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Cancer

肺がん~タバコを吸う人のリスクは4倍以上~

目次

肺がんとは

肺がんの症状

肺がんの治療

肺がんとは

年間7万人以上! がんの中で最も多くの人が亡くなっている

国立がん研究センターの統計によると、2016年にがんで死亡した人のうち、肺がんの人は男性で1位(5万2430人)、女性で2位(2万1408人)となっており、男女計でも1位(7万3838人)と、すべてのがんの中で最も多くの人が亡くなっています。数字を見れば一目瞭然ですが、男性の死亡者数が女性の2.5倍近くになっているのも大きな特徴です。また、2006年から2008年に肺がんと診断された人の5年相対生存率は、男性27.0%、女性43.2%と顕著な差が出ています。

肺は2億~7億の「肺胞」でできている器官

呼吸をするための器官である肺は、胸の大部分を占めている臓器で左右に一つずつあります。自分から見て右肺は、上葉・中葉・下葉の3つに分かれ、左肺は上葉と下葉に分かれています。肺の中には、気管支が樹木の枝のように広がっており、それぞれの先には肺胞がついています。肺胞は文字通り小さな袋状のもので、肺にはこれらが無数に集まっており、柔らかなスポンジのような構造です。肺胞は成人で2億~7億という膨大な数になり、そのまわりを毛細血管が網目状に取り巻いています。

肺の役目は、酸素を取り込み体内から二酸化炭素を取り出し吐き出す、いわゆるガス交換です。口や鼻で吸い込んだ空気は、気道を通り左右の肺へと分かれ、さらに気管支へと枝分かれし、最後に肺胞で血液中へ酸素が取り入れられます。一方、血液中の二酸化炭素は肺胞へと排出され、逆の経路をたどって口から吐き出されます。

肺がんのリスク要因で一番は「喫煙」

肺がんは、肺の気管、気管支、肺胞の細胞が、なんらかの原因でがん化したものです。進行とともにがん細胞が周辺の組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパ液にのって全身へと広がります。転移しやすい箇所は、リンパ節、脳、肝臓、副腎、骨などです。

肺がんの発生要因は、周知のように喫煙が一番に挙げられます。肺の細胞中の遺伝子が変異する(傷つく)ことでがんが生じますが、その原因として一番身近なものがタバコの煙なのです。タバコには約60種の発がん物質が含まれているといわれており、肺や気管支の細胞が繰り返し発がん物質にさらされることで遺伝子の変異が発生し、それが積み重なることでがんになります。

国立がん研究センターの追跡調査によると、タバコを吸う人のがんにかかるリスクは吸わない人に比べ男性で4.5倍、女性で4.2倍となっています。また、タバコを吸わない人でも、周囲に流れるタバコの煙(副流煙)を吸う受動喫煙でリスクが高くなることに科学的根拠があるとされています。

そのほか、アスベストやシリカ、ヒ素、クロム、コールタール、放射線、ディーゼル排ガスなどに仕事や生活環境でさらされることがあるのも、肺がんのリスク要因に挙げられます。

肺がんの症状

進行の程度にかかわらず、症状がみられにくい

初期の段階では、肺がん特有の症状はみられません。ある程度進行すると、長引く咳、痰、血痰、軽度の発熱、息切れ、喘鳴(呼吸時のゼーゼー音)、声のかれ、胸痛などがあらわれます。しかし、これらは呼吸器全般の疾患でみられるもので、必ずしも肺がん特有の症状ではありません。また、進行の程度にかかわらず、これらの症状がほとんどみられない場合もあります。そのため、検診や他の病気での胸部X線検査やCT検査で偶然発見される場合も多いのです。

そのほかに、肺がんは腫瘍随伴症候群を発症することも多く、その場合は肥満、顔が丸くなるムーンフェイス、食欲不振、神経症状などがあらわれます。

肺がんを疑われる場合には、まず胸部のX線検査、CT検査、喀痰細胞診などで、がんの有無や場所を調べます。その後、肺がんが疑われる部位から細胞や組織を採取して行う経皮針生検、気管支鏡検査、胸腔鏡検査などの病理検査を行います。また、CT検査、PET検査、MRI検査、骨シンチグラフィー、超音波検査などで肺がんの進行度を調べ、肺がんの種類を明らかにします。

