胆道がん|比較的日本人の発症率が高い
胆道とは、肝臓から十二指腸までの胆汁の通り道の総称で、大きく胆管、胆嚢、十二指腸乳頭(ファーター乳頭、とも呼ばれます)に分けられます。アジア諸国や欧米に比べると日本人の胆道がん発症率は高く、50歳代から増加傾向にあります。おもな自覚症状には黄疸、かゆみ、尿の色が濃くなるなどが挙げられます。
医療法人輝鳳会 池袋クリニック 院長 甲陽平
目次
胆道がんとはどんな病気か
胆道がんの検査、診断、ステージ、生存率は?
胆道がんの治療は?
胆道がんとはどんな病気か
胆道は、肝臓でつくられる消化液の一つ胆汁の通り道です。肝細胞でつくられた胆汁は胆管を通って肝臓の外へ流れ、胆のうに溜められつつ膵臓のわきを通り乳頭部へ到達、十二指腸へと出ていきます。
胆道がんはその通り道の細胞ががん化したもので、できる部位により胆管がん、胆のうがん、 乳頭部がんの大きく3つに分けられます。胆管がんは肝内胆管がんと肝外胆管がんに分けられますが、このうち肝内胆管がんは肝がんとして扱われます。したがって胆道がんという場合の胆管がんは、肝外胆管がんを指します。
国内の胆道がんの死亡は、がんの部位別では男性で8位、女性で7位となっています(2015年の統計による)。欧米先進国ではまれながんですが、南米や東アジアでは発症率が高く、なかでも、日本人は高い傾向にありますが、その理由についてはよくわかっていません。年代別では50代から増え始めます。なお、胆のうがんの死亡率は女性が男性の1.2倍、胆管がんの死亡率は男性が女性の1.7倍というデータがあり、性差があるといえます。
胆道がんは発生率が少ないため、疫学的な研究結果は限られています。その中で胆石症、胆管炎、先天性膵胆管合流異常症などの胆道系疾患や、潰瘍性大腸炎、クローン病といった炎症性腸疾患も胆道がんのリスク要因になるといわれています。近年、印刷工場の従業員に高率に胆管癌が発生し、印刷に使われた有機溶剤が疑われ問題となりましたが、はっきりとした原因についてまだわかっていません。その他のリスク要因としては、肥満や高カロリー摂取、野菜や果物の低摂取などが挙げられています。
胆道がんではがんの進行とともに胆道がふさがれることで起こる黄疸や尿が濃くなる、かゆみなどがおもな自覚症状です。黄疸は他の病気でも起こる症状ですが、胆道がんによる黄疸は、多くの場合発熱や痛みをともなわないのが大きな特徴です。
胆道がんの検査、診断、ステージ、生存率は?
胆道がんが疑われる場合、血液検査および腹部超音波検査や CT 検査などの画像診断検査を行います。
血液検査では、 総ビリルビン値やGOT値、GPT値などの検査で黄疸や肝障害の程度を調べます。画像検査では胆道の閉塞の状態や、その原因としてがんがあるのか胆石によるものかを確認し、診断します。なお、胆道が閉塞している部位をより正確に調べる検査として、MRI/MRCP検査と呼ばれる画像検査があります。
画像検査で胆道がんの疑いが強いと判断された場合、内視鏡や超音波による検査(超音波内視鏡検査:EUS、内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査:ERCP、胆管内超音波検査:IDUSなど)でさらに詳しく調べ、がんの進行の程度を判断します。
病期は、がんの大きさや広がり、リンパ節や他の臓器への転移の有無によって決まります。 胆のうがんと、胆管がんでそれぞれ病気分類があり、さらに胆管がんはできた場所により、肝門部領域胆管、遠位胆管、肝内胆管でそれぞれ病期分類があります。一例として胆のうがんの病期分類は次の通りです。
0期 | 上皮内がん |
---|---|
Ⅰ期 | がんが胆のうの固有筋層※1までにとどまっている |
Ⅱ期 | がんが胆のうの漿膜(しょうまく)下層※1または肝臓と接している結合組織に浸潤がある |
ⅢA期 | 下記(1)、(2)いずれか、ないし両方を満たし、かつ、領域リンパ節※2への転移がない (1)がんが漿膜に浸潤している (2)肝実質およびまたは、肝以外の1カ所の周囲臓器(肝外胆管、胃、腸、膵臓、大網※3)浸潤がある |
ⅢB期 | 領域リンパ節※2に転移があるが、遠隔転移はなく、がんが直接浸潤している範囲は、ⅢA期までと同様 |
ⅣA期 | 下記(1)、(2)いずれか、ないし両方を満たし、遠隔転移がない。領域リンパ節転移の有無は問わない (1)肝臓以外の周囲臓器(肝外胆管、胃、十二指腸、大腸、膵臓、大網)に2カ所以上の浸潤がある (2)門脈※4の本幹または総肝動脈、固有肝動脈に浸潤がある |
ⅣB期 | がんの浸潤や領域リンパ節転移に関わらず、遠隔転移がある |
日本肝胆膵外科学会編「臨床・病理 胆道癌取扱い規約2013年(第6版)」(金原出版)参照 | |
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胆道がんは、膵がんと並び治りにくいがんの一つとされています。がんが限局(できた場所にとどまっている)している場合の5年生存率は6割程度とのデータがありますが、浸潤(広がっている)があると3割弱以下とのデータがあります。全症例でも5年生存率は3割弱となっています。(全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査 KapWeb(2016年2月集計)による)
胆道がんの治療は?
胆道がんの場合、根治が見込める治療は手術のみというのが現状です。ただし胆道の近くには肝動脈や門脈といった重要な血管および肝臓や膵臓などの臓器があるため、がんがそれほど進行していなくてもできた場所等によっては手術が困難な場合があります。また、手術を行っても約6~7割と再発が多いのも胆道がんの特徴です。
なお、遠隔転移がある場合は手術の適応にならないのは他のがんと同じですが、遠隔転移がなくても、進行が早く胆道の周囲にある大きな血管への浸潤が認められる場合や、胆管の広範囲にがんが広がっている場合などは、一般的には手術の適応とはなりません。
手術ができない場合は、化学療法や放射線療法が検討されますが、黄疸の改善を目的に胆汁を十二指腸に流す胆道ドレナージや、症状の緩和を目的とした姑息手術が行われることもあります。なお、ケースは限られてはいるものの、がんが発生部位にとどまっていて、化学療法で小さくなった場合は手術の適応になる可能性もあります。
手術可能な場合も、肝臓の部分切除を行うケースでは、切除後肝臓に血液が十分いきわたり再生が促されるよう、術前に門脈を塞ぐ処置などが検討されます。
まとめ
胆道がんは手術が根治の望める唯一の治療ですが、手術が可能であっても術後の再発が少なくないなど、予後が思わしくないがんです。しかし、予後の改善が望める薬の組みあわせなどについて、現在も研究が続けられており、今後よりよい治療法の確立が期待されています。
【甲 陽平(かぶと・ようへい)】 医療法人輝鳳会 池袋クリニック 院長 1997年、京都府立医科大学医学部卒業。2010年、池袋がんクリニック(現 池袋クリニック)開院。 「あきらめないがん治療」をテーマに、種々の免疫細胞療法を主軸とし、その他の最先端のがん治療も取り入れた複合免疫治療を行う。 池袋クリニック、新大阪クリニックの2院において、標準治療では治療が難しい患者に対して、高活性化NK細胞療法を中心にした治療を行い、その実績は5,000例を超える。 |