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MHC、HLA、TCRそしてTLR|がん免疫療法の基本用語

がんの免疫療法にはたくさんの聞きなれない専門的な用語が出てきます。ここでは治療への理解を深めるため、特に知っておきたい言葉について解説します。今回は「MHC」「HLA」「TCR」、そして「TLR」です。

医療法人輝鳳会 池袋クリニック 院長

目次

自分と自分以外認識する「MHC」とは

ヒト白血球抗原「HLA」とは

T細胞受容体「TCR」とは

自分と自分以外認識する「MHC」とは

がん細胞は、自分ががんであることを示す印(がん抗原)を持っていて、樹状細胞がそれを見つけ、攻撃部隊であるT細胞に伝える(抗原提示)ことで、がんを狙い撃ちします。この抗原提示で重要な役割を果たすのが、MHC(ヒトにおいてはHLA)と、後に解説するTCRです。

MHCは「主要組織適合複合体」という糖タンパクの分子です。英語でmajor histocompatibility complexといい、その頭文字をとってMHCと呼ばれています。

MHCは「自分」と「自分でないもの」を認識し、自分でないものを排除する免疫反応に関わる分子で、ほとんどの脊椎動物が持っています。

ヒト白血球抗原「HLA」とは

HLAはヒトにおけるMHCを指します。

Human Leukocyte Antigen(ヒト白血球抗原)の頭文字をとったもので、1954年に白血球の血液型として発見されましたが、その後の研究で、体のほとんど全ての細胞に存在していることがわかっています。

赤血球の血液型は大きくA,B,O,ABの4タイプですが、HLAは「自分」と「自分でないもの」を区別するための分子なので、数万通りともいわれる非常に多くの型が存在します。

臓器移植や造血幹細胞移植を行う際には、このHLAのタイプが適合することがドナーの条件となります。合っていないと免疫が「自己でない」と判断し、拒絶反応を引き起こしてしまうためです。しかしHLAは両親から半分ずつ受け継ぐため、血縁者でも適合しないことがあります。

HLAには、HLAクラスⅠとHLAクラスⅡという2種類があります。このうちHLAクラスⅠは、ほぼすべての細胞に存在します。それぞれHLAクラスⅠを細胞表面に出して、自分の素性を発信しているのです。

一方、HLAクラスⅡは、抗原提示を行う細胞のみがもっています。つまり樹状細胞はHLAクラスⅠとHLAクラスⅡの両方をもっているといえます。ほかにマクロファージやB細胞も該当します。

HLAクラスⅠは、がん細胞ももっています。つまりがん細胞も、表面にHLAクラスⅠを出して、そこから自分の素性、すなわちがん抗原を発信しています。T細胞が、あらかじめその情報を樹状細胞からもらっていれば、がん細胞のHLAクラスⅠを目印に、攻撃できるというわけです。

T細胞受容体「TCR」とは

TCRは「T細胞受容体」という分子で、名前が示す通りT細胞に存在します。英語でT cell receptorといい、その頭文字をとって略したのがTCRです。

受容体は例えるならば情樹を受ける「お皿」のようなもので、樹状細胞から提示されたがんの情報(がん抗原)をここで受け、敵を認識します。そしてさまざまな炎症性物質などの“武器”をつくり、敵を攻撃したり、他の免疫細胞を活性化して攻撃力を高めたりします。

自然免疫が持つ受容体「TLR」とは

前述の「TCR」は、獲得免疫であるT細胞が持つ受容体であるのに対し、TLRは自然免疫が持つ受容体です(自然免疫と獲得免疫の用語解説はこちら)。

「Toll様受容体」という分子で、英語表記(Toll-like receptor)の頭文字をとってTLRと呼ばれています。

マクロファージや樹状細胞などの食細胞と呼ばれる自然免疫は、敵とあれば何でも食べて退治することで知られています。しかし、 むやみに食べているわけではないことが、1990年代の半ばにわかってきました。

外から侵入してくる病原体は様々ですが、これらの病原体はいくつかのパターンに分けることができ、それぞれのパターンに共通する病原体由来の物質が存在します。実はそれを感知するセンサーがTLRなのです。

自然免疫では、まず外敵をTLRでパターン認識してサイトカインなどの“武器”をつくり、それで攻撃していることが明らかになったのです。

敵を認識するという点では、T細胞の持つTCRと役割は同じです。T細胞は樹状細胞から特定の敵の情報をもらうのに対し、自然免疫は敵由来の物質がTLRにくっつくことで敵と認識し、攻撃するための免疫反応が起こるのです。

まとめ

MHC(ヒトにおいてHLA),TCR,TLRは、がん免疫においては敵であるがん細胞の情報を認識したり、情報をやりとりしたりする役割があります。このうちMHC(ヒトにおいてはLHA)はほぼすべての細胞が持っており、自分の素性を発信しています。免疫療法の中には、この仕組みを利用して、がん細胞が自ら発信している素性をとらえ、攻撃する治療法があります。

ただし、がん細胞の中には素性を隠してしまうものもあります。その場合にはこうした治療法は奏功しないという問題があります。

iNKT療法は、こうした素性を隠してしまうがん細胞も攻撃できる特性を持った治療法です。

【甲 陽平(かぶと・ようへい)】
医療法人輝鳳会 池袋クリニック 院長
1997年、京都府立医科大学医学部卒業。2010年、池袋がんクリニック(現 池袋クリニック)開院。
「あきらめないがん治療」をテーマに、種々の免疫細胞療法を主軸とし、その他の最先端のがん治療も取り入れた複合免疫治療を行う。
池袋クリニック、新大阪クリニックの2院において、標準治療では治療が難しい患者に対して、高活性化NK細胞療法を中心にした治療を行い、その実績は5,000例を超える。

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