「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」の2型に分類

肺がんは、がんの形・性質(組織型)から、「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」の2型に大きく分類されます。また、組織型によってそれぞれ発生しやすい部位や特徴があり、治療については自分のがん細胞の組織型を把握することが肝心です。

非小細胞肺がん ※以下、組織分類/多く発生する場所/特徴の順に記述
・腺(せん)がん/肺野(肺の末梢部分)/肺がんの中で最も多く、症状が出にくい
・扁平上皮がん/肺門(太い気管支が細かく分かれ肺に入っていくあたり)/咳や血痰があらわれやすく、喫煙との関連が大きい
・大細胞がん/肺野/増殖が速く、小細胞肺がんと同じような性質をしめす場合も

小細胞肺がん
小細胞肺がん/肺門・肺野/増殖が速く、転移しやすい。喫煙との関連が大きい。

肺がんの治療

3因子によるがんのステージ分類

治療法の選択は、がん細胞の種類(小細胞肺がん/非小細胞肺がん)、がんの大きさ、位置や範囲、患者の健康状態などを検討して行います。

がんのステージ(病期)は、原発巣の大きさや周囲の組織との関係「T(原発腫瘍)」、胸部のリンパ節転移の程度「N(所属リンパ節)」、原発巣以外の肺転移や胸水、その他の臓器への遠隔転移の有無「M(遠隔転移)」の3つの要素によって決められます。この3因子による病期の分類法をTNM分類といいます。

小細胞肺がんと非小細胞肺がんの治療法選択

なお、小細胞肺がんでは、「限局型(病巣が片側肺に限局、反対側の縦隔および鎖骨上窩リンパ節までに限られる、悪性胸水、心嚢水がみられない)」と「進展型(限局型の範囲を超えてがんが進行している)」による分類も用いて治療法を選択します。

非小細胞肺がんに対しては、手術が治療の中心となります。がんの肺葉と周辺のリンパ節を除去する肺葉手術、切除する範囲をできるだけ小さくして肺の機能の温存をめざす縮小手術などがあり、縮小手術の多くは胸腔鏡を用いる胸腔鏡下手術となります。再発予防のため手術後に抗がん剤療法が推奨されています。健康状態や年齢、合併する他の病気などの関係で手術が困難な場合は放射線治療を行います。もし進行した状態であれば、薬物療法が中心です。

小細胞肺がんは進行が早く、発見された時にはすでに転移している場合が多いのが実情です。脳や骨、肝臓などへの遠隔転移が認められる進展型の場合は抗がん剤治療を行います。胸の中のリンパ節への転移までにとどまっている限局型の場合は、抗がん剤と胸部放射線照射を組み合わせて用います。

まとめ

  • 肺がんは、肺の気管、気管支、肺胞の細胞が、なんらかの原因でがん化したもの。進行とともにがん細胞が周辺の組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパ液にのって全身へと広がる。
  • がんで死亡した人のうち、肺がんの人は男性で1位、女性で2位となっており、男女計でも1位と、すべてのがんの中で最も多くの人が肺がんで亡くなっている。
  • 肺がんの発生要因は喫煙が一番に挙げられる。タバコには約60種の発がん物質が含まれているといわれており、肺や気管支の細胞で遺伝子の変異が発生し、それが積み重なることでがんになる。
  • タバコを吸う人のがんにかかるリスクは吸わない人に比べ男性で4.5倍、女性で4.2倍となってる。
  • 肺がんは、初期の段階では肺がん特有の症状はみられない。
  • 肺がんは、ある程度進行すると、咳、痰、血痰、発熱、息切れ、喘鳴、声のかれ、胸痛などがあらわれる。また、これらの症状がほとんどみられない場合もある。
  • 肺がんは、がんの形・性質(組織型)から、「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」の2型に大きく分類される。
  • 肺がんの治療法は、がん細胞の種類(小細胞肺がん/非小細胞肺がん)、がんの大きさ、位置や範囲、患者の健康状態などを検討して選択する。
  • 非小細胞肺がんに対しては、手術が治療の中心。手術後は再発予防のため抗がん剤療法を推奨。
  • 小細胞肺がんは進行が早く、発見された時にはすでに転移している場合が多いのが実情。遠隔転移が認められる場合は抗がん剤治療。胸の中のリンパ節への転移までにとどまっている場合は、抗がん剤と胸部放射線照射を組み合わせて用いる。

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