がん治療の新たな柱 がん免疫治療とは?
免疫治療は、人間が本来持っている免疫の力を引き出すことでがんを攻撃する治療法です。19世紀末から免疫力を高める様々な方法が研究されてきましたが、最近では、いくつかの免疫療法の治療効果が科学的にも証明されるようになり注目を集めています。現行のがん免疫治療の例として、がんペプチドワクチン療法、樹状細胞療法、キラーT細胞療法、TIL療法、チェックポイント阻害剤による(PD-1抗体など)治療、LAK療法、NK細胞療法などが挙げられます。
がん免疫治療のあゆみ
当院で行う免疫療法の種類と比較
産生
NK療法
- 特徴
-
NK細胞を選択的に増殖させて体内に戻す方法です。
様々ながんに共通して認められる目印を見つけて攻撃するため、多種多様ながんに対して治療効果が期待できます。
T細胞に比べて培養が難しいという特徴があります。 - 殺傷力
- ◎
- 増殖力
- ○
- サイトカイン※
産生 - ○
iNKT療法
- 特徴
- がんに対する免疫細胞群を活性化し、それらの免疫細胞群を急激に増殖させます。また、活性化された免疫細胞の一部が体内に残存して、がんに対する長期免疫記憶を形成することで、持続的にがんを攻撃する治療法です。
- 殺傷力
- ◎
- 増殖力
- ○
- サイトカイン※
産生 - ◎
樹状細胞療法
- 特徴
-
サイトカインを使って、がんの目印を掲げた樹状細胞を誘導し、体内に戻す方法です。
樹状細胞は直接的にがん細胞を殺傷する力はありませんが、がんの目印と反応する細胞傷害性T細胞(CTL)を体内で誘導することで抗腫瘍効果を発揮します。 樹状細胞は増殖力がほとんどない細胞であり、治療に必要な細胞数を確保するためには、アフェレーシスという成分分析採血装置を使って2〜3時間かけて採血する必要があります。 - 殺傷力
- ○
- 増殖力
- ○
- サイトカイン※
産生 - ○
アルファ・ベータ
T細胞療法
(αβT細胞療法)
- 特徴
-
主にT細胞を増殖させて体内に戻す方法です。
T細胞は担がん状態ではがん細胞の免疫抑制作用により、がんを殺傷できない状態となっています。そのT細胞を体外で培養することで、再び殺傷力を持たせた状態にして戻す治療法です。 - 殺傷力
- △
- 増殖力
- ○
- サイトカイン※
産生 - ○
サイトカイン(cytokine)とは、細胞から放出される種々の細胞間情報伝達分子となる微量生理活性タンパク質で、すでに数百種類が発見され、免疫系に重要な役割を持ちます。
免疫療法のがん治療効果判定について
-
完全奏効
全ての非リンパ節病変が消失し、
全てのリンパ節病変の短径が
10mm未満となり、それを
4週間以上維持した場合。 -
部分奏効
腫瘍の長径の和が治療前に
対して30%以上小さくなった
状態を4週間以上維持
した場合。 -
安定
PRに該当する腫瘍縮小や
PDに該当する腫瘍増大を
認めない場合。 -
進行
腫瘍の長径の和がそれまでの
最小の長径の和に対して
20%以上大きくなった場合。
※奏効率は全体に対するCRとPRの割合となります。
ただし、腫瘍が大きくならないSDも治療効果と見なすこともあります。
当クリニックと同様のNK療法(免疫細胞療法)を行っている施設においては、およそ30%〜40%の有効率が報告されています。全身転移に至っている末期がんの患者様を含め、標準治療の限界を超えてしまった患者様も多く含まれている中での有効率です。 また、確率よりも余命宣告を受けた末期がんの患者様が、完全奏功(CR)をとげた例も多く報告されています。