別の意見を求めさまよう「ドクターショッピング」が危険なわけ
がん治療では常に不安がつきまといます。第三者の意見を聞くためにセカンドオピニオンを受けることも悪いことではありません。ただ、セカンドオピニオンを正しく理解できていないと、かえって混乱することにもなりかねません。今回は、自らの考えに固執して、次から次へと別の意見や医師を求め続けさまよう“ドクターショッピング”について紹介し、医師とのコミュニケーションのありかたを考えてみましょう。
目次
第三者に意見を求める「セカンドオピニオン」とは?
ファーストオピニオンをまずしっかりと理解する
自分が求めている意見を言ってほしい…治療の目的を見失う患者
主治医とのコミュニケーションが大切な理由
第三者に意見を求める「セカンドオピニオン」とは?
近年、「セカンドオピニオン」という言葉がよく使われるようになっています。セカンドオピニオンとは、文字通り“第二の意見”を求めることですが、その内容を誤解している方も多いようです。そこで、本来のセカンドオピニオンとはどういうことなのか、またどのような誤解が生じているのかを、まずご紹介します。
セカンドオピニオンとは、現在診療を担当している医師とは別の医師に、現在の治療や今後の治療の選択などについて意見を求めることです。患者自身やその家族が納得できる治療法を選択できるように行われます。
その目的は、病状や治療法について、主治医とは別の角度から検討することで理解を深め、治療に対して自分なりの基準を持つことにあります。仮に、主治医の提示した診断や治療方針と同じ説明をされた場合は、ファーストオピニオンの裏づけと定義することができ、より納得を深め治療に臨むことができるのです。
ファーストオピニオンをまずしっかりと理解する
がんの治療においては、「手術の場合はこのようなリスクがあります」「一方、放射線治療の場合はこのようなリスクがあります」「術後の状況は、このように異なることが予想されます」といったように、選択肢とそれぞれの長所、短所を医師が提示し説明してくれるでしょう。そして、最終的な選択を患者やその家族が求められることもあります。自ら決断することが求められる場合にも、セカンドオピニオンは大いに役立ちます。
セカンドオピニオンを有効に活用するためには、主治医の意見である「ファーストオピニオン」を、まずしっかりと理解することが前提となります。自分の病状やがんの進行度、なぜその治療法を推奨するのかといったことを十分に理解しないままセカンドオピニオンを求めても、かえって混乱するだけだからです。
そして、セカンドオピニオンを受けるときには、所定の手続きと心がけるべきことがあります。セカンドオピニオンを受けたい場合は、まず主治医にその旨を伝えて、紹介状・各種の検査結果や画像データを依頼し受け取ります。しかるべき医療機関でセカンドオピニオンを受けたら、主治医に報告をして、今後の治療について相談をします。つまり、現在の主治医の協力が不可欠なことなのです。
自分が求めている意見を言ってほしい…治療の目的を見失う患者
近年、セカンドオピニオンが一般的に知られるようになってきましたが、なかには誤った解釈がされることもあります。セカンドオピニオンを受けるのは“主治医を替えるため”“病院を転院するため”“別の治療を受けるため”だと思っている方もいらっしゃいます。「今の主治医とは折り合いがよくないので、転院したくてセカンドオピニオンを受けに行ったのに……」「主治医には内緒で……」といった声を聞いたこともありますが、上述したようにセカンドオピニオンを受けるには、紹介状や検査データなどを持参するのが原則ですから、内緒というわけにはいきません。主治医の協力は不可欠なのです。
以上のような思いが高じた方が陥りがちなのが、「ドクターショッピング」です。ドクターショッピングとは、買い物で自分の気に入る品物を探してあちらこちらの店に立ち寄るように、自分がしてほしい治療法、自分にとって希望が持てる意見を述べてくれる医師と出会うまで、いくつもの医療機関を受診することをいいます。そのたびに新たに検査・診断を繰り返す…といった悪循環に陥ってしまいます。
主治医とのコミュニケーションが大切な理由
初めてがんと告知されたときのショックの大きさは想像にあまりあるものがあります。「自分に限って……」といった気持ちから診断結果が受け入れがたく、第2、第3の意見を求め続けたくなる気持ちもわからないではありません。
「ドクターショッピング」に陥るのを避け、「セカンドオピニオン」をしっかり活かすには、まずは、主治医からの病状についての説明をしっかりと理解しましょう。話を聞いた後、説明で分からなかったこと、診断内容や治療方針の疑問などを自分なりに整理し、次の診察の機会に具体的かつ率直に気になったことはすべて主治医に話してみることです。こうして話し合いを続けるうちに十分に情報が得られ、疑問が解消することでセカンドオピニオンの必要性がなくなり、心置きなく治療に専念できる場合もあります。
まとめ
主治医としっかりコミュニケーションをとり、信頼関係を築きましょう。そうすれば、セカンドオピニオンの意向を伝えるのも気詰まりではありませんし、主治医もきっとセカンドオピニオンを受けることを快く承諾してくれるはずです。