二種類ある子宮がん~子宮頸がんと子宮体がんの違いとは~
子宮がんは二種類に区別されます。同じ子宮内ですが、発症する場所、症状、治療法ももちろん違います。そこで、子宮について、子宮がんについて詳しく解説します。
目次
子宮がんには「子宮頸がん」「子宮体がん」の二種類が存在
子宮頸がん~ウイスルの感染状態が続くことで発生~
子宮体がん~卵巣ホルモンのバランスのくずれが要因~
まとめ
子宮がんには「子宮頸がん」「子宮体がん」の二種類が存在
子宮は女性の下腹部にあり、骨盤の中央に位置し骨盤に守られるようにしてあります。洋梨を逆さまにしたような形で、鶏卵ほどの大きさです。膣の方から見て奥、子宮の入り口に当たる部分を子宮頚部といいます。一方、胎児が出産までとどまるところであり、子宮上部の袋にあたる部分を子宮体部といいます。
子宮にできる悪性腫瘍を総称して「子宮がん」といい、女性特有のがんとしては、乳房に次いで罹患率の高い部位となります。なお、子宮頚部に発生するがんを「子宮頸がん」、子宮体部に発生するがんを「子宮体がん」といい、二種類に大別されます。
子宮頸がんは、子宮頸部の入り口で、外子宮口と呼ばれるあたりに発生します。そのため診察や検診で発見されやすいがんといえます。また、がん細胞の増殖が一般に遅く、正常な細胞ががんになるのに5~10年以上かかるといわれています。がんになる前に発見することも可能なため、定期的な検診が推奨されています。
厚生労働省の「全国がん登録の概要」等を見ると、20歳代後半から患者が増加し、40歳代をピークに以後は横ばいとなります。若い女性に多いがんといえるでしょう。近年は子宮がん検診の普及もあり、減少傾向にはあります。
一方、子宮体がんは、別名「子宮内膜がん」ともいい、子宮の内側である子宮内膜に多く発生します。子宮内膜は生理のたびにはがれるため、閉経前に子宮体がんが発生することはまずありません。「全国がん登録の概要」等の罹患数を見ても、40歳代後半から増加を見せ始め50~60歳代にピークを迎えています。
子宮体がんは症状が早期段階で不正出血が表れることが多いのが特徴です。閉経後に少量の出血が長引く場合などは、すぐに医療機関を受診すれば早期発見の確率も高まります。子宮体がんの検診は国の指針では推奨されておらず、一般に子宮がん検診というと子宮頸がんの検査のみのこともあります。異常を感じたら、自らの意思で受診しましょう。
子宮頸がん~ウイスルの感染状態が続くことで発生~
子宮頸がんは、その多くでヒトパピローマウイルス(HPV)というウイスルの感染が関わっているとされ、患者の90%を上回る人からHPVが検出されています。HPVそのものはごくありふれたウイルスで、多くの場合、性交渉で感染することが知られています。
ウイルスに感染したからといって、すべての人が子宮頸がんになるわけでなく、多くは症状のないうちに排除されて自然に治ります。しかし、HPVの感染状態が続くことで子宮頸がんが発生すると考えられています。子宮頸がんの予防には、「子宮頸がんワクチン」の接種が有効です。現在、国は積極的に勧奨していませんが、公費助成による接種は可能です。
なお、子宮頸がんワクチンは、がんを予防するワクチンではなく、HPVウイルスの感染を防ぐためのものです。
HPVには100種類以上ともいわれる型があります。ワクチンを接種しても安心せずに、定期的に子宮頸がん検診を受けることが大事です。
子宮頸がんの症状
初期の子宮頸がんでは、一般には初期症状といわれるものはありません。ただし、がん細胞になる前の「前がん病変」状態を検査で見つけることが可能です。そこで、検診が重要になります。月経中でないときに出血する、性行為の際に出血する、下腹部や腰が痛む、普段と異なるおりものが出る、月経血の量が増える、月経期間が長引くなどの症状がある場合は、定期検診を待たず早めに受診しましょう。
子宮頸がんの治療
治療にあたっては、精密検査で病期(ステージ)を確定し、患者それぞれの病状などに応じて治療法が選択されます。治療法は、手術、放射線治療、抗がん剤治療のいずれかまたは併用となり、一般的には日本婦人科腫瘍学会による「子宮頸癌治療ガイドライン」に則り行われます。
子宮頸がんは、がんになる前の「前がん状態」や初期のがん状態で見つけることができれば、完治する可能性が極めて高いといえます。円錐切除術という子宮頸部を一部切除するだけで子宮を残し、妊娠の可能性を残す方法も行われます。
全国がんセンター協議会の「生存率共同調査」を見ると、病期(ステージ)がⅠ期の場合の5年生存率は90%を超えますが、Ⅱ期、Ⅲ期と生存率は低下し、Ⅳ期の場合は20%前後にまで低下します。早期発見、早期治療が生存率を高める原則といえるでしょう。
子宮体がん~卵巣ホルモンのバランスのくずれが要因~
子宮体がんは、卵巣ホルモンのバランスのくずれから引き起こされるとされていて、子宮頸がんとはまったく別の要因で起こるものです。
中でもその約8割は、エストロゲンという女性ホルモンが関係しています。閉経後、周期的な排卵がなくなるとエストロゲンが過剰な状態になり、その刺激が長期間続くことで子宮体がん発生の主な要因とされてきたのです。
最近は、食生活の欧米化による肥満、少産化、精神的・肉体的ストレスの増加など従来とは違う要因があり、30代の子宮体がんも増加しています。また、生理不順や無月経の人、子宮体がんになった近親を持つ人は、リスクが高くなります。
子宮体がんの症状
子宮体がんの症状で最もよくみられるのは出血です。患者の約90%は出血が見られ、出血の状態はさまざまで、おりものに血が交じる程度の場合もあります。いずれにしても、閉経後に少量でも出血が長期間続く場合は、早めに検診しましょう。そのほか、排尿時の痛みや排尿困難、性交時痛、骨盤まわりの痛み、おりものなどの症状が見られることもあります。
子宮体がんの治療
子宮体がんの治療は、手術によってがんを取り除くことが最も一般的です。基本は子宮と卵巣を摘出し、がんの転移を防ぐためにリンパ節も摘出することが多いです。がんの進行や患者の状態に対応して、放射線治療や抗癌剤治療、ホルモン療法などいくつかの治療法を組み合わせて行います。また、子宮体がんは病期(ステージ)がIa期と呼ばれる時期までは転移の可能性がないことが分かっています。そのため、初期のがんでは、妊娠、出産を希望する女性の場合には外科的治療ではなく子宮を温存するためにホルモン療法が選択されることもあります。
全国がんセンター協議会の生存率共同調査等を見ると、子宮体がんの5年相対生存率は、初期(病期Ⅰ、Ⅱ)であれば90%以上と良好ですが、病期が進むとともに生存率は不良になります。
まとめ
女性特有の子宮がん。子宮頸がんと子宮体がんでは、原因や症状が全く異なることがお分かりいただけたでしょうか。どちらも早期発見が大切なので、検診を定期的に受けるとともに、自分の体に何か異変を感じたら、躊躇せずに婦人科を受診することが肝心です。