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上顎洞がん|喫煙や蓄膿症が大きなリスク要因、治療は三者併用療法が主流

上顎洞がんとは副鼻腔の上顎洞という空洞部分にできるがんで、頭頸部がんのひとつです。上顎洞にとどまっている段階では自覚症状に乏しく、進行して顔の各部位や組織へ広がると、その方向によって目や頬、口などにさまざまな症状が起こりやすくなります。副鼻腔炎(蓄膿症)が大きなリスク要因のひとつとされています。

医療法人輝鳳会 理事長 池袋クリニック 院長 甲陽平

目次

上顎洞がんとは何か。原因、自覚症状、検査は?

歯痛が上顎洞がんの危険信号に?

整容面(見た目)や機能に配慮した集学的治療が必要

頭頸部がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の適応

上顎洞がんとは何か。原因、自覚症状、検査は?

私たちの頭部には、前頭洞(ぜんとうどう)、篩骨洞(しこつどう)、上顎洞(じょうがくどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)と呼ばれる4つの空洞があり、これらを総称して「副鼻腔」といいます。副鼻腔は、空気の通り道である鼻腔とつながっています。

鼻腔の中は鼻中隔で左右に分かれており、それぞれ3つのヒダでトンネル状になっています。副鼻腔はその外側に上記のとおり4つずつあります。

上顎洞は副鼻腔のうち、鼻腔の外下方、頬の内側にある最大の空洞です。ここにできるがんが上顎洞がんです。60代男性に比較的多いとされ、組織のタイプとしては扁平上皮がんがほとんどですが、腺がんや腺様嚢胞がんというタイプのがんもあります。

上顎洞がんのおもなリスク要因には喫煙や副鼻腔炎(蓄膿症)がありますが、近年は副鼻腔炎の減少とともに、上顎洞がんも減少傾向にあります。がんが上顎洞にとどまっている早期の段階では、自覚症状はほとんどありませんが、副鼻腔炎と同じ症状(鼻づまりや膿のような鼻汁が出るなど)が起こることもあります。

がんが進行して大きくなり、周囲の組織を圧迫するようになると、その方向によってさまざまな症状があらわれやすくなります。例えば前方であれば頬が腫れたり、顔面痛が起こったりしますし、顔の内側に向かって大きくなれば鼻出血や悪臭をともなう鼻汁がのどを通ってくる症状などが起こりやすくなります。上の方へ大きくなれば眼球突出などの眼の症状、後方へ向かえば歯痛や口が開けにくくなるなどの症状が挙げられます。中でも多いのは頬の腫れや眼球突出、鼻出血とされています。

がんの診断には視診や触診で顔の各部位に腫れや赤みなどがないかを調べ、がんが疑われる場合にはCTやMRIなどの画像検査で病巣の広がりなどを確認し、生検や細胞診でがん細胞の有無や性質などを調べます。

歯痛が上顎洞がんの危険信号に?

上の歯のむし歯や歯周病が進んだ結果、上顎洞に起こる炎症を「歯性上顎洞炎」といいます。昔からよく見られる疾患のひとつで、副鼻腔炎の一種です。副鼻腔炎は上顎洞がんの大きなリスク要因であることを考えれば、むし歯や歯周病を放置することはがんのリスクを高めることになりかねない、と言えます。歯痛や歯肉の腫れなどがあらわれたら歯科を受診することが大切です。

整容面(見た目)や機能に配慮した集学的治療が必要

上顎洞がんの病期(ステージ)は、がんの広がりやリンパ節への転移の有無、遠隔転移の有無などから総合的に判断されます。

鼻腔・副鼻腔がん(上顎洞がん)のTNM分類
T分類
TX原発腫瘍の評価が不可能
T0原発腫瘍を認めない
Tis上皮内がん
T1上顎洞粘膜に限局する腫瘍、骨吸収または骨破壊を認めない
T2骨呼吸または骨破壊のある腫瘍、硬口蓋および/または中鼻道に進展する腫瘍を含むが、上顎洞後壁および翼状突起に進展する腫瘍を除く
T3上顎洞後壁の骨、皮下組織、眼窩底または眼窩内側壁、翼突窩、篩骨洞のいずれかに浸潤する腫瘍
T4a眼窩内容前部、頬部皮膚、翼状突起、側頭下窩、篩板、蝶形洞、前頭洞のいずれかに浸潤する腫瘍
T4b眼窩尖端、硬膜、脳、中頭蓋窩、三叉神経第二枝以外の脳神経、上咽頭、斜台のいずれかに浸潤する腫瘍
N分類
NX所属リンパ節転移の評価が不可能
N0所属リンパ節転移なし
N1同側の単発性リンパ節転移で最大径が3cm以下
N2a同側の単発性リンパ節転移で最大径が3cmをこえるが6cm以下
N2b同側の単発性リンパ節転移で最大径が6cm以下
N2c両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6cm以下
N3最大径が6cmをこえるリンパ節転移
M分類
M0遠隔転移なし
M1遠隔転移あり
鼻腔・副鼻腔がん(上顎洞がん)の病期
0期TisN0M0
Ⅰ期T1N0M0
Ⅱ期T2N0M0
Ⅲ期T1/2NⅠM0
T3N0/1M0
ⅣA期T1/2/3N2M0
T4aN0/1/2M0
ⅣB期T4bNに関係なくM0
Tに関係なくN3M0
ⅣC期T、Nに関係なくM1
参考:『頭顎部癌診療ガイドライン』2013年版、日本頭顎部癌学会(金原出版)

