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乳がん|閉経前後の年代がピーク、発症には女性ホルモンが深く関係|5大がんの解説

乳がんは40歳代後半から50歳代前半をピークに、女性にたいへん多いがんです。乳房内で乳汁をつくったり運んだりする乳腺組織にできるがんで、発症においては女性ホルモンのエストロゲンと関連の深いことが分かっています。

医療法人輝鳳会 理事長 池袋クリニック 院長 甲陽平

目次

乳がんとはどんな病気か。ステージ、検査、自覚症状は?

遠隔転移がなければ手術、あれば薬物療法が柱に

乳がんの発症要因…デンスブレストについて

乳がんとはどんな病気か。ステージ、検査、自覚症状は?

乳房はおもに、乳汁をつくる乳腺とそれを乳頭に運ぶ乳管、および脂肪やじん帯などから成ります。乳がんは乳腺の上皮(小葉上皮)、または乳管の上皮が悪性化し発生します。女性のがんというイメージが強いですが、まれではあるものの男性にも発症するがんです。

乳がんには、小葉や乳管などの組織の中にとどまったままの非浸潤がんと、進行にともない血管やリンパ管から全身へ広がる浸潤がんがあります。非浸潤がんは、米国ではマンモグラフィーの普及により乳癌の20~25%が非浸潤がんと診断されています。非浸潤がんに対して手術をしても死亡率は変わらないとの報告もありますが、総合的に判断して乳房温存術などの手術が勧められています。

浸潤がんは、大きさやリンパ節への転移の有無、遠隔転移の有無などからⅠ~Ⅳのステージに分けられます。大きさが2㎝以内でリンパ節や他の臓器へ達していない早期がんでは、5年生存率は100%近く、リンパ節に達しているⅡ期でも95%を越えるなど、十分に完治が見込めます(全がん協 2016年統計による)。

代表的な自覚症状は「しこり」で、乳がんの9割以上に見られるとされています。他の内臓にできるがんと違い、自分でしこりに触れたり、あるいは乳頭から血液が混じるなどの異常な分泌物があったりなどの自覚症状で、がんを比較的早期に発見することが可能です。

がんのしこりの特徴には「硬い」「境目がはっきりしない」「月経周期に連動しない(月経前にあったしこりが月経開始後になくなる場合は、良性の乳腺症であることが多い)」などがあります。早期発見のために、普段から入浴時等に自分で乳房を観察したり、くまなく触ったりして異常がないかチェックすることが大切です。発生が一番多いのは乳房の外側の上の方で全体の半数以上、次いで内側の上、外側の下、内側の下、乳首付近の順という統計も出ているので、参考にするとよいでしょう。

ただし、見て触っただけでがんかどうかの判断は困難なので、異常に気づいたら医療機関を受診し検査を受けることが大切です。

自治体や職場等で行われる乳がん検診では、マンモグラフィー(乳房X線検査)が主流で、オプションとして超音波検査(エコー)が受けられるところもあります。検診で疑わしい所見が見つかったり、自分で乳房の異常に気づいたりした場合は医療機関でさらに詳しい画像検査や組織を採取する(生検)などで、がんの有無を調べます。

痛みの自覚症状は乳がんの場合、早期の段階ではまずありませんが、進行とともに転移を起こすとさまざまな痛みがあらわれます。また、後述の手術でリンパ節を廓清するとリンパ浮腫が起こりやすくなり、むくみなどによる疼痛が起こることもあります。

なお、発症数は非常に少ないのですが、しこり等上記に挙げた症状が分かりにくいタイプの乳がんもあります。一つは乳頭や乳輪の湿疹状のただれをおもな症状とするパジェット病があり、予後は良好です。もう一つは炎症性乳がんという、乳房全体が腫れるタイプの乳がんで、短期間で全身への転移を起こす可能性が高く、予後は思わしくないとされています。

