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自覚症状が少ない「胃がん」~確定診断のためには検査が必要~

部位別の死亡数では、男女合わせると第3位となっている「胃がん」。多くの人が患っている一方で、胃がん特有の症状というものが無いため、進行していても気がつかないリスクもあります。今回は、胃がんの特徴と治療方法について詳しく解説します。

目次

胃壁の一番内側の粘膜で細胞ががん細胞に変化

進行してもなかなか症状が現れない

標準療法での胃がん治療

胃壁の一番内側の粘膜で細胞ががん細胞に変化

胃は、食道から続く臓器で「胃袋」とも言うように袋状をしています。その役割と機能は、食道から送り込まれた食べ物を貯め、食物を細かく砕き胃液と混ぜ合わせ、適量ずつ十二指腸へと送り出すことです。食道との境目にあたる部分が噴門部と呼ばれ、以下、出口に向かって、胃体部、胃角部、前庭部と続き、十二指腸との境目が幽門部となります。胃壁は、内側から粘膜、粘膜筋板、粘膜下層、次に胃を動かす筋肉である固有筋層、そして漿膜下層、漿膜という順に重なってできています。

胃がんが発生するのは、胃壁の一番内側にある粘膜です。何らかの原因で粘膜内の細胞ががん細胞に変化し、増殖をくり返します。大きくなるにしたがい粘膜から徐々に筋層、漿膜へと外側に広がっていきます。がん細胞が粘膜下層までにとどまっているものを「早期胃がん」、筋層より外側に達したものを「進行胃がん」といいます。そして、漿膜からさらにその外側まで侵食すると、胃の近くにある大腸や膵臓などにも広がっていきますが、ほかの臓器に広がることを浸潤と呼びます。

がん細胞の組織型の分類では、胃がんのほとんどは、腺がんといわれる腺組織(上皮組織)から発生するがんを指し、進行が穏やかなタイプと速いタイプに分かれます。

腺がんではないものとしては、「スキルス胃がん」と呼ばれる、特殊な胃がんがあります。胃壁の中にひろがり、粘膜の表面にあらわれることの少ないのが特徴です。

長年の研究により、胃がんの発生原因については、いくつかの要因が挙げられています。中でも「喫煙」をはじめ、「飲酒」、「乱れた食生活(塩分の過剰摂取、野菜や果物の摂取不足)」が指摘されています。

胃がん

また、WHOからも確実な発がん因子として認定されているのが、「ヘリコバクター・ピロリ菌」の持続感染です。ヘリコバクター・ピロリ菌は、胃や小腸に炎症や潰瘍を起こす細菌で、胃の粘膜に感染すると胃炎を引き起こします。感染が慢性的になり胃炎の状態が続くと胃の粘膜が萎縮し、胃壁の細胞ががん化し胃がんが発生すると考えられるのです。

ヘリコバクター・ピロリ菌に感染していると診断された場合は、速やかに除菌療法を行い、以後定期的な胃の検診をするのがのぞましいと言えます。

国立がん研究センターの最新がん統計によると、2017年にがんで亡くなった人(37万3,334人)のうち、胃がんでなくなった人は、男性2万9,745人、女性1万5,481人でした。部位別の死亡数では、男性は肺がんについで多く2位、女性では4位、男女合わせると3位に位置します。

胃がんの羅患率、死亡率とも男性が女性より高く、40歳未満では男女差は小さいのですが、40歳以降になるとその差が顕著になります。除菌により胃がんのリスクが低くなるという研究結果があり、最近は感染していることが判明した人は除菌療法をすすめられ、以後、定期的な胃の検診を呼びかけられます。なお、罹患率そのものは、男女とも大きく減少傾向にあり、胃がんで亡くなる人の割合も低下しています。

進行してもなかなか症状が現れない

早期の段階の胃がんは、自覚症状が出ることはあまりありません。かなりがんが進行しても無症状のことがあります。早期に表れる症状としては、「胃の痛み」や「消化不良」、「胃の不快感」、「膨満感」、「吐き気」、「むかつき」、「食欲低下」などが挙げられます。ただし、これらは胃炎や胃潰瘍の場合にも見られ、胃がん特有の症状とは言えません。胃がんの疑いがある場合は、内視鏡検査で胃の内部にがんと思われる病変かどうか確認し、病変があった場合は、病変を病理検査し、確定診断を受けるという流れになります。

胃がん

標準療法での胃がん治療

胃がんの治療は、外科手術、内視鏡的切除、化学療法が一般的です。治療ガイドラインに基づき、病期(ステージ)ごとに治療法を検討します。

外科手術

最も標準的な胃がんの治療法が手術です。がんのある部位と病期から検討し、確実にがんを除去できる範囲を切除します。同時に、胃の周囲のがん細胞が転移している可能性のあるリンパ節を取り除き(リンパ節郭清)ます。そして、切除後には食事をとれるように食物の通り道である消化管をつなぎ直します。
また、従来行われていた開腹手術より体への負担が少ない「腹腔鏡下胃切除術」の件数も増えています。
腹腔鏡手術は、早期がんの場合受けるのが可能で、腹部に小さな穴(5~12mm)を数箇所開け、専用のカメラや器具を挿入します。医師はモニター画面で腹腔内を確認しながら器具を操作して胃がんの削除を行います。胃の切除した部分は、腹部を4~5cm切開して取り出します。一般的に、キズが小さくてすみ、術後の疼痛が少なく、早い回復が望めるなどのメリットがあります。

内視鏡治療

粘膜内にとどまっている早期の胃がんで、塊が小さく、リンパ節への転移の可能性が低いと判断される場合は、内視鏡を使って胃の内側からがんを削除する方法がとられます。切除後も胃が温存されるので、食生活への影響も少なく、QOL(生活の質)を維持しながら治療を行えます。

化学療法

近年、胃がんの化学療法は、新しい抗がん剤が登場し、進歩している分野と言えます。胃がんの治療では、抗がん剤は以下の3種の使い方がされます。

・術前補助化学療法

目に見えないレベルの小さな取り残しや転移などの再発の懸念があるとき、切除が困難ながんを小さくして切除しやすくするなど、手術に先だって化学療法を行う場合です。

・術後補助化学療法

手術でがんを切除できたと思われる場合でも、目に見えない細胞レベルのがんが残っている可能性は否定できません。そこで、再発の予防を目的に行われる療法です。

・化学療法

手術でがんを取り切れない場合、胃から離れたところにある臓器にも転移がある場合、手術後に胃がんが再発し手術で切除することが難しい場合などは、抗がん剤治療が治療のメインとなります。胃がんを完全に治癒させることが困難な場合でも、抗がん剤を用いることでがんの進行を遅らせ、延命や症状を緩和することは可能です。

まとめ

胃がんは部位別の死亡数では3位となっていますが、罹患率は男女ともに減少傾向にあり、胃がんで亡くなる人の割合も低下しています。また、治療技術も進歩を続けています。胃がんと診断された場合には、医師と相談し、自分にとって最良の治療方法を組み立てることから始めましょう。

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