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卵巣がん|早期発見が難しいがん、特定の遺伝子変異が原因となるもの

卵巣がんは腹部の深部にある卵巣にできるがんのため、早期発見が難しいがんのひとつです。閉経の時期~閉経後にあたる50代前半から60代前半が発症のピークとされます。さまざまな要因で発症しますが、特定の遺伝子変異が原因となる「遺伝性卵巣がん」が近年、一般にも知られるようになってきました。

医療法人輝鳳会 理事長 池袋クリニック 院長

目次

卵巣がんとはどんな病気か。原因、自覚症状は?

卵巣がんのステージと治療

卵巣がんでよく聞かれる「境界悪性」とは何か

卵巣がんとはどんな病気か。原因、自覚症状は?

卵巣は親指大の臓器で、子宮の左右に一つずつ位置しています。卵巣がんはこの卵巣にできた悪性腫瘍です。発生する部位によって大きく「胚細胞性腫瘍」「性索間質性腫瘍」「上皮性腫瘍」に分けられますが、卵巣がんのほとんどは上皮性腫瘍です。そのためここでは卵巣がん=上皮性腫瘍を指すものとして解説を続けます。

卵巣は腹部の深いところにあるので乳がんのようにしこりをふれることは初期にはなく、これといった自覚症状もありません。進行にともない腹部膨満感や食欲低下、また腫瘍が大きくなることで膀胱などの泌尿器を圧迫すると頻尿と言った症状があらわれる場合があります。また腫瘍が大きくなると腹部にしこりをふれることもあります。

お腹周りが張ってきて服が入らなくなった、急な腹痛が生じたなど気になる症状があれば早めの受診が勧められます。

なお、がんそのものの痛みはありませんが、卵巣の場合腫瘍が大きくなると捻転といって捻じれたり、破裂したりすることがあり、そうなった場合には激痛が起こります。

日本では、卵巣がんは40代から増加を始め、一般的に閉経の時期と重なる50代前半以降ピークとなり、60代前半を過ぎると次第に減少します。

発症にはさまざまな要因が複合的に関わっていると考えられていますが、排卵する際に卵巣表面に傷ができ、それが卵巣がんの発生要因と関係しているとの考え方があります。これに照らし合わせると、排卵回数が多いほど発症リスクが高いといえます。卵巣がんは1980年代半ばから増加傾向が続いており、近年では年間10000人がかかっているという統計が出ていますが、この背景には、出産回数が少なくかつ遅いといった、女性のライフスタイルの変化があると考えられています。

卵巣がんの中には、特定の遺伝子の変異が親から子へ受け継がれ、それが原因となり発症するものがあり、「遺伝性卵巣がん」と呼ばれています。国内での最近の研究では、卵巣がんと診断された人の17.8%が遺伝性卵巣がんとの報告があります。

  • 比較的若い年齢(55歳未満)での発症
  • 家族に卵巣がんにかかった人がいる
  • 高異型度漿液性というタイプの卵巣がんである

卵巣がんにかかった人が、上記のいずれかあるいは複数に該当する場合、遺伝性卵巣がんの可能性が高いこともわかってきています。

卵巣がんのステージと治療

卵巣がんが疑われる場合には、内診、直腸診、超音波(エコー)、CT、MRIなどで、がんの疑いがあるかどうかを調べます。ただし卵巣にできる腫瘍には良性のものもあり、画像検査や診察だけでは区別がつかないため、良悪の最終的な判断には、手術で組織を採取し、病理検査を行う必要があります。なお、手術前に悪性が強く疑われる場合は、術中に病理検査を行い、手術の範囲を決める場合もあります。

