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日本人がん患者数1位の「大腸がん」

目次

患者数は約15万8000人! 部位別で最も多い大腸がん

血便や下血といった症状が現れるが、痔だと思い放置してしまう人も

ステージIIIまでであれば治る確率が高いがん

患者数は約15万8000人! 部位別で最も多い大腸がん

大腸は小腸から続く消化管で、体内に入った食物の最後の通り道です。長さは1.5~2mになり、自分から見て右下腹部から、おなかのなかを時計まわりにグルっと回って肛門へとつながります。始まりに盲腸があり、上へと向かう上行結腸、横へ向かう横行結腸、下へと向かう下行結腸、S字を描くS状結腸が続き、ここまでを総称して結腸といいます。そこから直腸へとつながる直腸S状部、下へ伸びる上部直腸と下部直腸となり、肛門括約筋のある肛門管へとつながります。

大腸は、小腸で栄養素等を消化吸収された残りの食物残渣から水分を吸収するのが役目で、栄養素の消化吸収作用はほとんどありません。肛門へと進む間に水分を吸い取られた食物残渣はだんだんと固形の便へとなっていくのです。つまり、軟便や下痢は、大腸での水分吸収が不十分な場合におこります。

大腸がん

大腸がんは、結腸、直腸、肛門に発生するがんを指し、日本人に発症の多い部位はS状結腸と直腸で、全体の約7割を占めています。厚生労働省によると2016年にがんと新たに診断された患者のうち、大腸がんの患者数は男性では3位、女性では2位でしたが、男女合計では約15万8000人となり胃がん(約13万4000人)を抜き初めて最多となりました。

大腸がんの多くは、大腸の一番内側にある粘膜の細胞から発生します。その発生は、粘膜の細胞に発生した良性の腫瘍(ポリープ)の一部ががん化して増大するものと、粘膜の正常な細胞が発がん刺激を受けてポリープを経由せず直接がんが発生するものの2つの経路があります。多くは前者からの発生と考えられています。

大腸の粘膜の表面に発生したがんは、その後大腸の壁に深く侵入(浸潤)するにつれ、大腸の壁の外まで広がり腹腔内にがん細胞が散らばったり、大腸の壁の中のリンパ管や血管に侵入しリンパ液や血液にのって、肝臓や肺などの別の臓器、あるいはリンパ節などに転移します。

大腸がんの発生については、食生活が密接に関係しているといわれます。大腸がんの発生を高めるといわれる食物には、赤肉(牛、豚、羊など)や加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)が挙げられています。これら動物性の高脂肪・高たんぱく質の食事、飲酒、喫煙などにより大腸がんの発生の危険性が高まると指摘されています。また、体脂肪が多い、腹部の肥満などの身体的な特徴を有した人で、発生の危険性が高いといわれています。

他には、遺伝、家族の病歴との関係も指摘されており、特に家族性大腸腺腫症やリンチ症候群の家系では、大腸がんの発生が多くみられます。

血便や下血といった症状が現れるが、痔だと思い放置してしまう人も

早期の大腸がんでは症状がほとんどありません。この段階でがんが見つかるのは、がん検診や人間ドックなどでの便潜血検査を受けた場合が大半です。

症状が出るのはがんが進行した段階で、どの部位にがんが発生した場合でも共通して見られる症状があります。主な症状は、便に血がまじる血便、腸からの出血により赤や赤黒い便が出たり、便の表面に血液が付着したりする下血、がんの発育で腸管の内側が細くなることによりおこる便秘や下痢、あるいはその繰り返し、便が細い・残る、腹部が張る、貧血、体重の減少などがあります。

最も頻度の高いのは血便や下血ですが、痔などでも見られるため、そのままにしておく人も多く、受診が遅れるケースがあるので注意が必要です。
進行した大腸がんは、腫瘍の大きさや存在する部位によって症状に違いが出ます。

右側大腸がん(盲腸、上行結腸、横行結腸のがん)では、腫瘍が大きくなるまで症状が出にくく、最初は軽い腹痛や腹部の違和感などにとどまります。進行とともに、腹部のしこりとして触れることで発見されたり、貧血の検査を受けた際に見つかることもあります。

