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玄米・菜食ばかりは逆効果? がん治療中の「食事」の基礎知識

がん治療中の患者さんにとって、大きな関心事の一つが「食事」です。ネット上にあふれる「あれは食べてはいけない」「これを食べたほうがいい」というたくさんの情報に惑わされていませんか。この記事では、免疫力にプラスに働く食生活のポイントを解説します。

目次

玄米、野菜、肉類、乳製品……食べて良い食材、悪い食材とは?

体をつくるもと「たんぱく質」が欠かせない理由

免疫力をサポートする「サプリメント」の選び方

玄米、野菜、肉類、乳製品……食べてよい食材、悪い食材とは?

がん治療中の食事について、ネットで検索するとたくさんの情報が出てきます。「がんには○○が良い」とか「××は食べてはいけない」といった極端な見出しも少なくなく、患者さんのなかには「私の食生活は大丈夫なのか…」と不安になってしまう人もいるのではないかと思います。

食事で最も大切なのは「楽しんで食べる」ことです。情報に振り回され、さして好きでもないのに無理をするのはストレスのもととなり、免疫の活性が落ちてしまいます。

もちろん、「栄養バランス」も重要です。○○だけ、という食事では、体が必要とする栄養を十分に摂れず、体力が落ちてしまい、免疫力にも影響します。

10数年前から野菜ジュースを中心にした食事療法がブームとなり、今でもがんの民間療法の1つとして多くの人が実践しているようです。確かに、野菜には多くのビタミンや繊維質が含まれ、近年はポリフェノールなど、がんによいといわれる抗酸化物質が豊富に含まれていることも注目されています。

しかし、だからといって野菜ばかりに偏った食事では、栄養バランスが崩れてしまいます。ご飯をはじめとする主食もエネルギーを作るのに重要ですし、肉や魚、豆類に多く含まれるタンパク質は、血液や筋肉等の組織を作るのに欠かせない栄養素です。

また、たとえどんなに抗酸化物質が豊富であるとしても、それでがんが小さくなるとか、消えるといったような文言には要注意です。一般食品で、そのような強力な作用が科学的に証明されているものがあるとしたら、薬になってもおかしくありません。

玄米も、白米に比べてビタミンやミネラル、食物繊維が多く含まれることから、健康食として積極的に食べている人が多いようです。しかしこれにも、がんによいという科学的な証拠はありません。また、消化吸収が良くないので胃腸の弱い人は要注意です。

一方、ひところ肉が敬遠された傾向があり、今でも「がんになったら肉は一切食べてはいけないのか?」という疑問を持っている人もいると思います。確かに、一部のがんの発症には肉食が関連しているとの研究報告もありますが、だからといって、肉がすべてのがんにとって悪者というわけではありません。

むしろ、先述のとおり、肉に含まれるタンパク質は免疫細胞が存在する血液をはじめ、体のさまざまな組織や臓器を作るのに欠かせない栄養素ですから、特に高齢になるほど、しっかり摂るべきなのです。

調理法や食品加工などに対する極端なこだわりも考え物です。例えば、ローフード(火を通さない)に傾倒して生ものしか食べず、胃腸を悪くしてしまうとか、オーガニックが体によいからと、添加物に神経質になりすぎてしまうとか、マクロビオティックががんによいと聞き、先の玄米のように精製されていないものばかり食べる、といった食生活には賛同できません。それで本人が健康を害することなく、本当に楽しんで食べているのであれば別ですが、まるで修行のように、がまんをして続けているとしたら、体だけでなく精神面にもよくありません。

体をつくるもと「タンパク質」が欠かせない理由

がんの有無に関わらず、「高齢になったら粗食でいい」と思われがちですが、それは大きな誤解です。

体を構成している筋肉や臓器、血管などの組織はタンパク質なしにつくることができません。高齢になるほど、こうした臓器や組織は老化によって自然に弱くなっていきますから、タンパク質をしっかり摂ることが健康、ひいては寿命をも左右します。

国内の高齢者を対象にした栄養調査などからも、元気な高齢者は1日あたりのタンパク質の摂取量が平均を超えており、中でも動物性タンパク質が多いという報告もあります。 粗食どころか、高タンパク質、特に高動物性タンパク質こそが“長寿食”であるということが分かってきています。

動物性タンパク質は、食材でいえば肉や魚が中心です。動物性タンパク質には人間が体内で作ることのできない必須アミノ酸が多く、「アミノ酸スコア」(食品中の必須アミノ酸のバランスを評価したもの)が高いのが特徴です。

もちろん、免疫細胞が多く存在する血液にとっても、タンパク質は重要な材料になりますし、特に肉に含まれる鉄分は体への吸収率が高いことから、貧血対策にも肉を食べることがすすめられます。

なお、がん治療で胃や腸を切除した場合、通常の食事だけでは十分な栄養吸収が難しい場合は、おやつ代わりにタンパク質を補うドリンク剤を活用するのも一手でしょう。

免疫力をサポートする「サプリメント」の選び方

がん患者さんからのご相談で、食事とともに多いのが「サプリメント」についてです。

こちらもネットで検索すると、あふれるほど情報が出てきます。また、患者さんのなかには、家族や親せき、近所の人から「これがいいらしい」などとすすめられて…という人も少なくありません。

「がんによい」とうたわれるサプリメントの多くは、免疫力の向上をセールスポイントにしています。そのこともあり、免疫療法を受けた患者さんは、治療後のアフターフォローにと、何かしらのサプリメントの利用を検討する傾向にあるようです。

当院でも、免疫力をサポートするサプリメントをご紹介しています。それらは医師が成分や含有量などから、安全性や機能を確認しています。また当院の患者さんから、他のサプリメントに関する相談を受けた場合には、パッケージを持参していただき、やはり成分や含有量を医師が確認し、アドバイスさせていただいています。

サプリメントは、見た目がカプセルや錠剤など、薬に似た形状になっていることが多いため、一般の方には薬と勘違いされることもあるのですが、国内においては「食品」に分類されます。つまり、病気に対する効果効能をうたうことができず、治療目的で使われるものではありません。

サプリメントについては、まず、この点を明確に押さえたうえで、免疫力も含む健康維持を目的に利用するようにしましょう。

まとめ

食事で大切なのは「楽しんで食べること」と「バランス」です。一般的な食材で「これは良い」「これは悪い」といったものは基本的になく、さまざまな食品を偏りなく食べることが重要です。体づくりの観点から、タンパク質を意識して摂るとよいでしょう。

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