がん治療の名医っているの? 信頼できる医師に出会う方法
目次
がん治療の名医とは?
探すべきなのは名医ではなく“良医”
がんは手術後、治療後のケアが大事
セカンドオピニオンの活用もひとつの方法
自分にとって最良の医師を探す努力を
がん治療の名医とは?
病気にかかったとき、人は誰でも“よい医者にかかりたい”と思います。まして、まだまだ不治の病というイメージの強いがんを告知されたら……、少しでも治療実績のよい病院や医師にすがりたくなるのは無理もありません。
いざ、がんと診断されて、誰もが思い悩むのは「どの病院でがん治療を受けるのか」「がん治療を受けるならどんな医師がいいのか」といった選択です。
世の中には、○○の執刀医、年間手術件数○○件のスーパードクター……などなど、世評に高い、いわゆる“名医”と呼ばれる医師がいるのはご存じのことと思います。では、がん治療においても、このような名医は存在するのでしょうか?ここで、考えなければいけないのが、がんという病の性質です。
がんの病状は非常に多岐にわたり、個人差が大きいものです。また、診断時のがんの進行具合は様々です。仮に転移が認められない段階でも、手術で病巣を除去するのか、放射線でがん細胞を死滅させるのかは部位によって異なります。また、すでに転移が見られる場合は、標準療法と代替療法を併用して行う場合も多々あります。つまり、治療法が多岐にわたり、それぞれの治療分野を得意とする病院・医師も異なるのです。
また、患者ひとりひとりの価値観や生活状況も、治療方法や病院を選ぶ際の大きな要素となります。一定期間の入院が可能な人もいれば、働きながらの治療に通いたい人もいるでしょう。
つまり、口コミや各種のランキングなどで世評が高いといっても、個々のがん患者の治療にぴったりはまるベストな病院や医師が見つかる可能性は低く、その患者にとっての名医と出会うのは簡単ではありません。
探すべきなのは名医ではなく“良医”
では仮に名医がいないとしても、限りなくベターな医師を探すことはできるのでしょうか? 言葉を変えれば、名医でなく“良医”を探す術です。
近年、がんの治療は、関連学会が作成したガイドラインに則って治療をすることが一般的で、幸いなことに手術の技量や治療内容に病院間の大きな差は見られなくなっているといいます。特に早期がんに関しては、がん告知の診断を下した医師の所属する病院、あるいは医療機関から紹介を受けた病院で治療すれば問題はないといいます。
とはいえ、治療は患者と医師、人対人で行われるものです。「この先生に自分の身を任せても大丈夫」「人間として信頼できそうだ」という気持ちが湧くかどうかは、安心してがん治療を受けられるかどうかの大きな分かれ道といえるでしょう。
ここで注目したいのが、医師のコミュニケーション能力、言い換えれば「対話する力」です。何を目指した治療で、どのようなことが行われ、その結果どうなるのか、治療内容を医の道の素人である患者にわかりやすく、納得ゆくまで説明してくれるかどうかが大切です。
今まで、病気で診察を受けたとき、以下のような医師に出会ったことはないでしょうか。
・患者やその家族の質問にきちんと答えない。
・専門用語が会話に頻出する。
・患者の目を見ないで話す。
・専門外の分野についても話そうとする。
こうした経験に心当たりのある医師に、自分の身を任そうとする人はいないでしょう。
医師の人となり、人間力は、がん治療においても大きなウエイトを占めるのです。
がんは手術後、治療後のケアが大事
がん治療は、仮に初期がんで病巣を摘出する外科手術を受けたとしても、切って終わりという性質のものではありません。転移や再発などに備えての定期的な検診や、予後の療養も含め、長い期間続くのが特徴です。執刀してくれた医師や病院とは、手術後も付き合いになります。手術後の経過観察から転移や再発の対応にいたるまで、きちんと患者をフォローできてこそ、がんの良医といえるでしょう。
また、がんは根治や治癒が望めない場合もないとは限りません。そのようなときにも、患者のQOL(Quality of life:生活の質)を考慮しながら、患者にとって最善の治療や支援を続けてくれるかどうかも大きなポイントです。
セカンドオピニオンの活用もひとつの方法
がんは症状や進行によって様々な治療法の選択肢がある病気です。主治医は、検査結果や患者の健康状態をもとに、最も適した治療を選択してくれますが、最終的に提案された治療法を行うかどうかは、患者の承諾が必要です。あるいは、いろいろな治療法を説明され、そのなかからひとつを選ぶように言われることもあるでしょう。そんな場合は、医師から提示される各治療法の効果と副作用、治療の苦痛の有無、治療や入院の期間、費用などを判断材料に治療法を選ぶことになりますが、専門家ではない患者にとっては非常に難しい判断になる場合もあります。
そんなときに活用したいのが、主治医以外の別の医師に意見を聞くセカンドオピニオンです。複数の医師の意見を聞くことは、自らの治療を客観視したり、治療法の納得を得たりする貴重な機会ともいえます。
自分にとって最良の医師を探す努力を
ある特定の部位の病気で、技術的な要素が高い手術や治療であれば、確かに「名医」がいてもおかしくないでしょう。しかし、がんのように病状が多岐にわたる病気では、どのようなケースでも対応ができる「名医」は存在しないのではないでしょうか。
とはいえ、自分にとって最良のがん治療と巡り合うための努力は無駄にはなりません。患者にとって最良の治療を心がけてくれる「良医」は、必ず存在します。がんという病を間に置いて、患者と医師とが互いをわかり合うことで、よりよい治療への道は開けてきます。そのためには、決して医者まかせにせず、患者自身がまず自分のがんの病状についてよく理解し、治療に対しても主体的な関わりをしていく覚悟を持つことが、がん治療の第一歩です。