治療は基本的に、手術や放射線による局所(がんがある場所)の治療と、投薬による全身治療を組み合わせて行います。ただし進行したがんや、他の臓器に転移している場合は、薬物療法も併用します。病期のほか、患者さんの全身状態や治療後の生活のことも考慮して治療計画を立てていきます。

基本的に切除可能であれば手術が検討されますが、上顎洞がんを含む頭頸部がんの場合は、病巣の近くに眼球等の重要な臓器や組織があり、かつ顔の形態にも影響するため、広範囲の切除は慎重に、かつ治癒率を下げないように計画を立てなくてはなりません。

このような背景から、上顎洞がんでは三者併用療法といって、手術、放射線、薬物それぞれの治療法を組み合わせた治療が広く行われています。

例えば術前に投薬や放射線の照射で病巣を小さくしてから手術で切除するなどです。この場合は太ももの付け根の血管からカテーテル(管)を挿入し、がんの病巣に血液を送っている血管まで進めてから、直接大量の抗がん剤を注入します。それによりがんに抗がん剤を選択的に作用させることを狙います(超選択的動注療法)。さらに、放射線治療を同時に併用する場合もあります。高い治療効果が期待でき、かつ手術による顔面の変化をできるだけ避けることが可能となります。

ただし、扁平上皮がん以外のタイプでは放射線治療の効果があまり期待できないため手術を中心とした治療になります。広範囲の切除が必要となり、顔面の形態に影響する場合は、太ももの皮膚やおなかの皮膚を採取し移植するなどでの再建術も行います。なお、切除も困難な場合は粒子線治療が検討されることもあります 。

頭頸部がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の適応

頭頸部がんの薬物療法のひとつに「免疫チェックポイント阻害薬」があります 。

免疫とは、病気から身を守る自己防衛機能です。体内に侵入した菌やウイルスなどを、自分が保有するものと同じものかそうでないものかを見分け、そうでないものは異物として排除します。これを「免疫応答」といいます。

免疫チェックポイント阻害薬は、その免疫応答を起こしやすくして、がん細胞への攻撃力を高める薬です。

がん細胞には、免疫応答を封じ込めてしまうPD-L1というタンパク質を細胞の表面に出している場合があります。これが免疫細胞の表面に出ているPD-1というタンパク質と結合するとストッパーとなり、がん細胞への攻撃ができなくなってしまうのです。

免疫チェックポイント阻害薬は、そのストッパーを外して、免疫ががん細胞への攻撃をできるようにするよう働く薬なのです。

現在、免疫チェックポイント阻害剤の使用が認められているのは、治療効果が証明されているもので、病状などの条件が合った場合に限られています。

免疫機能のストッパーは、自分の正常な細胞を誤って攻撃しないための安全装置でもあります。従って、それを外すということはがん細胞への攻撃がしやすくなる半面、正常な細胞も攻撃してしまい、甲状腺機能低下症などの自己免疫疾患を引き起こす恐れがあります。

また、頻度は0.1~0.01%と低いものの、命にかかわる疾患として、劇症Ⅰ型糖尿病、薬剤性肺炎、下垂体炎に起因する副腎不全などを発症したという報告があります。安全に治療を受けるために、免疫チェックポイント阻害薬は、急な副作用の発生に対応できる施設で行うことが望ましいといえます。

頭頸部がんにおいて、免疫チェックポイント阻害薬での治療の対象となるのは、今のところ再発またはがんが体の他の場所にも広がっている患者さんで、かつ、プラチナ製剤による化学療法を受けたことがある患者さんに限られます。また適応であっても、患者さんの全身状態や合併症の有無等により投与できない場合もあります。

まとめ

上顎洞がんを含む頭頸部がんの場合、手術により顔面の形態に影響を及ぼすことが多いため、切除範囲をできるだけ小さくするため、薬物療法や放射線治療を併用する集学的治療が広く行われています。また、再発転移がんに対しては免疫チェックポイント阻害薬が保険適用となっています。

【甲 陽平(かぶと・ようへい)】
医療法人輝鳳会 理事長 池袋クリニック 院長
1997年、京都府立医科大学医学部卒業。2010年、池袋がんクリニック(現 池袋クリニック)開院。
「あきらめないがん治療」をテーマに、種々の免疫細胞療法を主軸とし、その他の最先端のがん治療も取り入れた複合免疫治療を行う。
池袋クリニック、新大阪クリニックの2院において、標準治療では治療が難しい患者に対して、高活性化NK細胞療法を中心にした治療を行い、その実績は5,000例を超える。

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