生活習慣とがんの関係~科学的根拠にもとづく“予防”は可能~
生活習慣の乱れが身体に良くないということは誰もが認識していることでしょう。ところがやむにやまれぬ事情で良くないと思っていても生活習慣を立て直すことができない方も多いと思います。
今回は、生活習慣によるがん発生リスクについて具体的な数字をご紹介し、それぞれのリスク要因について考えてみたいと思います。
目次
がんに影響する生活習慣
たばこは肺がんだけではなく、全身のがんリスクも高める
がんリスクを抑えるために飲みすぎは厳禁
食材や塩分、温度にも気配りを
毎日60分は軽い運動、週60分以上は汗をかく運動を
がんに影響する生活習慣
今や日本人の2人に1人ががんになると言われる時代で、罹患者数は増え続けています。その中で生活習慣が要因でがんが発症する人はどれくらいいると思いますか?
男性と女性でデータに差はありますが、次のような結果が出ています。
【男性】
喫煙29.7%、飲酒9%、塩分接種1.9%、野菜・果物接種不足1.4%、肥満0.8%、運動不足0.3%
【女性】
喫煙5%、飲酒2.5%、塩分接種1.2%、野菜・果物接種不足1.2%、肥満1.6%、運動不足0.6%
参考)Inoue, M. et al.: Ann Oncol, 2012; 23(5): 1362-9より
この数値を多いと感じるか少ないと感じるかは人によって異なるかもしれません。ただ、この数字からわかることは、がん発生要因の10~30%は日々の生活によるものだということです。これらは、意識することでコントロールすることができるリスクといえます。
国立がん研究センターでは、40歳から69歳の男女約14万人の追跡調査を実施しました。
その結果によると、上記のリスクを防止する「禁煙」「節酒」「食生活の改善」「運動」「適正体重の維持」を意識して生活していた人は、そうでない人に比べて男性で43%、女性で37%ものがんリスクが軽減したという結果が生まれました。良質な生活習慣が、がんの予防に有効なことは明白といえるでしょう。
たばこは肺がんだけではなく、全身のがんリスクも高める
男女ともに高いリスク要因となっているのが「たばこ」です。
たばこを吸う人は吸わない人に比べてがんリスクが約1.5倍高まります。たばこによるがんというと、肺がんをイメージしますが、肺に限らず全身のがん発生リスクを高め、食道がんや腎臓がん、胃がん、大腸がんなどにも関連することがわかっています。
依存性のあるたばこを止めることは難しいことですが、近年は「禁煙外来」など専門機関で禁煙のサポートを行えるようになっています。将来のリスクや治療にかかるコストを考えれば、早期にサポートを受けて禁煙にチャレンジするのも選択肢として悪くないでしょう。
また、受動喫煙もがんリスク要因です。男性の0.2%、女性の1.2%は、受動喫煙ががん要因というデータも出ています。運動不足や食生活の影響と変わらないほど大きな影響を与えています。
がんリスクを抑えるために飲みすぎは厳禁
飲酒量によってもがんリスクが高まります。男性の場合、1日あたりの飲酒量平均が純エタノール量69gの人は、23g未満の人に比べて、がんリスクが約1.6倍も高くなるのです。
“純エタノール量”と言われてもピンとこない方も多いかもしれません。飲酒量の目安として推奨されている「純エタノール23g」を各お酒の量で置き換えると下記のようになります。
日本酒1合、ビール大瓶1本、焼酎ロック2/3合、ウィスキーダブル1杯、ワインボトル1/3程度
適度な飲酒は、血行を良くして健康に良いとも言われています。大切なのは適量でとどめておくことです。上記を目安に日々の飲酒量を見直してみましょう。
食材や塩分、温度にも気配りを
私たちの身体は日々摂取する食物によって形作られていますが、なかでも「塩分」「野菜」「果物」の摂取は、がんリスクに大きな影響を与えます。
塩分を多く摂取する人は、男女ともに胃がんのリスクを高めます。また、野菜と果物の摂取が少ない人はがんのリスクが高いことがわかっています。
食材の温度もがんリスクに関係します。熱い食べ物と熱い飲み物は、食道がんのリスクを高めるのです。なるべく熱いものは冷ましてから取るようにしてください。
食材や塩分、温度にも気配りを
私たちの身体は日々摂取する食物によって形作られていますが、なかでも「塩分」「野菜」「果物」の摂取は、がんリスクに大きな影響を与えます。
塩分を多く摂取する人は、男女ともに胃がんのリスクを高めます。また、野菜と果物の摂取が少ない人はがんのリスクが高いことがわかっています。
食材の温度もがんリスクに関係します。熱い食べ物と熱い飲み物は、食道がんのリスクを高めるのです。なるべく熱いものは冷ましてから取るようにしてください。
まとめ
「禁煙」「節酒」「食生活の改善」「運動」「適正体重の維持」これらを意識して生活習慣の改善に取り組むことで、確実にがんの発生リスクを下げられます。再発・転移の不安を抱える患者さんも正しい生活習慣を送りましょう。できることから改善を行い、日々積み重ねることで、健康のための習慣になっていきます。