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どのようにがん細胞と戦う? 免疫細胞の「種類」「役割」を解説

免疫細胞療法を検討しているのであれば、その仕組みはすでに理解されているかもしれません。皆さんの体に生まれつき備わっている免疫の力を利用して、がん細胞と戦う免疫細胞療法は、今、大きく期待されている新たな治療方法の一つです。しかし、免疫細胞にはいくつかの種類があり、種類によって働きが異なります。

今回は、免疫細胞療法の仕組みは理解していながらも、細胞の種類が分からないといった方に、詳しく解説していきたいと思います。

目次

多種多様な免疫細胞がチームプレーで異物と戦う

2種類の免疫システムでがんを迎撃

がん細胞を攻撃する免疫システム

多種多様な免疫細胞がチームプレーで異物と戦う

免疫細胞の大部分は白血球として存在し、血流やリンパの流れにのって体の隅々まで到達することができます。そして、どこにがん細胞が誕生しても、また転移したとしても、体中をパトロールしている免疫細胞がそれらを見つけて攻撃します。

免疫細胞の「種類」「役割」

白血球は種類が豊富で、種類によって働きが異なります。多種多様な免疫細胞が連携し、チームプレーを繰り広げて異物と戦います。白血球は、主に「顆粒球」「単球」「リンパ球」の3種類に分けられます。

1. 顆粒球(かりゅうきゅう)

顆粒球は、免疫システムの中では初期に働く細胞です。無脊椎動物にも見られる原始的な細胞で、細菌など比較的大きな異物を食べます。寿命は1~2日とされており、以下に紹介する単球やリンパ球に比べるとすぐに尽きてしまうのが特徴です。

2.単球──マクロファージ、樹状細胞

核が一つであることから単球と呼ばれる細胞です。白血球の中では一番大きく、白血球全体の5%ほどを占めています。顆粒球が食べきれなかった異物を取り込むのが、主な役割です。血液中から血管外=組織に移動するとマクロファージや樹状細胞に分化します。マクロファージはアメーバ状の細胞で、異物を発見すると自分の中に取り込み消化します。また取り込んだ異物の特徴をリンパ球に伝える抗原提示いう働きも持っています。
樹状細胞は木の枝のような突起(樹状突起)を周囲に広げている細胞です。マクロファージ程の貪食能はありませんが、より強力な抗原提示能力をもっています。

3.リンパ球──T細胞、B細胞、NK(ナチュラルキラー)細胞

ウィルスなどに感染した細胞やがん細胞など、異物を見つけて排除する細胞です。白血球全体の約25%を占め、「T細胞」「B細胞」「NK(ナチュラルキラー)細胞」といった種類があり、異なる役割や特徴を持っています。免疫システムの中心的な役割を担っています。

・T細胞

単球の樹状細胞から異物の情報(抗原情報)を受け取ると、それと同じ情報を持った異物にとりつき、攻撃・排除をします。T細胞はさらに、攻撃専門の「キラーT細胞(細胞障害性T細胞:CTL)」、キラーT細胞やほかの免疫細胞に攻撃司令を出す「ヘルパーT細胞」、キラーT細胞が正常な細胞を攻撃するなど過剰に働かないように、その働きにブレーキをかけ、免疫反応を終了に導く「制御性T細胞」に分けられます。
また、T細胞は一度侵入した異物の情報を記憶にとどめており、次に異物が侵入したときは速やかに対応します。

免疫細胞の「種類」「役割」

・B細胞

異物の特徴に応じた抗体という物質を作ります。その抗体は異物が活動できないように異物に接着して動きを止めたり、毒素を中和したりします。さらに、無毒化され活動できなくなった異物をマクロファージが食べやすくなるように作用します。また、一度侵入した異物の特徴を記憶にとどめます。なお、B細胞は細胞ごとに作る抗体の種類が決まっており、外敵が出現した場合にのみ適合する抗体を作ります。