左側大腸がん(下行結腸、S状結腸、直腸のがん)は、便に血が混じったり、血の塊がでたりする症状が見られます。また、便秘や下痢、便が細くなる、残便感、腹痛などの症状が表れます。放置していると腸管がふさがることで便もガスもでなくなり、腸閉塞に陥ります。

なかには、大腸がんの転移によりでできた肺や肝臓の腫瘤が先に発見されることもあり、その場合、大腸がんはすでに進行しまっているケースが多いようです。

大腸がん

ステージIIIまでであれば治る確率が高いがん

粘膜に発生したがんは、大腸の壁の中を徐々に進んでいきます。大腸の壁は内側から外側へと粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜に分かれています。がんの浸潤の度合いを、「がんの深さ=壁深達度」で表します。Tis、T1、T2、T3、T4a、T4bと6段階からなり、数字が大きくなるほどがんが深く広がっています。がんが粘膜および粘膜下層にとどまるTis、T1を「早期がん」、それより深いものを「進行がん」と分類しています。

一方、がんの進行の程度を分類するのが「ステージ」です。壁深達度のほか、リンパ節転移、遠隔転移の有無によって、0期、I期、II期、III期、IV期に分かれます。治療法は上記の進行程度のほか、患者の体の状態などから検討し、内視鏡治療、手術、化学療法、放射線治療などから選択されます。

0期〜III期では、まずがんを切除できるかどうかを判断し、切除できる場合には内視鏡治療または手術を行います。切除できない場合には、化学療法を中心に治療を行います。IV期の場合は、治療方法を総合的に判断します。

なお、全国がんセンター協議会の生存率共同調査によると、大腸がんの5年相対生存率は、全ステージを合わせた生存率は76.0%、I期の場合は97.6%、II期の場合は90.0%、III期の場合は84.2%、IV期の場合は20.2%となっています。ステージIIIまでであれば治る確率が高いがんであり「治りやすいが、見つかりにくい」という言葉を裏付けており、早期発見のためには何よりも定期的な大腸がん検診を受けることが肝心です。

まとめ

  • 大腸がんは、結腸、直腸、肛門に発生するがんを指し、日本人に発症の多い部位はS状結腸と直腸で、全体の約7割を占めている。
  • 2016年に大腸がんの患者数は男性では3位、女性では2位だが、男女合計では約15万8000人となり胃がん(約13万4000人)を抜き初めて最多となった。
  • 粘膜の表面に発生した大腸がんは、大腸の壁に浸潤するにつれ、大腸の壁の外まで広がり腹腔内にがん細胞が散らばったり、リンパ液や血液にのって肝臓や肺などの別の臓器、あるいはリンパ節などに転移する。
  • 大腸がんの発生については、食生活が密接に関係しているといわれ、動物性の高脂肪・高たんぱく質の食事、飲酒、喫煙などで危険性が高まると指摘されている。
  • 早期の大腸がんは症状がほとんどなく、この段階でがんが見つかるのは、がん検診や人間ドックなどでの便潜血検査を受けた場合が大半。
  • 症状が出るのはがんが進行した段階で、血便、下血、便秘や下痢、便が細い・残る、腹部が張る、貧血、体重の減少などが表れる。
  • 進行した大腸がんは部位によって症状に違いが出る。右側大腸がん(盲腸、上行結腸、横行結腸のがん)では、最初は軽い腹痛や腹部の違和感、進行すると腹部のしこりとして発見、貧血の検査で見つかることもある。左側大腸がん(下行結腸、S状結腸、直腸のがん)は、血便や便秘・下痢、便が細くなる、残便感、腹痛などの症状が表れる。放置していると腸閉塞に陥ることも。
  • がんの進行の程度は「ステージ」で分類され、壁深達度、リンパ節転移、遠隔転移の有無によって、0期、I期、II期、III期、IV期に分かれる。治療法は内視鏡治療、手術、化学療法、放射線治療などから選択される。
  • 0期〜III期では、がんを切除できる場合には内視鏡治療または手術を実施。切除できない場合には、化学療法を中心に治療を行う。IV期の場合は、治療方法を総合的に判断する。
  • 大腸がんの5年相対生存率は、全ステージを合わせた生存率は76.0%、I期の場合は97.6%、II期の場合は90.0%、III期の場合は84.2%、IV期の場合は20.2%。ステージIIIまでであれば治る確率が高いがんである。

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