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医師はベテランの方がよい? 手術担当医の見極めポイント

手術の担当医が若いと「不安に感じる」という患者さんは多いようです。ある程度年齢の高い医師の方が、経験豊富で技術が高いのではないかと想像するためでしょう。手術はベテラン医師のほうが良いのでしょうか? 海外で行われた調査データから、医師の年齢や性別などが手術にどのような傾向を及ぼすのかをご紹介します。

目次

複雑な技術が必要な手術は、高齢医師を避けたほうがよい?

増える女性外科医。男性医師との違いはあるのか

高度な技術が必要な手術は週末に受けない方がよいという調査結果が

まとめ

複雑な技術が必要な手術は、高齢医師を避けたほうがよい?

手術を担当する医師は、年齢が高いベテランのほうがよいのでしょうか。アメリカで46万1000人を対象とした大規模な研究が行われました。すい臓がん、食道がん、肺がん、膀胱がんなどに行われた8種類の外科手術を受けた患者の術後を調査したものです。(Ann Surg 2006;244:353-362)

この調査では、手術を執刀した外科医の年齢を「40歳以下」「41歳~50歳」「51歳~60歳」「61歳以上」に分類し、手術後30日以内の死亡率の関係を調べています。結果は、ほとんどの手術で医師の年齢による差は認められませんでしたが、膵臓がんの膵切除術にだけ差が見られ、61歳以上の外科医によって手術が行われた場合41~50歳の外科医に比べて死亡率が67%も上昇していました。

このことから、ほかの臓器との切断や消化管の再建などの施術が必要な膵臓がんの手術をはじめとする複雑な技術のいる手術では高齢な医師の治療成果が低いとの考察がなされています。一概に年齢が高いベテラン医師がよいというわけではないことがわかりました。

医療技術は日々進化しています。ほとんどの医師は、医学書や学会で情報収集をしてスキルを高めるための努力をしています。最新の情報について情報収集をおこたらないという姿勢に年齢は関係ありません。経験が豊富なベテランであるがゆえに、自らのやり方に固執して新しい学びを得ようとしない医師もいるかもしれません。一方で、若くても学習意欲が高く幅広い情報源に接している医師は、高度な知識を元に第一線で活躍していることもあります。

増える女性外科医。男性医師との違いはあるのか

近年、医師全体に占める女性医師の割合は増加傾向にあります。手術を担当するのが女性医師であることは珍しくありません。ですが、患者さんの中には手術の執刀医が女性ということで不安を感じる人もいるようです。増えたとはいえまだまだ少数である女性医師を珍しく感じることや、技術や体力は男性のほうが高いと先入観を持っている方もいるので、そのように感じるのでしょう。

カナダで10万4630人の患者を対象とした大規模な研究が行われました。ここでは男性医師2540人と女性医師774人それぞれの手術を受けた患者の予後を比較したところ、30日以内の死亡リスクは女性医師が担当した患者のほうが12%も低かったのです。(BMJ 2017;359:j4366)

このような結果が出た理由のひとつとして、論文では女性医師の方がガイドラインに沿った治療を行う傾向があり、かつコミュニケーション能力が高いことが、死亡リスクの低さに繋がっているのではないかという考察がされていました。

しかし、外科医は手術の方法を日々研究し、実際に手術症例を経験することで腕が磨かれていきます。その環境には違いがないことから、本来男性医師と女性医師に技術の差がでるとは考えにくく、「必ず女性医師に担当してほしい」と希望する必要は無いと思います。もし、家族や友人の患者さんで、女性医師に対して偏見を持っていたり、不安を感じたりしている場合は、この結果を教えてあげるとよいかもしれません。

高度な技術が必要な手術は週末に受けない方が良いという調査結果が

手術を受ける「曜日」について興味深い研究結果があります。1週間のうち月曜日に手術を受けた場合最も死亡率が少なくなり、週末になるにつれて死亡率が高くなるというのです。アメリカやイギリス、フランスなど57の臨床試験の結果から調べたところ、週末に行った手術は、平日に行う手術に比べて30日以内の死亡率が2倍近く高くなっていました。(Med Care 2015;52:557-564)

 

同様の研究結果が、さまざまな部位のがんの治療において報告されています。特に食道がんなど消化器系のがん、およびステージの高い子宮体がんでは、週の後半に手術を受けると予後が悪いとされています。このような曜日による死亡率の変化の原因ははっきりとわかっていませんが、医師も人間であるため、週の後半になるにつれて疲労が蓄積し、集中力に影響を及ぼすためと考えられています。

まとめ

手術は信頼のできる医師に担当してもらいたいものです。ここで紹介したデータはエビデンスのある調査結果ではありますが、ひとつの要素にすぎません。医師の能力は決してひとつのデータで測れるものではなく、年齢による身体能力や集中力の違いのほかにも、最新技術に精通しているか、コミュニケーション能力が高いか、抱えている手術件数が多すぎないか、などさまざまな要因が関わってきます。医師とのコミュニケーションをしっかりと取ることで見極めていただければと思います。専門的でわからない部分で不安を感じた場合は、セカンドオピニオンといった方法もあります。手術に臨むにあたって少しでも不安を解消できるよう、ほかの医師に相談をしてみてもよいかもしれません。

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