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がん手術は、手術件数が多い病院で受けるべきなのか

がん治療で手術が必要となったときには、どのように病院を選ぶべきでしょうか。近くの通いやすい病院を選ぶ人や、雑誌やインターネットの病院ランキングを参考にするといった人もいるでしょう。今回は、病院の手術実施件数によって治療成果は左右されるのかについて解説します。病院選びの参考にしていただければと思います。

目次

年間20例以上の手術実績がある病院のほうが、生存率が30%も高い?

症例の集中化と治療成績の向上

病院の年度別手術件数は簡単に調べることができる

まとめ

年間20例以上の手術実績がある病院のほうが、生存率が30%も高い?

治療を受ける病院を選ぶ際に、気にするべきことは何でしょうか。「名医がいる病院」といったキーワードは、インターネットでも多く検索されていて、関心の高さがうかがえます。しかし「名医」とは何をもって名医なのか基準はあいまいで、主観的になりがちです。実際に名医といったキーワードで調べたとしても、有益な情報にたどりつくことはほとんどありません。

そこで、判断材料となる客観的なデータとして紹介したいのが、「手術実施件数」です。

がん治療に限らず、どのようなことでも数をこなしたほうが、技術が向上するということは想像できるかと思います。毎日料理する人のほうが、1年に数回しか料理しない人よりもスピーディーに適切な味付けで料理を作ることができます。毎日ランニングをしている人のほうが、1年に数回しか運動しない人よりも、マラソンを速いタイムで完走できることでしょう。

がんの手術であっても、回数をこなしている病院のほうが、リスクが少ないという調査結果が出ています。ここでのリスクとは、術後の合併症の確率や死亡率のことです。ヨーロッパを代表する外科学分野の英文誌『British Journal of Surgery』2014年発表データによると、膵臓がん患者のさまざまな要素をそろえたうえで、年間20例以上の手術を行っている病院とそうでない病院の術後生存率を調査したところ、30%も差が出たという驚きの結果があります。

手術件数と術後の生存率は関係があるということが明確となったのです。

症例の集中化と治療成績の向上

医学用語で、手術件数が多い病院のことを「ハイボリュームセンター」、少ない病院のことを「ローボリュームセンター」といいます。

ハイボリュームセンターで手術を受けたほうが手術後の経過が良いと認知されるようになり、欧米では2000年代後半から膵臓がんの患者をハイボリュームセンターに集めて治療することを推奨するようになりました。これは「症例の集中化」と呼ばれ、治療成績の向上に貢献しています。

オランダでは、膵臓がん患者をハイボリュームセンターに集めるようになった2005年からの4年間は、それまでの6年間に比べて、入院中の死亡率が24%から4%まで低下したそうです。また、2年生存率は38%から49%まで上昇したと報告されています。(Br J Surg 2011;98:1455-1462)

日本でも東京大学病院が、全国848の病院を対象に膵頭十二指腸切除術を受けた1万652人の患者を調査しています。この調査でも、手術件数が年間8例未満の病院では入院中の死亡率が5.0%だったのに対して、年間29例以上の病院では1.4%という結果が出ました。(Br J Surg 2014;101:523-529)

病院の年度別手術件数は簡単に調べることができる

病院の手術件数は、インターネットで検索することで調べられます。大きな病院であればそれぞれのホームページに掲載されています。比較したい場合には、『病院情報局(https://hospia.jp/)』といった情報サイトもあります。また、書店には出版社が発行した、手術件数による『病院ランキング本』も売られています。

平成14年度からDPC制度というものがスタートし、大規模病院のほとんどが参加しています。このDPC制度では、「診断名」「治療方法」「入院日数」などの詳細な診療情報を厚生労働省に提出する必要があります。これらのデータは集計され、一般に公開されています。厚生労働省から公表されているDPCの患者データを基に、病院情報局などのWebサイトや出版社が発行する病院ランキング本が作られています。公式なデータであり、客観性があるため参考となるでしょう。

まとめ

ハイボリュームセンターが自宅の近くになく、時間をかけて遠方まで行くかどうか迷っているという相談も多く受けます。多くの人は自宅の近くの病院に通いたいと考えるからです。しかし、もし治療実績が豊富な病院があるのであれば、それが自宅から離れた病院であっても選択することをお勧めします。がんの種類と手術内容によって状況は異なりますが、手術は遠方の病院で受けて、手術後の経過観察と治療を地元の病院で進めることも可能です。そうすれば、往復の通院負担を考えなくてもすみます。

外科手術は、手術件数が多い施設では手術後のトラブルが少なく、トラブル発生時の処置も優れているという利点があります。がんの手術を受けるのであれば、手術をたくさんしている病院で受けたほうがよいのです。特に膵臓がんのように高度な手術の技術が必要になるがんでは、その傾向はさらに顕著です。病院の手術件数を病院選びの参考にしてみてください。

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