女子日本代表選手が2019年2月、白血病と診断されたことを自身のツイッターで明らかにしました。かつて「不治の病」とされた白血病ですが、研究が進んだ今では、治る可能性の高い病気になりつつあります。「血液のがん」といわれ、固形がんのように手術では切除できず、抗がん剤治療が主となりますが、副作用が大きいのです。

日本を代表するアスリートが表明したことで注目を集める白血病について、症状や進行、そして治療法を解説します。

目次

大きく四つに分けられる白血病。一番多いのは、「急性骨髄性白血病」

急性と慢性で全く異なる症状

白血病の治療は化学療法が中心

大きく四つに分けられる白血病。一番多いのは、「急性骨髄性白血病」

体内を流れる血液は、赤血球と白血球、血小板の三種の血球(細胞)と、液体の血漿から成ります。骨の中にある骨髄で作られますが、それぞれの血液細胞になるまでに何段階かの細胞の変化(分化)を経ます。未熟な血液細胞が成熟した血液細胞へと変わっていきます。この過程で白血球になる細胞が異常に増える病気が白血病です。

白血病は大きく四種類に分けられます。まず、病気の進行の状況やパターンから「急性」と「慢性」に分けられます。さらに、がん化した細胞のタイプによって「骨髄性」と「リンパ性」に分けられます。四つのなかでいちばん患者が多いのは、「急性」の「骨髄性白血病」です。

なお、白血病における急性と慢性の意味は、他の疾患とは異なります。急性白血病は、成熟していない血球細胞が増加するもので、慢性白血病は未熟なものから成熟したものまですべての血球細胞が増加することを指します。

急性骨髄性白血病

血液が作られる過程で未熟な血液細胞である「前骨髄球」に遺伝子異常が起こり、正常な成熟ができなくなります。がん化した細胞(白血病細胞)が無制限に増殖してしまうことで発症します。急性骨髄性白血病は、他のさまざまながんに比べ、若年者にも起こりやすい病気として知られます。もちろん、他のがんと同様に高齢者での発症も多いのですが、若い人にも起こるというのが大きな特徴です。

急性リンパ性白血病

白血球は、顆粒球、単球、リンパ球からなりますが、このうちリンパ球が未熟な段階で遺伝子異常が起こり、がん化した白血病細胞が無制限に増殖することで発症します。小児がんで最もよくみられる疾患で、2~5歳での発症が多く、成人での発症は年間約10万人に1人程度です。

慢性骨髄性白血病

血液細胞は、脊髄中に存在する造血幹細胞が、増殖しつつ分化(成熟した細胞になる)をして血液細胞になります。慢性骨髄性白血病は、この造血幹細胞に異常が起こることで、がん化した血液細胞が無制限に増殖することで発症します。血球のがんのうちでも、比較的ゆっくりと進行します。

慢性リンパ性白血病

造血幹細胞は大きく骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に分けられます。骨髄系幹細胞からは顆粒球と単球、そのほか赤血球、血小板が産生されます。一方、リンパ系幹細胞からは、リンパ球であるB細胞、T細胞、NK細胞などが産生されます。慢性リンパ性白血病では、リンパ球のうちのB細胞、しかも成熟したB細胞ががん化し、無制限に増殖し発症します。

急性と慢性で全く異なる症状

急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病の症状

急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病は、症状の原因が大きく二つに分けられます。

一つは、骨髄で白血病細胞が増加することで造血機能が低下し、正常な血液細胞が作れなくなるために起こる症状。もう一つは、白血病細胞が周囲の臓器に広がる浸潤によって引き起こされる症状です。

造血機能の低下による症状
  • 赤血球の減少:貧血に、息切れ、動悸、倦怠感
  • 白血球の炎症:感染と発熱
  • 血小板の減少:出血によるあざ、赤い点状の出血斑、鼻血、歯ぐきからの出血
臓器への浸潤
  • 肝臓や脾臓の腫れ:お腹が張る、腹部の腫瘤・痛み
  • 歯肉腫脹:歯ぐきの腫れ・痛み
  • 骨痛:腰痛、関節痛
  • 髄膜への浸潤(急性骨髄性白血病):頭痛
  • 中枢神経系への浸潤(急性リンパ性白血病):頭痛、吐き気・嘔吐
  • リンパ節腫脹(急性リンパ性白血病):頸部などのリンパ節の腫れ、T細胞系では縦隔部の腫瘤

慢性骨髄性白血病と慢性リンパ性白血病の症状

慢性骨髄性白血病と慢性リンパ性白血病の場合は、発症してもゆっくりと進行するのが特徴で、初期の段階ではほとんど症状がありません。健康診断や他の病気の治療で血液検査を受けた際、白血球数の異常を指摘され、見つかることが多いのです。

