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胃がん|ピロリ菌感染との関連も指摘、早期なら内視鏡切除で治癒も|5大がんの解説

男女ともに発症数の多い胃がん。近年はピロリ菌感染との関連も指摘されています。早期であれば内視鏡を使った切除で治癒が見込めるなど、治療技術は大きく進歩しています。

医療法人輝鳳会 理事長 池袋クリニック 院長 甲陽平

目次

胃がんとはどんな病気か。ステージ、検査、自覚症状は?

ステージⅠの5年生存率は約95%、早期なら内視鏡で治癒も可能

もし胃がんと診断されたら……近親者の「ピロリ菌」感染を疑って

胃がんとはどんな病気か。ステージ、検査、自覚症状は?

胃がんは胃壁の上皮(最も内側の粘膜)の細胞ががん化しできる悪性腫瘍です。最新の部位別罹患数データ(2016年)では、男性で1位、女性で3位と非常に多いがんです。進行すると胃壁の中に入り込み、外側にある漿膜(しょうまく)やさらにその外側へと組織を深く広く侵していきます。

胃がんに限らず、がんには「早期がん」「進行がん」という表し方がありますが、胃がんの場合は胃壁のどのくらい深くまで達しているかが一つの基準となります。これを「深達度」といいます。

深達度が粘膜内またはその下にある粘膜下層までにとどまっている状態は転移の可能性が少ないので、この状態が早期胃がんとされています。一方、進行胃がんは、がんが粘膜下層より深く達しているものを指します。

一方、普段私たちがよく見聞きする「ステージ」は、実は上記の深達度だけでは決まりません。そのほかにリンパ節への転移の有無(N)と、遠隔転移の有無(M)という、計3つのカテゴリーの組み合わせでⅠ~Ⅳに分類されます。これを「TMN分類」といいます。

胃がんの検査には、胃部内視鏡検査やCT検査が行われます。事前に検診等でX線検査をしており疑わしい場所が分かっている場合は、その場所を中心に検査します。状況により再検査で組織の採取も行い、がん細胞の有無やその性質などを調べることがあります。いずれもがんと診断、またはその疑いが強い場合はCTなどの別の検査で病変部の位置や広がり、深さなどをより詳しく調べます。

なお、自覚症状については、早期胃がんの多くが無症状です。上腹部痛や腹部膨満感、食欲不振などが現れることもありますが、胃がんに特有な症状ではなく、一時的なものと見過ごされる恐れがあります。一般的にはこれらの症状をきっかけにX線造影検査や内視鏡検査を受けたところ見つかったというように、偶然発見されるケースが大部分です。

進行がんになると体重の減少や消化管からの出血による吐血や下血などが見られ、上腹部にでこぼこした硬い腫瘤(しゅりゅう)を触れることもあります。進行とともに、内臓痛と呼ばれる、炎症や圧迫による痛みが出ることがあります。痛み方は“うずくような”、“しめつけられるような”、“さすような”など、個人差があります。

なお、胃がんのなかにはスキルスがんといって、胃の壁を硬く厚くさせながら広がっていくタイプがあります。X線検査や内視鏡検査でも早期に見つけることが難しく、症状が表れたときには胃壁全体が硬くなった状態で発見されることの多い、進行の早いがんです。

ステージⅠの5年生存率は約95%、早期なら内視鏡で治癒も可能

日本は世界の中でも高度な手術技術を持ち、薬物療法の進歩も相まって、胃がんの治癒率は向上しています。5年生存率は2009-2010年の国立がんセンターがまとめたデータによると、ステージⅠで約95%、Ⅱで68%前後となっています。

胃がんの治療には、ステージや病理(がん細胞の性質や広がり等)診断の結果から手術や薬物療法を中心に検討されます。

ごく早期であれば、内視鏡を使っての切除が可能です。負担の少ない方法で取り去る方法として発展したのがEMR(内視鏡的粘膜切除)やESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)と呼ばれる、内視鏡による外科的治療です。

