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膀胱がん|主に3タイプ、治療は手術・抗がん剤が基本に

膀胱がんは膀胱の内側の粘膜から発生するがんで、大きく3つのタイプがあります。がんが表面の膀胱壁にとどまっている段階なら電気メス等による患部の切除で治療可能ですが、進行したがんでは膀胱を摘出し、ストーマ(人工膀胱)をつくるなど大がかりになり生活の質にも影響します。

医療法人輝鳳会 理事長 池袋クリニック 院長 甲陽平

目次

膀胱がんとはどんな病気か。原因や自覚症状は?

膀胱がんの治療は手術または抗がん剤が基本。全摘の場合は膀胱再建も

膀胱がんの術後のケアとトレーニングについて

膀胱がんとはどんな病気か。原因や自覚症状は?

膀胱の内側は尿路上皮と呼ばれる粘膜で覆われており、膀胱がんのほとんどはこの尿路上皮から発生します。60歳以上に増加し始める傾向にあり、男性に多いがんです。

膀胱がんは大きく「表在性膀胱がん」「浸潤性膀胱がん」「上皮内がん」の3つのタイプに分類されます。

表在性膀胱がんは、膀胱表面の粘膜にとどまっており、粘膜の下の筋層には広がっていないがんです。カリフラワーのような形で隆起していることが多く、膀胱の内側の空洞に向かって出ています。転移することはあまりありません。膀胱がんの中でもっとも多いタイプです。

浸潤性膀胱がんは、粘膜の下の筋層まで広がったがんで、表面は表在性膀胱がんのような特徴はなく、こぶになっていたりむくんだようになっていたりとさまざまです。膀胱から外側へと進行し転移もしやすいタイプです。

上皮内がんは悪性度の高いがんが粘膜上に散らばっている状態のがんです。他の多くのがんでは、上皮内であれば一般的に早期であり予後も良いとされますが、膀胱がんの場合は悪性度が高いのが特徴です。

がんのリスク要因として明らかになっているのは喫煙です。また、職業で化学薬品等危険物質を長く扱っていることもリスク要因であることがわかっています。近年では一部の糖尿病治療薬と膀胱がん発症リスクとの関連が指摘されています。

膀胱がんの症状として早い時期にもっとも多いのは血尿です。肉眼でもわかる赤色や褐色の尿が出ますが、多くの場合痛みはともないません(無症候性血尿)。ただし、病巣が尿道部や膀胱頚部と呼ばれる、膀胱の出口に近い場所にあると、排尿時に痛みがあるほか、頻尿や残尿感、尿の混濁といった症状があらわれます。膀胱炎に似ていますが、抗生物質を服用してもなかなか治らないという特徴があります。

進行して尿管口をふさぐと、排尿がスムーズにできなくなり尿がたまって腎が腫れるなどで、背中に痛みがあらわれることもあります。水腎症と呼ばれる状態になり、腎臓機能が低下する場合もあります。

さらに進行すると、排便に異常があったり、直腸や子宮から出血が起こったりすることもあります。

血尿は、例え膀胱がんでなくても泌尿器科領域のさまざまな病気の可能性がありますので、早めに受診することが大切です。

治療は手術または抗がん剤が基本。全摘の場合は膀胱再建も

がんが疑われる場合は、膀胱鏡検査といって尿道から内視鏡で膀胱内部を確認する検査や、尿細胞診検査といって、尿中にがん細胞がないかどうかを顕微鏡で確認する検査が行われます。がんと診断された後、広がりや深さなどを調べるにはCTやMRIといった画像検査が行われます。また、病状により腫瘍マーカーや骨シンチグラフィが行われる場合もあります。病期(ステージ)はがんの広がり、リンパ節転移の有無、別の臓器への転移の有無の3つの指標を組み合わせⅠ~Ⅳに分類されます。