遠隔転移がなければ手術、あれば薬物療法が柱に

乳がんの治療には、手術、放射線治療、薬物療法(ホルモン(内分泌)療法、化学療法、分子標的治療など)があり、ステージやがんの性質、患者さんの全身状態や他の病気の合併の有無などを考慮し検討されます。遠隔転移がない場合は、手術で病巣を切除することにより高い確率で治癒が見込めます。ただし、手術しても目に見えない微小ながん細胞が残っている可能性もあるので、術後補助療法として薬物療法や放射線治療を行うと、治癒する可能性がより高まることが分かっています。

なお、手術には大きく乳房を温存する部分切除と全切除があり、病巣の大きさや場所、再発リスクの程度、患者さんの希望などを総合的に考え検討されます。全切除の場合は患者さんの希望により乳房再建術も公的保険が適用されます(※)。

一方、遠隔転移がある場合は、治療による完治が困難であるのが現状です。よって治癒よりも延命やQOL(生活の質)の維持向上を目標とした治療が検討されます。治療の柱は薬物療法になりますが、生活の質の維持向上を目的とした手術や放射線治療が行われることもあります。

手術の有無、術前化学療法の有無、乳房温存または全切除、術後の薬物療法など、さまざまな治療法とその組み合わせがあり、そのなかから最適と思われる方法を選んでいきます。主治医とよくコミュニケーションをとり、治療を受けることで得るメリット、デメリットをよく理解、納得して治療にのぞむことが大切です。

※)2019年7月~ 再建に使われるインプラントが未分化大細胞型リンパ腫というがんの発症に関与しているとの理由で、現在、国内で公的保険が適用されているテクスチャードタイプのインプラントおよびインプラント挿入前に使用するティッシュエキスパンダーが使用できない状況になっています。スムースタイプ(表面がつるつるしている)のインプラントについては使用できます。

乳がんの発症要因…デンスブレストについて

乳がんの発症には女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっていることが知られています。エストロゲンが体内に長期間あること、例えば初潮年齢が低い、閉経年齢が高い、出産経験や授乳経験がない、などは発生リスクを高めます。また、肥満は発症リスクを確実に高めることが、国内外の研究から分かっています。

食習慣では、今のところアルコールの摂取で発症リスクが高まることはほぼ確実で、飲酒量が増えるほどリスクも高くなるとの研究報告があります。一方、大豆や乳製品の摂取によりリスクが低くなる可能性があるとの研究報告もありますが、関連はまだよく分かっていません。

近年、デンスブレストといって、乳房内の乳腺濃度が高い乳房も、ほとんどの研究で、乳がん発症リスクが高いと結論づけられています。乳腺濃度が高い人は低い人に比較して乳がん発症リスクが高いことは確実といえます。乳腺はマンモグラフィーの画像では白く写り、一方で乳がんも白く写るため、デンスブレストの場合はそうでない場合よりもがんを見つけにくいことが課題になっています。そのため、デンスブレストの人はマンモグラフィーのほかに超音波検査も受けるとがん発見の役に立つことがあります。

まとめ

乳がんは早期であれば非常に治癒率の高いがんです。しこりや乳頭からの分泌物が主症状となって現れることが多いので、日ごろから乳房を観察したり触ったりしてチェックし、気になることがあれば医療機関を受診することが大切です。治療はがんの性質や広がり等を総合的に判断し検討されますので、主治医とよくコミュニケーションをとることが納得のいく治療を受けることにつながります。

【甲 陽平(かぶと・ようへい)】
医療法人輝鳳会 池袋クリニック 院長
1997年、京都府立医科大学医学部卒業。2010年、池袋がんクリニック(現 池袋クリニック)開院。
「あきらめないがん治療」をテーマに、種々の免疫細胞療法を主軸とし、その他の最先端のがん治療も取り入れた複合免疫治療を行う。
池袋クリニック、新大阪クリニックの2院において、標準治療では治療が難しい患者に対して、高活性化NK細胞療法を中心にした治療を行い、その実績は5,000例を超える。

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