消化液が逆流して血液の中へ…胆道がんが体に与える怖い影響
胆道がんは、消化液の通り道「胆道」に発生するがんで、日本では決して珍しくはなく、年間2万3000人ほどの罹患者がいます。
最近では、印刷業界で使われる化学物質が原因で発生確立が高まることがニュースで報じられ、注目が高まりしました。今回は、胆道がんについて解説します。
目次
消化液を流れる胆道に発生するがん。罹患者数は約2万3千人
胆管がんは「黄疸」が特徴
腫瘍の大きさ、浸潤の程度を検査し治療方針を検討
手術の難易度が高い胆管がん。医師の技術や経験に左右される
消化液を流れる胆道に発生するがん。罹患者数は約2万3千人
胆道は、肝臓でつくられた消化液を十二指腸まで流れる際の通り道のことです。 肝臓で作られた消化液(胆汁)は、「胆のう」と呼ばれる袋のような部分で貯めておきます。食事をする際に消化液は胆のうから出て十二指腸まで流れますが、この際に通る細い管が「胆管」です。この胆のうと胆管に発生するがんを胆道がんと呼びます。
日本における胆道がんの罹患者数は約2万3,000人で、がん罹患者全体の2%~3%を占めます。
原因は人それぞれですが、胆石が炎症を起こし、その炎症が長引くことでがん化するケースなどが多いようです。
胆管は、自覚症状がほぼ無く、発見が遅れがちです。肝臓に隣接した器官であることから、肝臓に浸潤・転移する可能性もあり、早期に治療することが根治の鍵となります。
胆管がんは「黄疸」が特徴
胆道がんの代表的な症状には、「黄疸」が挙げられます。腫瘍が胆管を圧迫し、「胆道閉塞」という状態になることで、消化液がせき止められ逆流することで発生する症状です。
胆管は非常に細いため、小さながんであっても、胆道閉塞を引き起こす可能性があります。流れをせき止められた胆汁が逆流すると、血管の中に入ってしまい“ビリルビン”という成分の濃度が高くなります。ビリルビンが高まると、皮膚や目の白い部分が黄色くなります。これが黄疸です。
血液中のビリルビンが高くなると尿から排泄されるようになり、その影響で尿が茶色っぽくなります。
一方で、腸内には胆汁が上手く入っていかないことで、便の色は逆に白っぽくなります。
そのほか、代表的な症状として、右上腹部痛も挙げられます。
また、胆道がんに限った症状ではありませんが、ほかのがん同様に「体重減少」「食欲不振」「発熱」といった症状も、進行に伴い出てくるでしょう。
腫瘍の大きさ、浸潤の程度を検査し治療方針を検討
黄疸や右上腹部痛といった症状が現れ、胆道がんが疑われる場合、まずは血液検査と対外式超音波検査(エコー検査)を行います。
血液検査では、上昇したビリルビン値を確認することができます。対外式超音波検査(エコー検査)では、肝臓の内部やその周辺の腫瘤、胆管の拡張、胆道の閉塞を確かめることができます。
これらの検査で、がんの確定診断ができ、がんと確定した場合、必要な治療を検討することができるのです。
さらにCT検査やMRI検査を行い、がんの浸潤(しんじゅん)の広がりや転移を確認し、検査結果をまとめて総合的な判断を行います。
CT検査では、X線をあてることで身体の断面図を確認し、腫瘍がどの程度周囲の臓器や血管に浸潤しているか推測できます。
MRI検査は磁気を利用して同様に身体の断面図を確認します。またMRIではゆっくりとした胆汁の流れを観察してスキャンして胆管像を作ることができ、がんの状態を把握することもできます。
また、内視鏡を使った超音波内視鏡検査をする場合もあり、胆道に近い胃や十二指腸に内視鏡を入れ、画像を抽出するので、精密な結果を得ることができます。
ほかにも検査はさまざまな種類があり、チューブで胆管内に造形剤を注入してX線撮影する検査、ファイバースコープを通して撮影をする検査、特定の薬剤を使い体内での細胞の活動を見るPET検査などを選択することもあります。
手術の難易度が高い胆管がん。医師の技術や経験に左右される
胆道のがんで根治への期待が持てる治療は、手術治療になります。
体力的に耐えられない、すべてを取り除くことが難しいなどの事情がなければ、手術によって取り除く方法が検討されます。
胆管がんは、非常に複雑な手術が想定され、難易度が高くなります。医師の技術と経験によって左右されることから、ある医療機関では手術可能であっても、ほかの医療機関では手術が不可能と判断される場合があります。
胆管がんと診断されたら、手術について医師と慎重に相談しましょう。
胆道の手術では、切除した箇所から胆汁が漏れて腹膜炎を起こす可能性などがあることから、体内にたまった胆汁などを排出するための管を数本、お腹に留置します。食事も同時に制限されます。しばらくして胆汁の流れに問題がなければ、管を外して徐々に食事を再開することができます。
まとめ
胆道がんは初期症状があまり表れませんが、血液検査で肝機能異常が確認されたり、超音波検査で胆管の拡張を指摘された場合は、速やかに精密検査を受け、早期治療にのぞみましょう。