がん患者が「正しい知識」を得るための情報収集術
がんに向き合う際に重要となるのが「情報」です。一番の情報源は主治医であることは間違いないのですが、疑問に感じたことなどを相談・質問するためにも、自分でも情報収集を行い、理解を深めましょう。インターネットで簡単に調べられるようになった一方で、真偽が怪しい情報も溢れています。 “正しい”情報を得るためにはどうしたら良いかを考えてみましょう。
目次
最大の情報源は主治医
情報を収集する手段と気をつけたいポイント
情報収集の目安にしたい三つのチェックポイント
最大の情報源は主治医
がんを告知されたとき、人は今まで経験したことのない、がんという病気に対する不安にさらされます。こうした不安を少しでも軽くし、納得のゆく治療を選択するためにも情報収集は欠かせません。
情報収集というと、テレビや新聞、インターネットなどに目や耳がいきがちですが、まず、しっかりと抑えておきたいのが、自分自身の病状です。一口にがんといっても、種類や進行の具合などにより状況は多様です。自分の症状を把握していなければ、様々な情報に一喜一憂したり、自分には関係の薄い情報まで集めてしまったりと、大切な時間を無駄にすることにもなりかねません。
あなたのがんに関する情報を一番把握しているのは、なんといっても主治医です。直接あなたを診察して、あなたの病状に沿った情報を示唆してくれます。そして、今後の治療法や療養生活などについては、あなたと主治医の話し合いによって決まっていきます。主治医とのやり取りの中で、より詳しく知りたいと思ったことは、納得のゆく治療を行うためにも、自分でも調べてみる姿勢は大切です。
情報を収集する手段と気をつけたいポイント
情報収集にあたり、まず簡単に利用できるのはインターネットです。なかでも中立な立場で正確な情報を提供しているのが、国立がん研究センターがん対策情報センターの運営する「がん情報サービス」です。
「患者必携」には、がんと告知されたときの心の持ちよう、診療・治療、生活・療養についての助言が掲載されています。なお、国立がん研究センターがん対策情報センターでは、がんに関する様々な書籍や冊子、ちらしを制作していますが、サイト上で読んだり、PDF版をダウンロードしたりすることができるようになっています。
日本で公開されている診療ガイドラインを収集・掲載し、一般向けの解説などを掲載している「Mindsガイドライブラリ(日本医療機能評価機構)」、米国国立がん研究所(NCI)が配信するがん情報の日本語版が読める「がん情報サイト」なども信頼できる情報源となるでしょう。
インターネットで例えれば「胃がん」などと特定のがんで検索すれば、膨大な検索結果が表示されますが、まずは上記のようなサイトで正しい知識を深めていくことをおすすめします。
情報収集の目安にしたい三つのチェックポイント
国民の2人に1人はがんにかかるとされる昨今。がんに関する情報は多くの人の耳目を集めることもあり、テレビやラジオ、新聞、雑誌などのマスメディアから書籍、そしてインターネットやSNSまで情報が溢れています。
その中から、情報が正しく、かつ自分の病状に当てはまるかどうかを判断しなければなりません。がんにまつわる様々な情報に接したときには、ぜひ、次の三つの点に留意しましょう。
●いつ発信された情報か
がんに関する研究や薬剤の開発は、急ピッチで進んでいます。かつて信じられていた研究成果が、研究の進展にともない疑問を持たれたり、間違っていたことが判明することもあります。中には2、3年で情報がガラリと変わってしまうこともあります。情報発信の古いものや、いつ発信されたものか分からない情報のみで真偽を判断するのは危険です。
このため、発信された時期、掲載元を把握することが大切になります。
●情報の発信元は誰なのか
誰が何の目的で発信している情報なのか考えてみましょう。客観的データの無い中で、がん治療に効果があるかのように謳う行為は、法律によって禁止されていますが、実際には営利目的で、自らに都合の良い情報を流布する企業が多く存在します。中立の立場から、患者さんの利益のために発信している情報であることが重要です。国の機関、多くの実績がある医療機関からの情報であれば、信頼に足りるでしょう。
また、がんの病状は百人百様です。ある個人にとって有効だった治療方法が他の人にとって有効かどうかは確証がありません。個人による発信は、その人の主観によるところが大きいのです。興味深い情報であってもすぐに信じることなく、第三者に確認し慎重に真偽を確認する姿勢は大切です。
●情報の根拠は何か
ある研究成果が本当に有効なのかどうかは、いくつもの検証を経る必要があります。仮に試験管レベルで正しくても、あるいは動物実験で効果が見えても、それが人間にとって有効かどうかは別問題です。ニュースではよく革新的な治療効果について報じられることがありますが、人で用いるだけの根拠(エビデンス)が確認されていない場合は、信頼に足る情報とはいえません。
まとめ
人は情報を判断するときに、どうしても我が身にひきつけ、自分にとって都合の良い情報に注目しがちです。まして、がんを患った人は、少しでも希望の持てる情報に触れたいと思うでしょう。しかし、真偽に疑問を感じた場合、まずは、主治医、そして家族や友人・知人に意見を聞いてみましょう。自分とは違った視点から情報を吟味してもらうことも大切です。