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がん治療のつらさ②…「病院を替わりたい」と思っても早まらないで

がん治療は、経過観察も含めると年単位の長期にわたるケースがほとんどです。その間、医師と十分に意思疎通ができないと、不安や不満を募らせてしまうことになりかねません。「病院を替わりたい」と思う理由の多くは、こうした医師とのコミュニケーション不全にあると思われます。そのような状況になったとき、知っておくと役立つ解決のヒントを挙げました。

医療法人輝鳳会 池袋クリニック 院長 甲陽平

目次

病院を替わりたいと思うのは、どんなとき?

医師と患者の関係を良好にする「ちょっとした工夫」

  • 診察の前に、質問したい項目を書き出して整理する
  • 写真や絵を使って説明する
  • 痛みや不快感の「具体的な表現」を心がける

相談役のクリニックを持つのもひとつの方法

病院を替わりたいと思うのは、どんなとき?

自分の体のことをお任せする医師とは、よい関係性を築くことが大切です。

しかし現実には、「3分診療」などと言われるように、医療機関の医師は限られた時間でたくさんの外来患者を診なければならず、ひとりひとりにかけられる時間はとても短いのが実状です。これにより患者さんからは、「話を十分に聞いてもらえない」といった不満の声が聞かれます。

がんの場合、初期治療が終わり再発予防の治療(アジュバント)や経過観察に入ると、とくに重大な異常が起こらなければ、医師から手短に話をされておしまい…といった、一方通行の診療が繰り返されるケースもあります。

しかし、患者さんは日々がんと向き合っているなかで湧き上がる、

「少し調子が悪いような気がするけれど、医師に言うほどでもないのかな」
「再発しないか不安でたまらないけれど、相談したら迷惑かな…」
「処方された薬のこと、よくわからなかったのだけど、聞き返したら怒られるかな」
「食事や運動などの生活アドバイスを受けたいけど、先生は忙しそうだから…」

といった不安や疑問を、遠慮やあきらめで押しつぶしています。

そして心のうちでは、もっとじっくり自分の話を聞いてもらえたら、不安に寄り添ってもらえたら、どんなに気持ちが楽になるだろう…と思っているのです。

もちろん医師も、できれば相談にのりたい、一緒に解決していきたい、と少なからず思っているはずです。しかしそこにはどうしても「時間」の壁がたちはだかるのが実状です。

患者さんの希望と、それにこたえるのが難しい医療現場とのギャップ。これが大きくなればなるほど、患者さんのなかで「病院を替わりたい、別の病院で診てもらいたい」との思いがふくらんでしまいます。

しかし、だからといって「病院を替わる=転院」も、おいそれとできることではありません。転院先を探したり、いまかかっている医療機関に申し出をしたりなど、時間もエネルギーも必要です。そしてその間、治療に専念しにくい状況にもなりかねません。

では、医師との関係で悩んだとき、転院以外で解決する方法はないのでしょうか。

では、医師との関係で悩んだとき、転院以外で解決する方法はないのでしょうか。

患者と医師の関係も「人対人」ですから、どうしても相性のよしあしがあります。診療時間が短いことを差し置いても「どうもこの医師には話がしにくい」「気持ちが通じにくい」との思いを抱いてしまうこともあるでしょう。どちらが悪いというものではなく、単純に「ウマが合わない」のであり、人付き合いにおいて、どのようなシーンでも起こりうることです。

一般的に人が抱えるストレスの大部分は、人間関係によるとも言われます。「あの先生だって、悪い人ではないのだから…」とがまんし続けていると、診療のたびにストレスを抱えることになります。もとよりがんの治療は心身ともにストレスとなりますから、それに輪をかけてしまうようでは、治療にとってもマイナスになってしまうでしょう。このようなケースは、転院もやむを得ないかもしれません。

しかし一方で、コミュニケーションがうまくいかないと悩むケースのすべてが「相性の悪さ」に起因するわけではありません。なかには、患者さんがちょっと工夫するだけで、短い診療時間でも効率よくかつ効果的に医師との意思疎通がしやすくなり、診療時の不満が解消されることもあるのです。