EMRとは、内視鏡の先に電気メスをつけて、がんのある粘膜をすくうようにして切除する方法です(図表1)。粘膜部分にとどまっているごく早期のがんが適応となります。

[図表1]EMRの手順のイメージ図
(1)病巣の下に生理食塩水を注入
(2)スネアを病巣部にかける
(3)通電する
(4)切除組織を回収する

ESDはEMRの適応よりはやや深い、粘膜下層までのがんをくりぬくようにして切除する方法です(図表2)。

[図表2]ESDの手順のイメージ図
(1)内視鏡を胃の中に入れ、病変の周囲に印をつける
(2)粘膜下層に薬剤を注入し、病変部を浮かせる
(3)ナイフで病変部の周囲の粘膜を剥離・切り取る
(4)病変部を慎重に切り取る
(5)病変部を最後まで切り取る
(6)切り取ったあとに止血処理を行う

いずれもがんの深さ(深達度)だけでなく大きさや組織の性質にも条件があり、適応が決まっています。どんなに小さく浅いがんであっても、悪性度が高かったり潰瘍のように境界線が不明瞭だったりすると、完全に取りきれず、再発転移の恐れがあります。

もし胃がんと診断されたら……近親者の「ピロリ菌」感染を疑って

胃がんのリスク要因には、加齢や喫煙、塩分の過剰摂取などがいわれていますが、多くはヘリコバクター・ピロリ(以下ピロリ菌)という微生物の感染が原因で起こることが知られてきています。

ピロリ菌は、長さ4μm(μmは1/1000mm)の細菌で、感染すると、その分泌液により胃の粘膜が慢性的な炎症を起こし(ピロリ菌感染胃炎)、10%程度が十数年のうちに、胃酸分泌する組織が縮小した「萎縮性胃炎」に移行します。この状態が長期にわたると、胃がん発症のリスクが高まるのです。

かつては衛生状態がよいとはいえない井戸水を飲むことで感染していましたが、戦後は上下水道の整備とともに感染率は低下したと考えられています。ただし親から子へ、子育て時に口うつしで食べ物を与えるなどがきっかけで感染することが多く、今でも40~50代で3~4割程度保菌者がいると考えられています。

感染していると慢性的な胃もたれが続いたり、胃痛を自覚するケースもありますが、大半は無症状のため、ピロリ菌の検査と除菌を受けることが胃がんの有効な予防策となります。したがって、もし胃がんと診断されたら、パートナーや親、子どもがたとえ無症状でも、将来的にがんリスクとなるピロリ菌に感染している恐れがありますので、検査と除菌を行うのが賢明です。

胃痛などの症状があれば消化器内科を受診すれば、胃内視鏡検査で胃がんの有無を確認のうえ、公的保険で検査や除菌が受けられます、

無症状の場合、40歳以上であれば定期的ながん検診や人間ドックに感染を確かめる検査が含まれていることが多いので問い合わせてみるとよいでしょう。なお、除菌は1週間程度の薬の服用で行います。

まとめ

早期のうちは自覚症状に乏しく、あってもがんとは気づかず、一過性のものと見過ごされやすいのが問題です。定期的にがん検診を受けるとともに、胃部の違和感が続いたら早めに受診することが早期発見につながります。ピロリ菌を除菌することで、がんリスクを下げられることも知っておきましょう。

【甲 陽平(かぶと・ようへい)】
医療法人輝鳳会 理事長 池袋クリニック 院長
1997年、京都府立医科大学医学部卒業。2010年、池袋がんクリニック(現 池袋クリニック)開院。
「あきらめないがん治療」をテーマに、種々の免疫細胞療法を主軸とし、その他の最先端のがん治療も取り入れた複合免疫治療を行う。
池袋クリニック、新大阪クリニックの2院において、標準治療では治療が難しい患者に対して、高活性化NK細胞療法を中心にした治療を行い、その実績は5,000例を超える。

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