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悪性脳腫瘍|150種類以上のタイプが存在するがん

脳腫瘍は悪性と良性に分けられ、良性のものも含め150種類以上のタイプがあります。ここでは悪性脳腫瘍について解説します。おもな悪性脳腫瘍には、神経膠腫、中枢神経系悪性リンパ腫、転移性脳腫瘍があり、それぞれ発生部位により脳が圧迫されることによる吐き気や頭痛、手足のまひや感覚障害、記憶力低下、言語障害などのさまざま症状があらわれます。

医療法人輝鳳会 池袋クリニック 院長 甲陽平

目次

悪性脳腫瘍とはどんな病気か

  • おもな局所症状

脳腫瘍の検査、診断、生存率は?

脳腫瘍の治療は?

悪性脳腫瘍とはどんな病気か

悪性脳腫瘍は年代問わず発症する病気で、高齢になるほど発症リスクが高くなりますがその理由ははっきりしていません。まれに、白血病や脳腫瘍などに対して放射線治療を行った後、その影響で発生することがあります。

悪性脳腫瘍は「原発性」(脳内の細胞や神経から発生)と「転移性」(他の臓器にできたがんが脳に転移)の大きく2つに分けられます。「原発性」は発生部位により、主に脳の神経膠細胞(グリア細胞)と呼ばれる細胞から発生する「神経膠腫(グリオーマ)」と、脳やせき髄といった中枢神経の中でリンパ球ががん化した「中枢神経系悪性リンパ腫」に分けられます。このうち多いのは脳の神経膠腫で脳腫瘍全体の約4分の1を占めます。

いずれも腫瘍の発生により、頭蓋骨内の圧力が高まり、「頭蓋内圧亢進症状」と呼ばれる症状が起こります。また、それとは別に、腫瘍ができた場所により異なる「局所症状」も起こります。

代表的な頭蓋内圧亢進症状は、頭痛と吐き気です。圧力は睡眠中に特に高まるため、朝、起きたときに起こりやすいのが特徴です。

局所症状は前述の通り、腫瘍の場所によって異なります。

おもな局所症状

前頭葉:
腫瘍がある場所と反対側の半身まひ、言葉は理解できるが話せない、性格変化、自発性低下、記憶力の低下、てんかん発作
側頭葉:
腫瘍がある場所と反対側の視野障害、言葉の理解が難しくなる、てんかん発作
頭頂葉:
腫瘍がある場所と反対側の感覚障害、計算や読み書きが難しくなる
後頭葉:
腫瘍と反対側の視野が欠ける
視床:
意識障害、運動麻痺、手足のしびれなどの感覚異常
視交叉・視床下部:
視力視野障害、体温調節異常、尿崩症
脳幹:
顔や手足の感覚障害やまひ、嚥下障害、聴力障害、ものが二重に見える
小脳:
細やかな動きができない、ふらつきやめまい、歩行障害

[図表]脳の表面図
脳の表面図

[図表]脳の断面図
脳の断面図

脳腫瘍の検査、診断、生存率は?

手足のまひや言語・感覚障害などの、脳腫瘍が疑われる症状が出ている場合、まずCTやMRIなどの画像検査で異常がないかを調べます。しかしこの時点で脳腫瘍が見つかっても、良性か悪性か、また悪性だった場合にどのようなタイプの腫瘍なのかわかりません。そのためまず手術を行い、切除した腫瘍の性質を病理検査で調べることになります。なお、腫瘍が脳の深いところにある場合は、針を刺し組織を採取する生検が行われる場合もあります。

病理検査の結果、悪性と判断された場合は、腫瘍の性質や進行をもとに薬物療法や放射線療法等の治療計画が立てられます。

脳腫瘍の多くを占める神経膠腫は、WHOが定めた国際的な診断基準であるグレード分類によって4段階の悪性度に分けられています。神経膠腫の予後は腫瘍の大きさに左右されず、また他臓器への転移が起こらないため、いわゆる病期(ステージ)はありません。

[図表]脳腫瘍の悪性度
悪性度(グレード) 星細胞腫系腫瘍 乏突起膠腫系腫瘍
グレード1 毛様細胞性星細胞腫など
グレード2 びまん性星細胞腫
IDH変異あり、またはIDH変異なし
乏突起膠腫
IDH変異と1番/19番染色体欠失あり、または変異と欠失を調べていない
グレード3 退形成性星細胞腫
IDH変異あり、またはIDH変異なし
退形成性乏突起膠腫
IDH変異と1番/19番染色体欠失あり、または変異と欠失を調べていない
グレード4 膠芽腫
IDH変異あり、またはIDH変異なし

※グレード1は良性。 ※IDHとはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を指す。この遺伝子に変異がある腫瘍の方が、予後が良いとされる。

5年生存率については、2005-2008年に治療を行った患者さんを対象としたデータで、びまん性星細胞腫76.9、乏突起膠腫91.9、退形成性星細胞腫43.2、退形成性突起膠腫62.6、膠芽腫16.0、および中枢神経系悪性リンパ腫48.2という数値(いずれも単位は%)が出ています。しかし診断や治療の進歩により、現在の治療成績はより向上していると考えられます。

脳腫瘍の治療は?

神経膠腫は、脳の機能を温存しながら手術でできるだけ切除することが治療目標となります。近年は画像診断の進歩により、腫瘍の場所や大きさ、広がりをより正確に把握することが可能になったため、一般的に、手術後の神経症状(まひや感覚障害など)が術前よりも悪化することは少ないといえます。

ただし神経膠腫は播種といって、髄液の流れにのり脳の別の場所に転移することがあるのと、正常な組織との境界が不明瞭なため、すべての腫瘍を手術で切除するのは困難とされています。そのため、残った腫瘍に対しては薬物療法や放射線治療を行います。

なお、神経膠腫は手術ですべての腫瘍を取り除くことが難しいために、多くの場合再発が起こります。再発した腫瘍に対しては今のところ標準治療はなく、 再手術や再発箇所にピンポイントで放射線を照射するサイバーナイフなどの定位放射線治療や、 抗がん剤などが検討されます。初発、再発とも国内外で新たな治療の開発が進められており、臨床試験が行われていればそれに参加することも選択肢の一つとなります。

中枢神経系原発悪性リンパ腫は、薬物療法と併用して放射線治療を行う「化学放射線療法」により腫瘍が消失することも多いので、手術による生検で診断がつけば、全摘出を目的とした手術は行いません。薬物療法と、全脳照射と呼ばれる放射線を脳全体にあてる治療とを組み合わせて行います。

まとめ

脳腫瘍は腫瘍の完全切除が難しく、再発が多い病気ですが、昨今は国内外で新しい治療の開発が進行中です。画像診断や手術機器の発達により、手術の後遺症のリスクも以前に比べ低くなってきているといえます。抗がん剤や放射線等、手術以外の治療にもいえることですが、後遺症や副作用も含め、治療にあたっての心配や不安はそのままにせず、担当医や看護師に相談することが大切です。

【甲 陽平(かぶと・ようへい)】
医療法人輝鳳会 池袋クリニック 院長
1997年、京都府立医科大学医学部卒業。2010年、池袋がんクリニック(現 池袋クリニック)開院。
「あきらめないがん治療」をテーマに、種々の免疫細胞療法を主軸とし、その他の最先端のがん治療も取り入れた複合免疫治療を行う。
池袋クリニック、新大阪クリニックの2院において、標準治療では治療が難しい患者に対して、高活性化NK細胞療法を中心にした治療を行い、その実績は5,000例を超える。

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