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改善がすすむ「ドラッグ・ラグ」アメリカと日本の差は 1年に

海外で承認され臨床使用されている効果的な医薬品を利用したいと考える人が多いと思われます。しかし、海外で承認されていても日本では未承認というケースがあり、「ドラッグ・ラグ」という言葉で知られています。ここでは、承認薬と未承認薬の違いとドラッグ・ラグ問題について説明します。

目次

進歩がめざましい新薬の開発と「未承認薬」問題

アメリカと日本のドラッグ・ラグは3.3年から1年に改善

患者申出療養および未承認薬のリスクとは

進歩がめざましい新薬の開発と「未承認薬」問題

近年のがん治療薬の開発、進歩はめざましく、国内外で次々と新薬が開発され、高い治療成績をあげています。

がんを患っている人にとっては、少しでも「効果が高い」もしくは「副作用が少ない」薬を治療に用いたいと思うのは、当然のことでしょう。しかし、新しく登場した薬を使用するには、越えなければならないハードルがあります。たとえ、海外ではすでに効果が証明され、承認・販売されている薬でも、日本の医療現場で用いるためには、日本における試験や審査など一連の手続きを経る必要があります。新薬として承認・認可され、実際に販売されるのを待たなくてはなりません。
日本ではまだ使えないがん治療薬を「未承認薬」といいます。

ドラッグ・ラグ

未承認薬には大きく以下の三種があります。

①どこの国でも承認されておらず、開発途上の医薬品候補の薬
②欧米はじめ外国では承認済みだが、日本では薬事法に承認がない薬
③日本でも承認を得ており販売されているが、適応疾患が限られ、疾患によっては治療薬として使われない薬

がん患者にとって特にもどかしく感じるのが、②の状況にある薬剤の存在です。
海外ではすでに承認・販売されているのに、日本では承認・販売されていない…これを「ドラッグ・ラグ」と呼びます。

アメリカと日本のドラッグ・ラグは3.3年から1年に改善

厚労省を中心にドラッグ・ラグの解消に努めてきた結果、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の調査によると平成21年度に3.3年だったドラッグ・ラグは、平成28年度には1.0年まで短縮されてきています。

とはいえ、国立がん研究センターによる2018年4月の発表では、国内で未承認のがん治療薬は延べ65(複数のがんが対象のケースを含む)となっており、より一層のドラッグ・ラグの解消が望まれています。

国内で未承認のがん治療薬の内訳を見ていきましょう。2018年4月の時点現在では、血液がん30剤、前立腺がんなどの泌尿器がん11剤、乳がん5剤、悪性黒色腫などの皮膚がん4剤、骨軟部腫瘍(肉腫)3剤、肺がん(非小細胞肺がん)3剤、卵巣がん2剤、小児がん2剤が主なものです。

がんでは、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、肝がんあるいは子宮がんを日本人の罹患率が高いことから五大がんと呼んでいますが、現在では乳がんと肺がん以外に未承認薬はない状況となっています。これらのことからも、五大がんに関してのドラッグ・ラグは解消されつつありますが、肉腫や悪性脳腫瘍、悪性黒色腫などの希少がんについてはドラッグ・ラグの解消は難しく、そもそも患者数が少ないため臨床試験の実施が困難な場合もあるようです。

ドラッグ・ラグ

患者申出療養および未承認薬のリスクとは

日本では未承認薬でも、海外では承認済みの薬があった場合、どうすればよいのでしょうか。医療機関では、未承認薬の使用について各病院においてルールを設けて実施しています。その流れは、未承認の薬剤の使用について院内の医療安全管理部や評価委員会等へ報告すると、使用の適否や使用条件などの評価・協議が行われ、使用の許可をすることになります。なお、がん治療に国内未承認の薬を使用した場合、その薬代や治療費が全額自己負担になり、入院料やその他の技術料も全額負担となります。これは、「健康保険範囲内の治療」と「健康保険の範囲を超えた治療」が同時に行われた場合、すべての診療費用が健康保険適用外となる「自由診療」とみなされるためです。

こうした状況を鑑み、「未承認薬をできるだけ早く使いたい」という患者の思いに応えるべく2016年4月、健康保険適用外の治療に関する新たな制度である「患者申出療養」がスタートしました。この制度では、未承認薬などの先進的な医療を使用することを希望する患者が臨床研究中核病院経由で申請すると国の専門家会議が安全性や有効性などを審査した上で、承認されれば臨床研究中核病院で治療を受けられるというものです。もし承認を受けられれば、未承認薬などの健康保険の範囲を超えた部分自体は全額自己負担ですが、健康保険の範囲内の診察、治療、入院費などについては健康保険の適用となります。

こうした仕組みから患者申出療養は「保険外併用療養」ともいいます。通常の診療部分について自己負担が軽減されるため、未承認薬による治療を行いたい切実な思いを持つ患者にとって選択肢が広がることとなりました。

まとめ

ドラッグ・ラグはここ10年ほどでかなりの改善が見られますが、まだまだ未承認の薬が数多くあるのが現状です。また、未承認薬の使用は、場合によっては思っていたような治療効果を得られない場合や予期しない副作用を被る場合があることを十分に理解しておく必要があります。未承認薬の使用にあたっては、担当医や専門家の意見をよく聞くことが肝心です。

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