家族ががんと診断されたら知っておくべきサポートの心構え
がんと診断された本人はもちろんですが、その家族も同じようにショックを受けることでしょう。ショックを受けながらも、がんと告げられた家族のことを思い、できることは何でもやろうと頑張りすぎてしまう人も多いのです。どのようにすべきかに正解はありませんが、がん患者の家族が心に留めていただきたいことを紹介します。
目次
特別扱いせず普段どおりの振る舞いを
どんな話であってもじっくりと聞いてあげる
治療を受ける本人以上に正しい知識、情報を得る大切さ
自分自身をいたわり、気持ちに余裕をもつ工夫を
特別扱いせず普段どおりの振る舞いを
内閣府の平成29年「がん対策に関する世論調査」では、がん患者が“がんを怖いと思う理由”を調査したところ、一番多かった理由は「がんで死に至る場合があるから」でしたが、それに続く二番目が「がんの治療や療養には、家族や親しい友人などに負担をかける場合があるから」となっていました。がん患者は、家族に対して複雑な思いを抱いていることが分かります。
それでは、家族はどのような気持ち、態度で治療を受ける本人と向き合えばいいのでしょうか。
サポートを受ける側は、家族の配慮や優しさが、特別扱いに思えて逆に孤立感を深めてしまうこともあります。治療以外の部分では、なるべくこれまでどおりの態度でコミュニケーションをとりましょう。
どんな話であってもじっくりと聞いてあげる
大切な役割の一つが、治療中の家族に寄り添い、その気持ちをなるべく理解し共有してあげることです。そのために最も大事なことが、話をよく聞いてあげることでしょう。大きな不安を抱かえるがん患者は、くり返し同じ話をすることがよくあります。「その話は前にもしたでしょ」などと突き放すことはせず、意見があるときも途中で口を挟まず、本人が納得まで話に耳を傾けてあげることが大事です。
また、がん治療中の患者は、大きなストレスを抱える中で、自分なりの対処法を見つけようと試行錯誤している姿をよく見かけます。しかし、その対処の方法が、サポートしている家族にとって理解しがたい場合もあるでしょう。「がんのことを忘れたように振る舞う」「家族にあたる」「いらだつ」「子ども返りをする」などがあります。抑えがたい感情をどうにか処理しようとした感情が、表れてしまっているので、こういった場合を目の当たりにしても、包容力をもって見守ることも家族の役割といえるでしょう。
治療を受ける本人以上に正しい知識、情報を得る大切さ
がん治療は、専門家である医師に任せることになりますが、治療方法の選択など決断が求められる機会も出てきます。がんの病状や治療について正しく理解することは、共に治療に立ち向かううえでとても大切です。
知識や情報を身につけているからこそ、主治医とのコミュニケーションが円滑になり、より理解が深まるでしょう。状況を知ることでやるべきことが見えてきて、不安が解消することにも繋がります。
情報収集の際に気に留めておきたいポイントには以下のようなものがあります。
病状や治療方針について理解を深める
がんの病期(ステージ)の判断や今後の治療の流れなどは、それぞれのがんごとに策定されている「標準治療」に基づきます。まずは、がん治療を受ける家族が必要な標準治療の内容を理解しましょう。今後行われる治療が理解できれば、気持ちにゆとりを持てます。
治療や診察で使われる言葉・用語を理解する
治療を受ける本人やその家族への説明は、医師もなるべく平易な言葉を選ぶように心がけていますが、専門用語を避けて説明することは難しいものです。会話の中で専門用語が出てきたら質問するとともに、そのあとにより詳しい情報を調べておこくことも大事です。
根拠のない、不確かな情報に振り回されない
希望が持てる情報に惹かれてしまいますが、情報の発信元が信用できる機関なのか、情報が古くはないか、一個人の経験談ではないか、など情報の質を見分ける必要があります。迷ったときは、主治医にすぐに相談しましょう。
自分自身をいたわり、気持ちに余裕をもつ工夫を
がんと診断された方の家族の多くは、治療のサポートを行うことが期待されます。がん治療を行っている本人ばかりに目がいきがちで、サポートする側の家族がケアされる機会や仕組みは少ないように感じます。しかし、治療に立ち向かう本人と、サポートする家族の双方のケアが成り立ってこそ、がん治療を継続して行っていくことができます。
がん治療をサポートする側の家族は、「本人のつらさを少しでも和らげるために頑張らなくては……」と自分の気持ちを抑えてしまったり、必要以上のプレッシャーを感じてしまったりすることがあります。しかし、普段の生活を維持しつつ、自分が思い描くような理想的なサポートをするのはなかなか難しいことです。
自分で自覚していないうちにストレスを抱え込んでしまった結果、「体調を崩して倒れてしまった」「心無い言葉を発してしまって後悔した」といった話をよく聞きます。がん治療には長い期間を要します。その治療期間をともに乗り越えるために、サポートする側の家族も体力・精神面のケアを怠らないようにしましょう。
「自分は大丈夫」と自覚がない人でも、負担がかかっていることは多いものです。休日を設定して外出することや、体を動かすといった時間を作ることで、ストレスを少しでも発散する意識をもつことをおすすめします。
まとめ
がん治療のサポートには様々な側面があります。まずは、不安や問題点などを整理し、個別に対応をはかることが肝心です。それぞれの分野の専門家に相談をしたり、カウンセリングを受けたりするなど、豊富な経験や知識を有する人の力を借りましょう。そして、生活のなかに自分を思いやる時間、リラックスする時間を作り、余裕を持って治療を受ける本人と向かい合えるように心がけたいものです。