がん治療中の「痛み」はなぜ起こる? その原因と対処方法
がん治療中の患者さんのなかには、日々「痛み」を感じてつらい思いをされている方も多いと思います。患者さんそれぞれの病状や部位によって痛みの種類も異なります。なぜ痛みが発生しているか、自分が体感している痛みはなぜ起こっているのかを知ることで、痛みを和らげる処置を行うことができます。
今回はがん治療中に発生する痛みについて、種類と対処方法をご説明します。
目次
「痛み」にも色々ある。自分の言葉で伝える大切さ
- 時期
- 部位
- 痛み方
- 日常生活への影響
痛みは身体の警告反応。取り除くべきではない?
大きく二つに分類される痛みの原因
痛みを和らげるための方法
- 薬の処方
- 薬以外の方法
- 家族でもできるマッサージ
「痛み」にも色々ある。自分の言葉で伝える大切さ
患者さんが感じる「痛み」は、検査で数値として測ることはできません。患者さんの言葉によって医師に伝え、その情報をもとに薬が処方されるなど処置が行われます。だからこそ、‟自分の言葉で伝える“ことはとても大切なのです。
例えば、痛みの伝え方には、下記のような種類があります。
時期
一日中継続して痛いのか、時々痛みが出るのか。時々である場合、痛みはどのような時に出ることが多いのか。どれくらい前から痛みを感じるようになったのか。
部位
痛む部位は1カ所なのか、もしくは広範囲に広がっているのか。いつも同じ場所なのか、日によって部位は変わるのか。
痛み方
痛みの種類を例えると「キリキリ」「ズキズキ」「ジンジン」なのか。鋭い痛みか鈍い痛みか、しびれるような感じがするか。
日常生活への影響
食事をするのがつらい、夜眠ることができないなど。その他日常の動作のなかで、トイレのときにつらい、風呂で入浴時につらい、座っているのがつらいなど。
通常は医師がヒアリングで上記の痛みの種類を探ってくれます。それに答えることである程度正確に痛みについて伝えることができるでしょう。ただ、日常から自分で「こういった痛みがつらい」と言葉にできるようにしておくことで、医師とのやりとりがよりスムーズに行うことができるでしょう。
痛みは身体の警告反応。取り除くべきではない?
痛みの感じる時期には、「急性痛」と「慢性痛」の2種類があります。読んで字のごとく、急に現れる痛みと、継続して感じている痛みです。急性の痛みについては、痛みそのものが身体の警告反応であり、症状の経過を示すパラメーターにもなっています。そのため、あえて痛みを取り除かない方が好ましいといった考えもありました。しかし、近年は診断の技術が発達し、痛みを取り除きながら治療を進める考えが浸透しています。
どちらであっても痛みを我慢する理由はありません。医師の判断のもと、最大限痛みを取り除きながら治療を進めていきます。
大きく二つに分類される痛みの原因
痛みの原因によって「神経障害性疼痛」と「侵害受容性疼痛」に分類されます。
神経障害性疼痛は、痛覚を伝える神経が傷ついたりすることで起きます。がんにおいては、腕神経叢浸潤症候群や脊髄圧迫症候群、化学療法後の手や足の痛みなどが挙げられます。侵害受容性疼痛は、「体性痛」「内臓痛」に分類され、体性痛は骨転移や筋膜や筋骨格の炎症といった場合に体感し、内臓痛では胸部や腹部内臓へのがんの浸潤や圧迫によって痛みが発生します。
がんの痛みは単一のものではなく、患者さんの状況や部位によって原因も異なり、対処の仕方が異なってくるのです。
痛みを和らげるための方法
痛みには種類があり人それぞれです。一人ひとりの痛みの感じ方に合わせて、痛みを和らげる方法を医師や看護師が考え、治療が行われます。
薬の処方
痛みに対しては、アスピリン、アセトアミノフェンといった鎮痛薬が使われます。また、医薬用麻薬のモルヒネも使用されます。麻薬と聞くと「中毒になるのではないか」「最後の手段なのではないか」と不安を覚える患者さんが多いようですが、医師からの適切な指導のもと使用すれば中毒になることはありません。ただ、眠気や吐き気などの副作用が出ることがありますので、医師と相談しながら使用することになります。
薬以外の方法
痛みを感じている神経を麻痺させる注射を打つ「神経ブロック」という方法もあります。これは、専門医のいる施設で行なわれます。骨に転移したがんは強い痛みを感じる原因となるため、痛みを取るために放射線を当てることで痛みを抑えることがあります。
家族でもできるマッサージ
身体が痛みを感じると、どうしても筋肉がこわばり、痛みを強く感じやすくなるという悪循環に陥ります。そのため、マッサージや鍼・灸で筋肉のこわばりを取ってあげることは効果的です。医師・看護師でなくても、マッサージはご家族の方でもできる方法です。
まとめ
「治療のためだから頑張ろう」「我慢しなくては」。患者の方はそう思って日々頑張っていらっしゃるでしょう。
それでも、毎日痛みが続くことで気持ちは暗くなり、生活の活力が失われてしまうこともあるはずです。
現代では痛みを取り除く薬や方法が発展していることを知り、できることから頑張ってみましょう。
主治医に自分の言葉で痛みについて伝えて、患者さんの症状に合わせた方法を選択することで、今の痛みを改善できる可能性を見つけられるかもしれません。