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食事、運動、睡眠…免疫細胞を活性化させ、がん免疫療法の効果を高める生活習慣とは?

人がもともと持っている免疫力は、日ごろの過ごし方に大きな影響を受けます。免疫療法を受けた後も、生活習慣の見直しでその効果を長く維持したり、高めたりすることが期待されます。本記事では、毎日の生活で心がけたいポイントを解説します。

目次

免疫細胞の活性維持には「規則正しい生活習慣」を

体への気遣いが、がんへの免疫力を高める

食事も運動も「バランスの良さ」を意識する

免疫細胞の活性維持には「規則正しい生活習慣」を

免疫療法は、人がもともと持っている免疫細胞の活性化を促し、免疫力の維持向上を目的としていますが、日ごろの生活習慣が乱れていると、せっかくの治療が十分に活かされにくくなってしまいます。

免疫細胞の活性化は自律神経の影響を受けやすく、その自律神経と密接に関係しているのが「体内時計」です。体内時計は24~25時間周期でリズムをきざみ、体温調整やホルモン分泌などの、体内のさまざまな仕組みを機能させる“タイミング”を調整するしくみです。

例えば、体温や血圧は誰でも、寝ている間は低めで、起床してから上がり始めます。これは自律神経のうち、興奮や緊張をつかさどる交感神経が、起床とともに優位になるからですが、このとき体内時計も朝になっており、交感神経に活動を促しているのです。

体内時計は主に、光を感知してリセットされます。日常生活では、朝の光を浴びると、脳の松果体という部分からメラトニンという体内時計の調節をつかさどるホルモンが分泌されることでリセットされます。

したがって、夜更かしをした挙句、朝寝坊をし、光を浴びる時間が遅くなると、体内時計のリセットがずれ、外界の1日の周期と、体内時計の周期もずれてしまいます。それにより、自律神経が機能するタイミングもずれてしまい、例えば、日中はずっと調子が上がらず、夕方になってようやく体や頭が動くようになってきた、といったことが起こりやすくなってしまうのです。

免疫細胞は自律神経のバランスが整い、心身ともに快適で余裕のある状態のときに最も活性化が期待できます。不規則な生活による自律神経の乱れは、その妨げになってしまうというわけです。

体への気遣いが、がんへの免疫力を高める

せっかく免疫療法を受けても、体の状態が良好でないと、免疫力の維持向上が難しくなってしまいます。筆者が、免疫療法を受けた患者さんによくアドバイスしているのが「体を冷やさないこと」です。

高齢になると、体温調節の機能や気温の感じ方が鈍くなってきます。真夏の暑い時期なのにそれほど暑く感じず、エアコンを適切に使えずに熱中症になってしまった、というニュースが報じられることがありますが、それも体温の上昇に自律神経がうまく反応できていない一例といえるでしょう。

また、体は寒くないのに、実は手足の先などの末梢が冷たくなっている「部分冷え」がある人を、年齢問わず多く見かけます。

冷えは、血管が収縮して血流が悪くなることで起こりますから、血液中のリンパ球に多く存在する免疫細胞も、全身に十分行き届かなくなってしまいます。したがって、体を冷やさないという気遣いは、免疫療法による免疫細胞の活性化を維持するために大切な要素となるのです。

冷え対策で、特におすすめなのは「体の“首”を冷やさないこと」です。体の部位で“首”という文字が付く「手首」「足首」「首」は、ウォーマーやスカーフ等で外気からガードしましょう。夏でも冷房で特に冷えやすい部位なので、気をつけたいところです。

食生活では、体を冷やさない食べ物とされる、生姜、ニラ、ねぎ、カボチャ、クルミ、唐辛子などを意識して摂るようにしましょう。ただし食べ過ぎると栄養が偏ったり、胃腸へ刺激となったりする恐れがあります。

寒がりで、全身が寒いという人の場合、お腹や太ももなどの、大きな筋肉を湯たんぽなどで温めると太い血管の血流が促され、ぽかぽかしてきます。もちろん入浴で体を温めるのも効果的です。体温より少し高い程度(38~40度程度)の湯温で、脱水症状に気をつけながら、ゆっくりと湯船に入るのがポイントです。

食事も運動も「バランスの良さ」を意識する

よく、がん患者さんに聞かれるのが「がんに良い食べ物は何ですか?」「食事はどんなことに気をつけたらいいのでしょうか?」ということです。

基本的には、がんの治療中、「これは絶対だめ」とか「これを食べるべき」という食品はありません。ただ疾患によって、控えたほうがよい食品があるのは確かです。

例えば、糖尿病の場合は糖質や脂質、腎臓疾患の場合は塩分やリン、カリウムなどの摂取が制限されることがあります。そうした病気を合併している場合は留意する必要がありますが、そうでないのであれば、1日30品目、とよく言われるように、できるだけ多種類の食品を摂るようにして、栄養バランスを整えることこそが、免疫細胞の活性化にとってもベストであるといえます。

運動にも同じことがいえます。適度な運動は自律神経のバランスを整え、リンパの流れを良くすることに有効ですが、普段運動の習慣がないのに、急にきつい運動をすると、交感神経が過剰に刺激され、血圧や脈拍、心拍数の急な上昇を招き、かえって体に負担がかかってしまいます。

自分の日常の運動量を基準にして、少しずつ運動量を増やすのが賢明です。例えば、日ごろ2000歩程度であれば、3000歩、5000歩と増やしていき、1万歩/日を目指すといった形です。

最も大事なのは、バランス良く「続けること」です。

まとめ

免疫力の維持向上には、自律神経を整えることがポイントです。そのためには規則正しい生活をして、体をいたわり温めること、バランスの良い食事を心がけ、適度に運動することが重要です。いずれもがんに限らず、健康的な生活を送るための心得といえるでしょう。

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