・NK(ナチュラルキラー)細胞

体内をパトロールして、常に自己の細胞をチェックしています。ウィルスに感染した細胞やがん細胞など異常な細胞を発見すると単独で攻撃をします。T細胞のようにほかからの指示を必要とせず、単独で異物を攻撃できることから、ナチュラル=うまれつき、キラー=殺し屋と命名されました。
なお、異常細胞を殺傷する能力を活性と呼び、活性が高まった状態のNK細胞のことを「活性化NK細胞」と呼びます。このNK細胞の活性(NK活性)を測定する方法も確立されています。

種類の免疫システムでがんを迎撃

免疫システムは敵を排除するために2種類のシステムがあり、一つは「自然免疫」、もう一つが「獲得免疫」と呼ばれます。

1.自然免疫

異物の侵入に対して即座に反応し攻撃する常設の防御部隊で、主に顆粒球やマクロファージ、NK細胞がこの役目を担っています。いずれも全身をパトロールしており、異物と遭遇するとその詳しい素性がわからなくても無差別に攻撃し、排除しようとするのが特徴です。なお、多種類の異物に反応することができますが、特定の病原体に対してくり返し感染しても、自然免疫の能力が高まることはありません。

2.獲得免疫

相手の特徴をつかんでから攻撃します。自然免疫では退治しきれなかった外敵が体に入り込んでしまったときに発動します。主にT細胞(細胞障害性T細胞、ヘルパーT細胞)やB細胞がこの役目を担っています。

3.自然免疫と獲得免疫の相互作用

自然免疫と獲得免疫は相互作用の関係にあります。まず、樹状細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞が侵入してきた異物を食べて取り込み、その情報を獲得します。情報を獲得した抗原提示細胞は、T細胞などの免疫細胞にその情報を伝えます。そして情報を獲得した免疫細胞は、体内をめぐりながら同じ情報を持つ異物と出会ったら攻撃します。自然免疫に比べ応答までに時間を要し、獲得免疫は数日かかります。
T細胞は、異物の情報を一度覚えると長期間記憶しているので、同じ異物が侵入するたびに排除しようとします。例えば「はしか」は一度かかると一生かからない病気ですが、それはこの獲得免疫の作用といえます。

がん細胞を攻撃する免疫システム

それでは、免疫システムは、がんに対してはどのように働くのでしょうか。まず、常に体内を巡回している顆粒球やマクロファージ、NK細胞などが、疑わしいものを見つけたら即座に攻撃をしかけます。この中にはもちろん、がん細胞も含まれます。

この防御網を突破されると獲得免疫の出番となります。その際に重要な役割を担うのが樹状細胞です。樹状細胞が異物を食べ退治すると同時に、がん抗原を捕らえると活性化し、リンパ球に情報を伝えるという「抗原提示」をします。

最初に情報を受け取るのはT細胞です。T細胞のうちヘルパーT細胞はがん抗原を認識するとサイトカインという物質を放出し、キラーT細胞がこれを受けて活性化し、がん細胞を攻撃しにいきます。このようにリンパ球が直接がん細胞を攻撃する形の免疫を「細胞性免疫」と呼びます。後段で紹介する免疫細胞療法は、この細胞性免疫を利用した治療法のことです。

ヘルパーT細胞は、B細胞も刺激します。するとB細胞はがんを攻撃する抗体を作り出し、敵を攻撃します。これを「液性免疫」と呼びます。この液性免疫は、NK細胞の攻撃を助ける効果があります。

まとめ

免疫細胞にはNK細胞やT細胞、B細胞など複数の種類があります。免疫細胞療法の研究は、がん細胞を攻撃する主軸をNK細胞にしたりT細胞をしたりして、様々な方向、切り口から発展してきました。よって免疫細胞療法を行っている医療機関なら、すべて同じ治療法というわけではありません。
免疫細胞療法を検討しているのであれば、気になる病院やクリニックで行われている免疫細胞療法の種類について詳しく先生に聞いてみることをおすすめします。

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