口内炎と勘違いして発見が遅れることも……どこにでも発生する「口腔がん」
タレントの堀ちえみさんが、自身のブログで「口腔がん」のステージ4であることを明かし、驚かれた人も多いのではないでしょうか。口の中にできるすべてのがんを総称して口腔がんと言いますが、堀ちえみさんは、舌にできる舌(ぜつ)がんです。がんの可能性が高いのか判断がつきにくく、口内炎と誤認してしばらく放置してしまう人も多いようです。
今回は、注目を集めている口腔がんの特徴と症状、治療方法について解説します。
目次
舌、歯茎、くちびる……口の中にできるがんの総称
前がん病変の可能性も。違和感が続くならすぐ受診を
口腔がんの治療は手術と放射線治療がメイン
舌、歯茎、くちびる……口の中にできるがんの総称
口腔がんは、口の中と唇にできるがんのことです。多くは舌や歯肉(はぐき)、頬、口底(舌の下側)など口の中の表面を覆っている粘膜に発生しますが、唾液腺(口の中に唾液を分泌している)に発生する場合もあります。一般的には、舌がん、下顎歯肉がん、上顎歯肉がん、口腔底がん(口底がん)、頬粘膜がん、硬口蓋がんなどがあります。
国立がん研究センターの統計では、2014年に新たに口腔がんと診断された人は、男性1万3,378人、女性5,494人となっており、男性の罹患が女性の倍以上になっています。また、すべてのがんの罹患数に対しては、口腔がんは2%ほどです。罹患する年齢を見ると、40代から罹患率が高まりはじめ、60代以上での罹患が顕著となります。
口腔がんは、歯を除き、口の中ならどこにでも発生します。ただし、発生しやすい場所があり、日本人の場合は全体の50~60%が舌がんです。
口腔がんの発生にはさまざまな要因が作用していると見られます。直接的な原因を見出すことは困難ですが、口腔内の粘膜は、たえず機械的刺激や化学的刺激を受けており、その刺激で傷などができると治癒する過程で細胞ががん化することが考えられます。虫歯による歯の欠けや詰め物・かぶせ物のはずれ、かみ合わせの悪さ、入れ歯の調整不足など、口腔内の様々なトラブルによる慢性的な刺激が該当します。また、ウィルスや飲食物に含まれる発がん性添加物などの影響を真っ先に受ける場所であり、喫煙と飲酒も危険因子として挙げられています。
前がん病変の可能性も。違和感が続くならすぐ受診を
口腔がんは、体内にできるがんと違って肉眼で観察することができ、指で触ってみることもできます。早期のがんでは痛みや出血などはなく、硬いしこりができ違和感を持つような場合が多いようです。
この段階で観察できるのは、「白板症」といわれる白い病変、「紅板症」といわれる赤い病変です。これらは、将来がんになりやすい組織とされ、代表的な前がん病変とされています。しかし、この段階でがんを疑う人は少なく、口内炎だと思いそのまま放置し、がんの症状が顕著になってから受診をするケースが多いようです。通常、口内炎は1週間から10日間程度で治癒し、2週間以上長引くことはまれです。そのような場合は早期がんが疑われます。
がんが進行するとしこりが大きくなりますが、しこりが目に見えたり、触ることができたりする外側へと大きくなるもののほかに、発生場所から周辺の深部へと入っていくものがあります。後者では気づくのが遅れやすく、予想以上に進行している場合があり、腫瘍の形成による痛みや出血が現れて初めて気づくことになりがちです。
がんがさらに大きくなると話しづらくなったり、食事がしにくくなったり、口が開かなくなったりします。また、病変部位が腐ることから悪臭を発するようになったり、歯のぐらつきが見られるようになったりすることもあります。このような段階になると、がん細胞が血液やリンパ液にのって体内の各所へ散らばり、たどり着いた先で増殖を始めている可能性も出てきます。なかでも頸部のリンパ節への転移が高い頻度で起こります。また、血液の流れに乗って転移する遠隔転移では、口腔がんの場合、肺への転移が多く認められます。
診断では、まず病変部分の視診・触診により良性か悪性かの判断やがんの進行状況の推定などが行われます。その際、鼻腔からファイバースコープを入れ、咽頭や喉頭などを観察し、病変の広がりなどを確認します。触診では、頸部や頭部のリンパ節の膨張などの有無を判断します。続いて、CTやMRIなどの画像診断を必要に応じて行い、リンパ節転移や遠隔転移などの状況を把握します。そして、病変部分の組織の一部を切り取り、病理組織学的診断を行い、最終的な確定を下します。
口腔がんの治療は手術と放射線治療がメイン
治療方法は、「手術(がん切除)」「放射線治療」の二つが主で、「化学療法(抗がん剤)」は補助的に用いる場合が多いです。
手術
がんが比較的小さく、頸部リンパ節への転移が認められない早期がんの場合は切除手術を行います。なお、歯肉がんや口蓋がんの場合は、粘膜のすぐ下に骨があるので、骨を含めての切除となります。削除箇所が小さい場合は、摂食・嚥下や発話などの機能障害については軽微で、日常生活上の問題はほとんどないケースもあります。
放射線治療
口腔内は、どこの領域をとっても摂食・嚥下・会話などと深く関係するので、できるだけ機能や形態を温存したいものです。こうした観点から有効な治療法が放射線治療です。放射線治療単独で根治を目指す根治照射のほか、手術の前後に用いる術前照射、術後照射があります。なお、放射線治療中には、皮膚炎、粘膜炎、味覚障害などが起こりうる副作用です。
化学療法(抗がん剤)
手術や放射線治療の補助療法として行なわれることが多い療法で、初期の口腔がんに用いられることは少なく、病期の進んだ場合に用いられます。
まとめ
口腔がんは体内にできるがんとは異なり、実際に自分で見て触って確認することができます。異変を感じたらよく確認しましょう。2週間経っても治らない場合は検査をすることをおすすめします。