がん免疫療法は「副作用が無い」のか?
がん治療を受けるにあたり、気になるのが「副作用」でしょう。一般的にがんの治療は重い副作用が伴うイメージがありますが、近年の医学の進歩によって現状は変化しています。今回は、「第4のがん治療法」として注目されている「がん免疫療法」の副作用を検証していきます。
目次
“第4のがん治療法”「がん免疫療法」とは
がん免疫療法における副作用
三大療法における副作用
“第4のがん治療法”「がん免疫療法」とは
現在、行われているがんの治療は、手術療法、放射線療法、化学療法の3種類が基本で、「がんの三大療法」と呼ばれています。「がん免疫療法」は、これらに加え「第4のがん治療法」として注目を集めている治療法です。
三大療法とがん免疫療法は根本的に大きく異なります。三大療法とは、「外科手術を行う」「放射線をあてる」「抗がん剤を投与する」ということで、いずれも外部からの力を必要とするものです。
一方、がん免疫療法は、本来“人間が備えている力”に着目し、がんに対する免疫力を上げてがんを殺傷する治療法なのです。
がん免疫療法の中には、血液中から免疫細胞を取り出し、体外で増殖・活性化する、またはがんを攻撃する目印を与えて再び体内へ戻すことによって免疫力を高める免疫細胞療法や、がん細胞が免疫細胞の攻撃にブレーキをかけることを止める作用を持つ免疫チェックポイント阻害剤を投与する治療法があります。
がん免疫療法における副作用
がん免疫療法のアプローチによる違い
免疫細胞療法は、利用する細胞の種類によって医療機関ごとにシステムが異なります。
「NK細胞療法」をはじめとした、血液中の免疫細胞を体外で培養し活性化した免疫細胞を投与するタイプでは活性化した免疫細胞の影響で、稀ですが軽い発熱が発生するケースがあります。ただし、一時的なものであり、投与後1日以内に収まることがほとんどです。
「樹状細胞ワクチン療法」や「がんワクチン」など、がん細胞の目印(がん抗原)をねらった免疫反応を利用する治療も、稀に軽い発熱が発生する程度で副作用はほぼないと言えます。
近年話題にあがる「免疫チェックポイント阻害剤」を用いる場合は注意が必要です。この薬剤には、免疫細胞の間違った暴走を防ぐために必要なブレーキを外してしまう作用もあるため、正常な細胞に対する免疫反応(攻撃)が起こり、間質性肺炎、大腸炎、甲状腺機能障害、1型糖尿病などの重篤な副作用を発症する場合もあります。
がん免疫療法を受けることができない人とは
免疫は本来、異物を認識し排除しようと働きますが、この免疫の力が正しく働かず、正常な細胞や組織に対してまで過剰に反応し攻撃を加えてしまう「自己免疫疾患」という病気があります。
免疫細胞療法では免疫の力を高め、がん細胞への攻撃を強めることを目的としますが、自己免疫疾患の症状を抱えている場合、正常な細胞への攻撃も強めてしまいます。そのため、免疫細胞療法を受けることができない場合があります。もちろん免疫チェックポイント阻害剤の治療も受けることはできません。
また、がんの標準療法(放射線治療・抗がん剤)を行う過程でも、この自己免疫疾患の症状を発症する患者さんがいます。その場合もがん免疫療法はかえって症状を悪化させてしまう可能性があるため、注意しなければなりません。
三大療法における副作用
手術療法のリスク・副作用
手術療法のデメリットは、体にメスを入れるので治療部分の治癒や全身の回復にある程度の時間が必要なこと。そして、切除する部位や範囲によっては、臓器や体の機能の一部が失われます。
手術療法では、あくまでも目に見える、あるいは画像検査で確認できるがんを切除します。これは、「すべてのがんを取り除いた」という意味ではなく、「目に見える範囲のがんはなくせた」ということです。すでに目に見えないがん細胞が血液やリンパの流れに乗り体のどこかに潜んでいるリスクは否定できません。したがって、手術療法だけで完治がのぞめるのは、ごく早期かつ局所のがんという限られたケースと言えます。手術後に再発予防の目的で放射線や抗がん剤を用いた別の治療を行うのがスタンダードです。
放射線療法のリスク・副作用
手術療法と同様に、基本的に「目に見える」がんに対する治療法です。がんの病巣部にエックス線や電子線、ガンマ線、粒子線などの放射線を照射し、がん細胞のDNAにダメージを与え、細胞を破壊します。
体にメスを入れないので、痛みや出血がなく体への負担は少なく、短時間で施術が受けられ、通院が可能な点もメリットです。
放射線療法の最大のデメリットは、放射線の被爆による副作用がありうることです。がん細胞を破壊するためには高エネルギーの放射線を照射しなくてはなりません。現状ではがん細胞だけに当てることは困難で、病巣部周辺の正常な細胞にもダメージを与えてしまいます。
そのほか、治療後、数年経ってから放射線治療をおこなった場所に発生する「放射線発がん」もリスクのひとつです。
化学療法のリスク・副作用
抗がん剤の基本的な仕組みは、がん細胞が正常な細胞よりも分裂スピードが早いという特徴を利用し、増殖の早い細胞を殺します。しかし、正常細胞でも、血液を作る骨髄や消化管の粘膜では細胞の入れ代わりが早いため、がん細胞と同様、より活発に細胞分裂しています。よく抗がん剤治療の副作用として聞く、白血球減少や、吐き気、食欲不振などは、こういった現象の表れなのです。
まとめ
がん免疫療法では、そのアプローチの仕方によって、副作用の症状が異なることをお伝えしました。免疫細胞療法は体への負担は少ないですが、免疫チェックポイント阻害剤の場合は副作用が様々なので注意が必要です。また、三大療法では、患者さんの身体にかかる負担を減らす治療技術が発達してきました。それでもがんと戦うことはとても大変なことです。しかし、日々進歩する医療技術は確実に患者さんの負担を減らすことに成功しています。悲観しすぎることなく、今できる最良の治療方法を選択し、生活の質を維持しながら治療に取り組んでいきましょう。