慢性骨髄性白血病

白血球ががん化しても正常の白血球とほぼ同じ働きをすること、進行が非常にゆっくりしていることが特徴です。慢性骨髄性白血病の症状は進行性であり、進行の程度によって大きく、慢性期→移行期→急性転化期の三つの段階に分かれます。

多くは症状の見られない慢性期に診断されますが、この段階での治療を受けられないと、3~5年で移行期、急性転化期へと移行していきます

(慢性期)

最初期は無症状で、進行とともに微熱や全身の倦怠、体重の減少が見られます。ほとんどの患者はこの段階で診断がつけられます。肝脾腫の悪化も見られます。

(移行期)

白血病細胞の増えるスピードが速くなり、発熱、体重減少、骨痛などが現れます。

(急性転化期)

白血病細胞が急激に増殖。貧血や出血、感染などが見られますが、急性白血病と見分けることが困難なこともあります。

慢性リンパ性白血病

血液検査で、白血球・リンパ球の増加が確認され診断がつくことが多いです。もし、症状があるとすれば、貧血による息切れ、倦怠感、食欲不振・体重減少、寝汗をともなう微熱、出血を繰り返すなどが挙げられます。また、リンパ節の炎症が起こり、リンパ節の多い首やわきの下、足の付け根などに痛みのないしこりが現れることも多く、長期にわたり大きくなっていきます。

白血病の治療は化学療法が中心

急性白血病は進行が早いので、診断が下されるとすみやかに治療を開始することが必要です。

急性骨髄性白血病

治療の段階は大きく二つからなります。

1.寛解(かんかい)導入療法

最初の段階は、抗がん剤などの薬剤により白血病細胞を叩く治療を行ないます。入院から4週間ほど治療が続き、その間に10日前後薬剤が投与されます。寛解とは、見た目に白血病細胞がいなくなることを意味しており、医学的には骨髄の中に存在する白血病細胞が5%以下となる状態です。治療期間が終わると検査を行い寛解状態であるかどうかを調べますが、おおむね8~9割の患者で寛解状態が期待できます。

2.寛解後療法・地固め両方

寛解といっても、微細な白血病細胞は残っています。目に見えない白血病細胞を取り除くため、すみやかに第2段階となる抗がん剤投与による地固め療法を行います。1回の地固め療法は約5週間の入院となり、通常3回程度行います。

急性リンパ性白血病

治療の段階は大きく三つからなります。

1.寛解導入療法

前述の急性骨髄性白血病と同様の治療経路を経て、寛解後療法・地固め療法へと進みます。

2.髄腔(ずいくう)内注射療法

血管に投与された抗がん剤は血流に乗り全身に行き渡りますが、脳や脊髄に移行している白血病細胞には治療効果がありません。そこで、脳や脊髄に抗がん剤を直接投与します。また、ドナーから提供を受けた造血幹細胞を移植する造血幹細胞移植療法もこの段階で行います。

3.維持療法

寛解を長期にわたって維持し、白血病細胞の完全な除去をめざすため、1カ月に1、2回通院しながら抗がん剤治療を受けます。2年ほど治療を継続し、寛解が5年継続すれば完全に治ったと考えられます。

慢性骨髄性白血病

上述した、慢性期、移行期、急性転化期の段階と、患者の身体の状態などから治療法が選択されます。治療方法には、分子標的薬、化学療法(抗がん剤)などを用いる薬物療法と、造血幹細胞の移植療法があります。中心となるのは分子標的薬による治療で、病期の進行により薬剤の増量や変更、化学療法との併用などを検討していきます。現状、造血幹細胞移植は、唯一治癒をめざせる治療となっています。

慢性リンパ性白血病

化学療法(抗がん剤)を中心に分子標的薬を組み合わせた治療が一般的です。ただし、年齢やほかに患っている病気などを考慮して治療法を決定する必要があります。なお、リンパ節腫脹が見られる場合は、放射線治療を行う場合もあります。

白血病の治療には、非常に強い抗がん剤が用いられます。そのため、治療中に不快な副作用や合併症を経験することが多くなります。したがって、治療においては副作用や合併症に対応する治療も合わせて行っていきます。

まとめ

かつては4年で亡くなると言われていた白血病ですが、今では医療の発展で大きく改善され、不治の病ではなくなりました。化学療法や骨髄移植の技術が進歩しており、多くの患者さんが克服し、社会復帰をされています。治験が進み、新しい薬も次々と発表されている領域でもありますので、ぜひ前向きに治療に取り組んでいただければと思います。

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