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若年世代のがんは年間2万人! 五輪選手も公表した白血病など

がん治療にまつわる用語で「AYA(あや)世代」という言葉を目にしたり、耳にしたりしたことはないでしょうか。AYA世代とは10歳代半ばから30歳代のがん患者さんの総称です。ここでは、AYA世代のがんの特徴やこの世代独特の問題などをご紹介します。
AYA(あや)世代

目次

15~39歳、注目されるAYA世代のがんの状況とは

希少がんの発症が多く見られるAYA世代

AYA世代特有の問題の解決は前向きに

15~39歳、注目されるAYA世代のがんの状況とは

国立がん研究センターのがん統計によると、がん罹患率は男女とも50歳代から増加を見せ始め、60歳代以降になると増加が顕著になり、高齢になるほど高くなっています。そのため、高齢者の病気というイメージが強いのですが、小児がん(0~14歳)を含め、若年層のがん発症例が少ないというわけではありません。近年注目されているのが、「AYA世代」のがんです。AYAとは「Adolescent and Young Adult」の略で、日本では15~39歳の思春期から若年成人を指す言葉として使われています。

AYA世代のがん

2017年に閣議決定された「がん対策推進基本計画(第3期)」でもAYA世代という言葉を使い、この世代のがん患者さんのライフステージに応じた対策の必要性に触れています。そして、2018年には国立がん研究センターが、AYA世代のがん罹患率を発表し、その状況が初めて明らかになりました。同センターでは2009~2011年のAYA世代のがん罹患率をもとに、1年間にがんと診断される数を推計。1年間にがんと診断されるAYA世代は2万人以上で、男女別では男性約7,300人、女性約1万4,100人、年齢別では15~19歳で約900人、20代約4,200人、30代約1万6,300人となっています。人口動態統計を見ると悪性腫瘍はこの世代の死因3位となっており、医療機関でもAYA世代のがん患者さんへの対応は大きな課題となっています。

希少がんの発症が多く見られるAYA世代

国立がんセンターが発表したAYA世代のがんの罹患率の統計を見ると、AYA世代での罹患率が高いがんの種類を見ると以下のようになっています。

〈15~19歳〉

1位白血病、2位胚細胞腫瘍・性腺腫瘍、3位リンパ腫、4位脳腫瘍、5位骨腫瘍

〈20~29歳〉

1位胚細胞腫瘍・性腺腫瘍、2位甲状腺がん、3位白血病、4位リンパ腫、5位子宮頸がん

〈30~39歳〉

1位女性乳がん、2位子宮頸がん、3位胚細胞腫瘍・性腺腫瘍、4位甲状腺がん、5位大腸がん

 

発表されたがんの種類のうち「胚細胞腫瘍」とは、10~30歳の男性に多い腫瘍で、生殖器や脳(松果体、神経下垂体部)、胸部の中(縦隔)、腹部の中(後腹膜、仙骨部)などに発生しやすい悪性腫瘍のことです。また、胚細胞腫瘍のうち卵巣や精巣にできるものを「性腺腫瘍」とも言います。

AYA世代のがんの特徴は、胚細胞腫瘍・性腺腫瘍や脳腫瘍などの希少がんが多いことです。

また、白血病や脳腫瘍・脊髄腫瘍など小児に多く発生するがんと、肺がんや大腸がん、胃がん、乳がんなど成人に多く発生するがんのいずれもが発生の可能性があります。そのため、がんの診断・治療にあたっては、両方のがんの可能性が疑われるため、小児がんと成人がんの両方の診療科の連携が必須とされています。しかし、患者数が少ないこともあり、AYA世代にとって最適な治療法が確立しておらず、治療成績も良好とはいえません。治療の進歩を表す指標の一つである5年生存率の改善の割合は他の世代に比べて低いとされ、海外の研究でもがん治療の進歩の恩恵を受けていない世代だと指摘されています。

AYA世代特有の問題の解決は前向きに

多くの患者さんが小児期と成人期の間にあたるAYA世代。年齢的に進学や就職、結婚、そして妊娠や出産など人生におけるさまざまな問題・課題に直面する時期です。こうした問題が、がんという病気を抱えることで、より深刻に複雑にならざるを得ない面があります。

通院にとられる時間や治療による副作用は、勉学や仕事にも影響を及ぼします。なにより、人生の多感な時期にがんを患うことによる精神的なストレスは大きなものがあります。

なかでもAYA世代のがん治療で重要な課題となるのが、妊孕性(にんようせい)の問題です。治療が生殖機能に影響を及ぼす場合は、結婚や家族を持ちたいという将来の希望に影を落とします。がん治療を始めると、子どもを作れる可能性を失うことが男女ともにあります。そのため、近年は、二次性徴が始まっている患者には、治療の開始前に精子保存や卵巣凍結保存の検討を行うこともあります。

また、がん告知に受けたショック・混乱などから、衝動的に大学に退学届を出したり、職場に退職届を出したりする患者さんもいます。しかし、病状や治療法の選択によっては、勉強や仕事を続けることも可能で、現に治療と日常生活を両立させているAYA世代のがん患者さんもいます。自暴自棄に陥ることなく、家族や医療関係者とともに、自分にとって最適な治療の道を探りたいものです。

とはいえ、日本においてAYA世代のがん治療が専門的に行われるようになったのは最近のことで、AYA世代専用病棟は全国に二つしかありません。また、多くの医療機関では、小児がんの診療にあたる小児科の対象年齢は15歳前後までとなっており、AYA世代となった患者さんを他の診療科や医師へスムーズに引き継ぐ体制の整備も求められています。

まとめ

進学や就職、結婚など、さまざまな人生の節目を迎えるAYA世代。がんの告知は、そんな希望に満ちた将来へ影を投げかけます。しかし、国の「がん対策推進基本計画(第3期)」にAYA世代への対応の必要性が盛り込まれ、AYA世代のがん罹患率に関する統計によってその実像が明確になるなど、医療界はもちろん一般にも認識が高まりつつあります。
AYA世代専用病棟の建設や通勤・通学への影響を最小限に抑え、入院期間を可能な限り短縮するための取り組み、小児科と各種がんを担当する診療科との密な連携、患者さん同士の交流の活性化など、さまざまな方策が始まっています。

そして、治療を続けながら勉学に励んだり、仕事に取り組むAYA世代の患者さんも増えています。AYA世代の方が充実した生活を送れるように、より一層、支えていかなければなりません。

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