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小腸がん|発見が困難で発症数が少ない希少がん

小腸がんの発症数は人口10万人あたり1~2人と、非常にまれながんです。しかし体の奥にあり、内視鏡検査が困難な部位であるため、進行した状態で見つかるケースが多い難治性のがんとされています。原因は明らかになっておらず、高脂肪食や遺伝性疾患がおもなリスク要因とされています。

医療法人輝鳳会 池袋クリニック 院長 甲陽平

目次

小腸がんとはどんな病気か

小腸がんの検査、診断、ステージ、生存率は?

小腸がんの治療は?

小腸がんとはどんな病気か

小腸は胃に近い方から十二指腸、空腸、回腸の3つの部分に分けられる6~7mほどの消化管です。

小腸がんと一口にいっても、がん細胞の組織型には複数あり、それにより次のように分類されます。

  • 神経内分泌腫瘍
  • 腺がん
  • 悪性リンパ腫
  • 肉腫(GIST、平滑筋肉腫)

このうちもっとも多いのが神経内分泌腫瘍で次いで腺がんとされています。

小腸がんは、全がんのなかでも発症数の少ないがんで、年間新たに診断される人数は約3200人ほどです(国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」地域がん登録2014年全国推計値、2018年)。全消化管での悪性腫瘍のおよそ1~3%、人口あたりの統計でも10万人あたり1~2人の発生率です。

発症原因は明らかになっておらず、リスク要因として高脂肪の食事や、遺伝性疾患(クローン病、家族性腺腫性ポリポーシスなど)が挙げられていますが、これらがなくても発症の可能性はあります。

通常の内視鏡検査では、十二指腸の奥より肛門側にがんがある場合は観察ができません。したがって小腸がんは早期発見が非常に困難といえます。多くの場合、大腸がん検診にも入っている便潜血検査をきっかけに、あるいは腹痛や腸閉塞、貧血などの症状があり受診して、小腸がんであることがわかりますが、そのときにはすでにかなり進行した状態であることがほとんどです。

なお、十二指腸にできたがんが進行すると、胆汁の出口を塞いでしまうことがあるので、黄疸の症状が出る場合もあります。

腹部中央の痛み、あるいは痙攣のような痛み、原因不明の体重減少、腹部のしこり、血便といった症状があったら、早めに消化器科を受診することが望まれます。ただしこれらの症状はほかの腹部の疾患でも起こりうるので、必ず小腸がんというわけではありません。

小腸がんの検査、診断、ステージ、生存率は?

小腸がんが疑われる場合、X線やCT、MRIといった画像検査や血液検査などから、病変の有無や場所を調べます。しかし確定診断のためには、組織を採取し病理検査をする必要があります。

十二指腸の手前に病変がある場合は、内視鏡検査にて観察し組織の採取も可能です。しかし十二指腸より奥の病変は内視鏡検査ができないため、確定診断をするために外科手術をし、組織を採取する場合もあります。ただし近年は、十二指腸より奥にも使用できる新しいタイプの内視鏡も登場してきており、外科手術をせず組織生検が可能なケースも増えてきています。

なお、CEAやCA19-9といった腫瘍マーカーは小腸がんに特有ではないことや、がんがあっても上昇しないこともあるので、これだけでがんの診断をすることはできません。

小腸がんの病期(ステージ)は、腫瘍の大きさや場所、リンパ節への転移の有無、遠隔転移の有無により決められます。

病期(ステージ):小腸腺がん
N0
(所属リンパ節転移なし)
N1
(所属リンパ節転移1〜3個)
N2
(所属リンパ節4個以上)
M1
(遠隔転移あり)
T1a:粘膜内癌(M)StageⅠStageⅢAStageⅢBStageⅣ
T1b:粘膜下層(SM)
T2:固有筋層(MP)
T3:粘膜下層(SS/SE)2cm以内の腸間膜・後腹膜浸潤はT3StageⅡA
T4:他臓器浸潤(SⅠ)2cmを超える腸間膜・後腹膜浸潤はT4StageⅡB

5年生存率についてはステージⅠが80.8%、ⅡAは85.8%、ⅡB77.8%、ⅢA51.6%、ⅢBは20.8%という報告があります(国立がん研究センター中央病院で1994~2014年に手術治療を受け、完全切除できた56人の小腸腺がんの患者の5年無再発生存割合)。

小腸がんの治療は?

小腸腺がん、神経内分泌腫瘍、GISTは原則として手術がまず検討されますが、悪性リンパ腫に対しては、手術は限局性(発生した場所にとどまっている)のものに限られます。以下、発症の多い小腸腺がんの治療について説明します。

小腸腺がんでは、基本的に大腸がんに準じた治療が行われます。これまでの検討により、小腸腺がんは生物学的に胃がんより大腸がんとの共通点が多く、化学療法の効果についても胃がんよりも大腸がんの治療法の効果が高いことがわかってきています。

がんが小腸とその周辺にとどまっている場合、外科手術で病変とその周囲のリンパ節を切除するのが基本です。がんが内視鏡の届く十二指腸にある場合は、内視鏡を用いて病変を切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)によって治療できる場合もあります。

小腸腺がんについては、手術後に抗がん剤等での追加の治療をした方が再発を予防できるという科学的な根拠が、今のところはっきりしていません。そのため、手術後は追加治療を行わず、経過観察をしていくことが一般的です。ただし国内外で、術後化学療法の臨床試験が進行中であり、今後、再発予防に有効な治療法が確立される可能性は十分にあります。

なお、ステージIVや手術後に再発した場合には、化学療法による全身への治療が行われます。

まとめ

小腸がんは基本的に手術が第一選択となりますが、再発予防に有効な治療法はまだ確立されておらず、経過観察が基本となります。術後化学療法の臨床試験が進行中であり、今後、有効な再発予防治療の確立が期待されます。

【甲 陽平(かぶと・ようへい)】
医療法人輝鳳会 池袋クリニック 院長
1997年、京都府立医科大学医学部卒業。2010年、池袋がんクリニック(現 池袋クリニック)開院。
「あきらめないがん治療」をテーマに、種々の免疫細胞療法を主軸とし、その他の最先端のがん治療も取り入れた複合免疫治療を行う。
池袋クリニック、新大阪クリニックの2院において、標準治療では治療が難しい患者に対して、高活性化NK細胞療法を中心にした治療を行い、その実績は5,000例を超える。

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