T分類 局所でのがんの進行度 (※Ta、Tisは浸潤なし)
Ta乳頭状非浸潤がん
Tis上皮内がん(CIS)
T1粘膜上皮下結合織に浸潤するがん
T2筋層に浸潤するがん
T2a:浅筋層に浸潤するがん
T2b:深筋層に浸潤するがん
T3膀胱周囲組織に浸潤するがん
T3a:顕微鏡的
T3b:肉眼的(膀胱外の腫瘤)
T4次のいずれかに浸潤する腫瘍:前立腺間質、精嚢、子宮、膣、骨盤壁、腹壁
TaからT1までを筋層非浸潤がん(表在がん)とよび、T2以上を浸潤がんといいます。
N分類:リンパ節転移の有無とその程度
N0所属リンパ節転移なし
N1小骨盤腔内の1個のリンパ節への転移
N2小骨盤腔内の多発リンパ節転移
N3総腸骨動脈リンパ節転移
M分類:転移の有無
M0転移なし
M1転移あり
膀胱がんの病期
リンパ節や別の臓器への転移を認められないリンパ節転移があるか、別の臓器に転移がある
深達度Ta0a
深達度Tis0is
深達度T1
深達度T2a,b
深達度T3a,b
深達度T4a
深達度T4b
参考:腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約2011年4月(第1版)(金原出版)

がんが膀胱壁の比較的浅い部分にとどまっている場合は、尿道から膀胱鏡を入れ、電気メスで腫瘍を切除する治療が検討されます。より深い部分に至っている場合は膀胱全摘除術が検討され、その際には尿を出すための新たな経路をつくる手術も同時に行われます。

進行して転移がある場合や、全身状態などの理由で手術ができない場合などでは、抗がん剤による治療が行われます。

膀胱がんの術後のケアとトレーニングについて

膀胱がんによって膀胱を摘出したときには、尿の通る経路を新たにつくる尿路変向(変更)術を行います。

その方法として、回腸導管造設術、尿管皮膚瘻(ひふろう)造設術、自排尿型新膀胱造設術の3つがあります。回腸導管造設術、尿管皮膚瘻造設術は体の外にストーマ(人工膀胱)をつけるやり方で、自排尿型新膀胱造設術は小腸または大腸を縫いあわせて新しい膀胱を体内に再建する方法です。がんの位置や進行の状態、全身状態などによって、いずれかが選択されます。

ストーマをつける方法を選択した場合は、ストーマや周辺の皮膚のケアが必須となります。病院によっては、ストーマケアを専門とする外来を設けているところや、皮膚・排泄ケア認定看護師といって、ストーマケアについて専門知識をもった看護師が相談にのるところもあります。

体内に膀胱を再建する方法の場合、今まで通り尿道から排尿しますが、新しい膀胱には収縮して排尿する機能がないため、数時間おきに腹圧で排尿しなければなりません。また尿漏れや排尿困難などのリスクがあります。このため、術後に排尿トレーニング(自排尿訓練)が必要となります。また、新しい膀胱や尿路に異常がないかの検査も定期的に受けることになります。

まとめ

膀胱がんのために膀胱の摘出・再建をした場合は、排尿訓練や人工膀胱のケアが必要となります。病院によって、専門の外来を設けていたり、専門知識をもった看護師が相談に応じたりして、生活の質を大きく下げないためのサポート体制を備えたところもあります。排尿は毎日のことなので、がんの治療に加え、こうしたトレーニングやケア、定期的な検診受診をしっかりすることが大切です。

【甲 陽平(かぶと・ようへい)】
医療法人輝鳳会 池袋クリニック 院長
1997年、京都府立医科大学医学部卒業。2010年、池袋がんクリニック(現 池袋クリニック)開院。
「あきらめないがん治療」をテーマに、種々の免疫細胞療法を主軸とし、その他の最先端のがん治療も取り入れた複合免疫治療を行う。
池袋クリニック、新大阪クリニックの2院において、標準治療では治療が難しい患者に対して、高活性化NK細胞療法を中心にした治療を行い、その実績は5,000例を超える。

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