なお、卵巣がんの病期(ステージ)は、手術によりがんの広がりがわかってから判定されます(手術進行期分類)。

[図表1]卵巣がんの手術進行期分類(日産婦2014、FIGO2014)
I期:卵巣あるいは卵管内限局発育
ⅠA期腫瘍(しゅよう)が片側の卵巣(被膜破綻(※1)がない)あるいは卵管に限局し、被膜表面への浸潤(しんじゅん)が認められないもの。腹水または洗浄液(※2)の細胞診にて悪性細胞の認められないもの
ⅠB期腫瘍が両側の卵巣(被膜破綻がない)あるいは卵管に限局し、被膜表面への浸潤が認められないもの。腹水または洗浄液の細胞診にて悪性細胞の認められないもの
ⅠC期腫瘍が片側または両側の卵巣あるいは卵管に限局するが、以下のいずれかが認められるもの
ⅠC1期手術操作による被膜破綻
ⅠC2期自然被膜破綻あるいは被膜表面への浸潤
ⅠC3期腹水または腹腔(ふくくう)洗浄細胞診に悪性細胞が認められるもの
Ⅱ期:腫瘍が一側または両側の卵巣あるいは卵管に存在し、さらに骨盤内(小骨盤腔)への進展を認めるもの、あるいは原発性腹膜がん
ⅡA期進展 ならびに/あるいは 転移が子宮 ならびに/あるいは 卵管 ならびに/あるいは 卵巣に及ぶもの
ⅡB期他の骨盤部腹腔内臓器に進展するもの
Ⅲ期:腫瘍が一側または両側の卵巣あるいは卵管に存在し、あるいは原発性腹膜がんで、細胞学的あるいは組織学的に確認された骨盤外の腹膜播種(はしゅ) ならびに/あるいは 後腹膜リンパ節転移を認めるもの
ⅢA1期後腹膜リンパ節転移陽性のみを認めるもの(細胞学的あるいは組織学的に確認)
ⅢA1
(ⅰ)期
転移巣最大径10mm以下
ⅢA1
(ⅱ)期
転移巣最大径10mmを超える
ⅢA2期後腹膜リンパ節転移の有無関わらず、骨盤外に顕微鏡的播種を認めるもの
ⅢB期後腹膜リンパ節転移の有無に関わらず、最大径2cm以下の腹腔内播種を認めるもの
ⅢC期後腹膜リンパ節転移の有無に関わらず、最大径2cmを超える腹腔内播種を認めるもの(実質転移を伴わない肝臓および脾臓[ひぞう]の被膜への進展を含む)
Ⅳ期:腹膜播種を除く遠隔転移
ⅣA期胸水中に悪性細胞を認める
ⅣB期実質転移ならびに腹腔外臓器(鼠径[そけい]リンパ節ならびに腹腔外リンパ節を含む)に転移を認めるもの
※1)卵巣の表層をおおう膜が破れること。
※2)腹腔内に生理的食塩水を注入した後、腹腔内貯留液とともに回収したもの。
日本産科婦人科学会・日本病理学会編「卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 病理編 第1版(2016年)」より作成

なお、がんが片方の卵巣だけにとどまっており、ほかの臓器や組織への転移がないとしても、原則的に子宮全摘、両側の卵巣切除、大網切除術(胃下部の脂肪組織切除)、および骨盤内リンパ節、傍大動脈リンパ節といった大きなリンパ節の郭清が根治手術となります。卵巣がんはこれら周囲の臓器や組織に転移を起こしやすいがんであるからです。ただし、妊娠を希望する場合は再発リスクを考慮したうえで、子宮やもう片方の卵巣を残す手術方法がとられる場合もあります。

卵巣がんでよく聞かれる「境界悪性」とは何か

境界悪性腫瘍とは、名前が示す通り良性と悪性の境、つまり中間的な性格を持つ腫瘍で、組織診断にて確定します。卵巣腫瘍の9%程度を占めるとの報告もあり、近年増加傾向にあるともいわれています。

予後は悪性腫瘍に比べると良好で、診断時に初期(Ⅰ期)であることも多々あります。そのため低悪性度腫瘍と呼ばれることもあります。

米国のデータベースによる解析では、5年生存率は全体で98%、Ⅳ期であっても77%との報告があり(悪性の場合はⅣ期で28%程度 ※全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2017年9月集計)による)、多くの場合、手術のみで完治が可能です。

ただし悪性とついている以上、治療せずにいると命をおびやかすリスクは高くなることに変わりはありません。主治医の話をきき病気を理解したうえで治療にのぞむことが大切です。

まとめ

卵巣がんは婦人科がんの中でも抗がん剤が効きやすく、病状に応じ、手術と化学療法の組み合わせで治療方針が決定されます。周囲の重要な臓器に浸潤、転移しやすいため、手術は原則的に卵巣、子宮、周辺組織を広範囲に切除しますが、腫瘍が片方の卵巣のみにあり、妊娠を希望される場合は再発リスクを考慮したうえで、もう片方の卵巣、子宮を残す手術方法がとられる場合もあります。

【甲 陽平(かぶと・ようへい)】
医療法人輝鳳会 理事長 池袋クリニック 院長
1997年、京都府立医科大学医学部卒業。2010年、池袋がんクリニック(現 池袋クリニック)開院。
「あきらめないがん治療」をテーマに、種々の免疫細胞療法を主軸とし、その他の最先端のがん治療も取り入れた複合免疫治療を行う。
池袋クリニック、新大阪クリニックの2院において、標準治療では治療が難しい患者に対して、高活性化NK細胞療法を中心にした治療を行い、その実績は5,000例を超える。

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