言いたいことを「伝える工夫」

診察の前に、質問したい項目を書き出して整理する

診療時、頭のなかでは「主治医にあれも、これも訊きたい」とたくさん浮かんでいても、しっかり整理してみると、実際には似たような内容だったり、さほど重要度が高くない質問だったりするものです。簡単なメモ程度でいいですから、事前に主治医へ訊きたいことを紙に書きだしてみましょう。それによって頭が整理され、質問したいことが絞られていきます。質問を3つ程度に絞れば、3分診療であっても医師に伝えやすいですし、答えてもらいやすくなります。

写真や絵を使って説明する

口のなかが荒れている、皮膚にブツブツができた、といった、見てわかる症状は、絵や写真を活用しましょう。たとえば、いちばん強い症状のときにスマホ等で写真を撮っておけば、診療時におさまっていたとしても報告がスムーズになりますし、医師もこのまま経過観察でいいのか、それとも薬が必要か、といった判断がしやすくなります。

また、痛みや違和感を説明する際にも、「背中の上の方」とか、「みぞおちの少し下」などといった言葉より、人の体の絵を描き、「この場所」と丸をつけて見せた方が、ひと目で伝わりやすいでしょう。症状のある部分の広さや、複数箇所にわたる場合も同じように図示する方が効率的です。

痛みや不快感の「具体的な表現」を心がける

がんの場合は痛みや不快感が症状として出やすいので、単に「痛い」ではなく、どのように痛むのかを表現するようにすると、より具体的に伝わりやすくなります。例えば「皮膚がチクチク痛い」と「体の奥がズンズン痛い」では、痛みの内容がかなり違ってくるでしょう。あわせて、朝、昼、晩、といった時間帯や、1日の回数や、1回あたりの長さなど、時間や程度をあらわす言葉も普段からすぐ出てくるようにしておくといいでしょう。

相談役のクリニックをもつのもひとつの方法

上記のような工夫をしても不満が残るけれども、いまから医院を替えるのもしんどい…という場合、現在かかっている医療機関とは別に、時間をとって話を聞いてくれる「相談役」のクリニックをもつ、というのもひとつの手です。

相談役のクリニックは、直接的ながんの標準治療を担当するのではなく、患者さんの免疫力をサポートし、がんに立ち向かう力を養う部分を担います。免疫力のサポートには、NK療法などの、患者さん自身の免疫細胞を用いた治療を行うだけでなく、ビタミンCの点滴やサプリメント、また食事や運動のアドバイス、生活上の悩み相談など、多岐にわたります。生活上のアドバイスや悩み相談といった、一見“治療”の領域ではなさそうなアプローチも、がんと向き合ううえでは大切です。これらはすべて、なんらかの形で患者さんのストレスを和らげますので、それが免疫力にもよい影響を及ぼすことも期待できるからです。

先に挙げたように、治療を受けている医療機関との“相性”が合わなくて、どうしてもこのままかかりつづけるのが難しいというのであればやむを得ませんが、「もっとじっくり話を聞いてもらいたい」「悩みに耳を傾けてほしい」「不安な気持ちを聞いてもらえれば、それだけでも楽になる」といった場合であれば、気持ちを受け止めてもらえる「相談役」をもつことでストレスが和らぎ、治療を受けている医療機関との関係がよくなることも、十分期待できるのです。

まとめ

がんの治療は5年10年と長期にわたることが多いからこそ、じっくり腰を据えて、ストレスなく治療を受け続けていきたいものです。そのためにも、いま治療を受けている医療機関に不満があるからといって、一時の感情にとらわれて行動するのはお勧めしません。転院に時間やエネルギーを費やす前に、ここでご紹介した、主治医とのコミュニケーションを円滑にする方法を試みたり、不安な気持ちを受け止めてくれる「相談役」のクリニックを探すことを検討するといいでしょう。

【甲 陽平(かぶと・ようへい)】
医療法人輝鳳会 池袋クリニック 院長
1997年、京都府立医科大学医学部卒業。2010年、池袋がんクリニック(現 池袋クリニック)開院。
「あきらめないがん治療」をテーマに、種々の免疫細胞療法を主軸とし、その他の最先端のがん治療も取り入れた複合免疫治療を行う。
池袋クリニック、新大阪クリニックの2院において、標準治療では治療が難しい患者に対して、高活性化NK細胞療法を中心にした治療を行い、その実績は5,000例を超える。

 

 

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